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やわらかいこころ

気に入って使っていたガラスのカップは、手が滑って落とした拍子に、割れてしまいました。

大切なあの人にあげようと思って包んだ手作りのクッキーは、渡す前に確認したら砕けていました。

もしそれが、柔らかくてふにゃふにゃだったら、壊れなかっただろうなあ…。

ガラスのカップは、ガラスだから使い勝手がいいわけで、シンプルで生活に馴染むデザインに惹かれて買ったのだから、柔らかかったら困るのですが。
でも、落としたって割れなかったはず。

クッキーは、かじったときにサクッとするのがクッキーなわけで、クッキーの見た目をしているのにマドレーヌやフィナンシェみたいな食感だったらちょっと気持ちが悪いのですが。
けど、鞄の中で砕けたりはしなかったはず。

心も多分、おんなじじゃないかなあと、私はふと思ったのです。
ガラスのハート、鋼のメンタルという言葉をよく聞くけれど、どっちも固い。
低反発まくらのハート、とか、スライムメンタル、とか、ふかふかのパンのような心、とか。
いくつか勝手に考えてみました。
こっちの方が、なんだか健康的だとは思いませんか?
柔らかくて、ちょっと指で押しても戻ってくる力がある。
しかも、形もある程度自由に変えられる。
今の時代を生き抜く上で必要なのは、強さではなく、柔軟性なのではないかと、思うのです。
(ちなみに、豆腐メンタルという言葉は、なんか可愛いから好きです。)

例えば、ちょっと嫌なことがあったとします。
ああ、ヘコむなあ…くらいの出来事が起きて、心の中のパンが、指でぐっと押されたみたいに形を変えます。
でも、大丈夫です。
柔らかいから、ゆっくりでもきちんと元の形に戻ってくれて、また元気に日々を過ごすことができます。

「レジリエンス」という言葉があります。
臨床心理士の先生から聞いた言葉で、メンタルヘルス関連の本を読むと、だいたいこの言葉を目にします。
「困難をしなやかに乗り越え、回復する力」という意味です。
一言で言うと、「回復力」「再起力」などでしょうか。
強くて様々なことに耐えられる折れない心よりも、うまくストレスをかわして、ヘコんでもしなやかに元に戻ることができる心。
この言葉を知った時、私もそんな心を持ちたいと思いました。

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真面目に、不満を言わずに粛々と働くことが美徳とされているような世の中で、ある日突然、心がぽっきり折れてしまわないように、しなやかに、柔らかく、まあるく生きていけたらいい。
けれど、それはきっとなかなか難しい。
難しいけれど、そうなろうとする努力くらいはしたい。
あれをしなければ、これをするべきだ、みたいな思考から解き放たれたい。
自分の心を優先して生きたい。
やりたくないことはやりたくない。
食べたいものを食べて、会いたい人に会いたい。
損得じゃなくて、自分の心がどうしたいかで動きたい。
心に少しの余白を作って、誰かのことを考えられるようになりたい。
自分に優しく、人にも優しくできるようになりたい。

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パンケーキのように、ふかふかな心で、生きていきたい…。
と、食べ物にばかり例えていたら、お腹が空いてきました。
健康な心を作るためには、まずはご飯、かもしれませんね。
今日も1日、まあるく生きられますように^_^


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