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一体全体、国交省の基幹統計の改ざん(受注実績の二重計上)が大きな問題にならないのはなぜなのか?つまり、安倍政権はGDP水増しという国家の基本を粉飾していたということだ!!

5月14日の朝日新聞のトップ記事を見てがく然とした。

 視点 書き換え正しい数字いまも見えず

 統計は私たちが暮らす社会の状態を映す鏡であり、健康診断のデータのようなものだ。
誤っていれば政策の失敗につながりかねない。事業者から提出された調査表の生データが、公務員の手で長年無断に書き換えられ、国の基幹統計が兆円単位で過大になっていた事実は重い。
ゆがめられた過去の統計は今もそのまま公表され、訂正後の数字を私たちが知るすべはまだない。今回、是正の手法が示されたが、是正後の統計もあくまで推定だ。焦点の一つとなった国内総生産(GDP)への影響は「軽微」との見方を政府が示してきたが、数字はなお見えぬままだ。そもそもGDPへの影響が小さければ、その基となる統計が不正なものであってもいい、ということではない。
 統計のうち特に重要とされる基幹統計は、政策立案のほか、民間の経営判断や研究活動などに幅広く使われる。正しいデータを社会が共有できていない状況を政府は重く受け止め、できるだけ正しいデータを早急に示すべきだ。    (編集委員・伊藤嘉孝)

https://www.asahi.com/articles/ASQ1C6S6GPDXUTIL03F.html

「二十計上 20年度3,6兆円  13~9年度は5,8兆円の可能性」統計不正 調査報告

 なぜ、このことが大騒ぎにならず、相変わらず「コロナ」と「ウクライナ」と「バイデン訪日」ばかりなのか?ぜひ、5月14日の朝日新聞のトップ記事を引用する。

22年5月14日 朝日新聞

統計軽視 姿勢あらわ

 基幹統計のデータが不正に書き換えられていた問題の発覚から5ヵ月。影響が兆円単位に及んでいたことが確認されたが、全容はまだ見通せていない。新たに計算ミスが放置されていたことが発覚するなど、統計軽視の実態が次々明らかになっている。
      (東郷隆、小寺陽二郎、柴田秀並)▼1面参照

影響の全容なお不明

 「公的統計の信頼を取り戻すべく、組織風土改革と公的信頼の向上に向けて努力をしていく」。13日午後、統計不正の影響を調査していた有識者らによる検討会議の報告書を受け取った斉藤鉄夫国土交通相は、こう述べた。
 今回の不正は、建設業者が受注実績を記して国に提出する「調査票」をめぐり起きた。具体的に行われていたのは、業者が毎月の提出期限に間に合わず数力月分をまとめて提出した場合、この数力月分全てを、最新1ヵ月の受注実績のように合算して書き換える行為だ。その結果、2013年度以降、受注実績の二重計上が生じて統計が過大になっていた。
 この不正が朝日新聞の報道で昨年12月15日に明るみに出た後、焦点となっていたのが過大の「幅」だった。国会でも「どの程度水増しされたか示すべきだ」(立憲民主党の階猛氏)との声が相次ぎ、岸田文雄首相は「過去の統計の遡及改定、数字の復元の検討を進めている」と釈明し続けてきた。
 問題発覚から5ヵ月。今回、ようやく有識者による検討の結果、二重計上による20年度分の過大幅が約3・6兆円だったことが明らかになった。ただ、生データの精査から判明した影響はこの1年分だけで、それより前の時期については、毎年度の過大額の目安が約5・8兆円と示されたものの、精査はこれから。不正の影響の全容は見えず、国交省の担当者も「(目安の)5・8兆円よりも(過大幅が)大きい可能性もある」としている。
 検討会議は今回、この統計を基に作成されて国内総生産(GDP)の算出にも使われる「建設総合統計」への影響も試算。13~20年度までの影響は「マイナスO・3~プラスO・6%」程度だったとし、美添泰人座長(青山学院大学名誉教授)は個人の意見だとことわったうえで「建設関係はGDPに与える影響というのは1割もない。その中で建設総合統計の果たす役割はさらに低い」と述べ、GDPへの影響は軽微との見方を示した。それでも、GDPへの影響がどの程度かか数字は見えぬままだ。
 法政大の平田英明教授(マクロ経済学)は「不正による基幹統計の数兆単位におよぶ過大計上はゆゆしき問題で、政府統計への信用を失墜させかねない」と指摘、「GDPへの影響だけにとらわれず、統計をつくる態勢を厳しく検証していくべきだ」と語る。

計算ミス対応せず放置

 二重計上をめぐっては、国交省が組織的に隠蔽工作を繰り返していたことが判明している。今回新たに、別の計算ミスについても発覚を免れようとしていたことが明らかになった。
 同省がこの日、新たに示した特別監察の報告書によると、ミスをしていたのは調査対象となる約1万2千の建設業者が、毎月受注実績を記入して提出する調査票の回収率の計算だ。
 19年4月に統計の担当部署に着任した課長補佐がミスの可能性に気づいたが、組織で共有されなかった。20年10月には、会計検査院の指摘を受けてミスであることを省幹部も含めて確認したが、是正や公表は行わなかった。
 同省はその直前の9月、厚生労働省による「毎月勤労統計」の不正を受けた対応として、統計に誤りの可能性があれば省内で速やかに情報共有し対応するルールをつくったばかりだった。
 にもかかわらず、ミスを把握しながら21年3月までの半年間、誤った計算をそのまま継続。21年4月、計算方法が全体的に変更されたタイミングに合わせてミスは是正したものの公表はせず、過去のミスの影響も放置していた。
 特別監察の報告書は「誤りに対する軽視、統計の利用者に対する想像力の欠如などがあった」と指摘。問題に気づきながら放置したことについては、「責任追及を回避したいといった意識があったと考えられる」と結論づけた。
 このほかに報告書は、政府が昨年末に国会で「修正済み」と説明した20年1月以降にも、実際には書き換られたデータが含まれていたことも指摘。担当部署のマネジメント不足などを原因に挙げたうえで、「問題を認識したマスコミの取材後に調査する機会があったにもかかわらず、行わなかった」とした。朝日新聞はこの問題を今年1月に報じていた。

再発防止国の対策まだ

 どう再発を防ぐか。国交省はこの日、「すみやかに取り組む事項」として、統計部門の人員増強▽調査のオンライン化▽研修受講の徹底▽専門家のアドバイザー任命、などの項目を公表。それに加え、今後の視点として「若手などの意見に基づく職場の風土・環境の改善」などを進める方針を掲げた。
 ただ、国の統計全体に網をかけるような再発防止策の姿はまだ見えていない。
 政府は毎月動労統計をめぐる不正を受け、19年から「統計分析審査官」を各省庁に派遣し、「監視機能の強化」を図ってきたが、今回の不正の発見には至らなかった。背景について美添座長はこの日、「人を減らし予算を削った上で仕事の量が増えていったことが主な原因」との見方を示した。

建設工事受注動態統計の不正の経緯

00年4月 遅くともこの時点から都道府県に指示し、受注実績の調査票を      書き換え。業者が数力月分をまとめて提出した場合、合算して      最新1ヵ月分に計上
13年4月 調査票が未提出の月に推計値を計上するルールを導入。合算も      続けたため二重計上が始まり統計が過大に
19年1月 「毎日勤労統計」の不正を受けた一斉点検。書き換えは報告さ      れず。
20年1月 都道府県に書き換えをやめるよう指示したが、国土交通省で書      き換えを継続。不正を隠すために二重計上する量を意図的に減      らす
  11月 会計検査院が問題を指摘。この頃までに担当室長が二重計上を      把握。12月には課長らに報告 
20年4月 書き換え、二重計上をやめたが、対外的に説明せず
21年12月15日、朝日新聞の報道で問題発覚。岸田文雄首相が問題を認      める。20年1月以降の統計は「修正済み」として補正予算の審      議には影響しないと説明
22年1月12日、朝日新聞の報道で、修正済み統計も一部で二重計上に       なっていたことが判明
     14日、第三者による検証委員会が報告書を公表
     21日、国交省が事務次官や当時の幹部ら計10人の減給処分な      どを発表       
   25日、朝日新聞か独自試算で20年度め統計が約4兆円過大だった疑      いがあると報道。統計データの復元に関する検討会議の初会合
    28日、再発防止策などを検討する会議の初会合
   5月13日、上記二つの会議が報告書を公表

■公表された不正のポイント
・統計データの書き換えで二重計上が生じ2020年度で基幹統計が約3,6兆円過大になっていた
・13~19年度の統計は毎年度約5,8兆円過大になるとの目安が得られた
・国交省が都道府県にデータの書き換えの中止を指示した20年1月以降も一部で続いていた
・二重計上の他に計算ミスが13~20年度に起きていた。国交省はミスを認識した後も、対応も公表もしなかった

21年12月23日 朝日新聞「どうみる統計不正」

官僚に利益ないでは誰に

弁護士 明石順平さん
 あかし・じゅんぺい 37歳。主に労働や消費者被害の事件を担当。国会で公述人として、統計データを基にアベノミクスや財政の問題点を指摘。著書に「アベノミクスによろしく」(集英社)。近著に「財政爆発」(KADOKAWA)。

 統計の基になる「生データ」を消しゴムで消す。まさかそんなことが起きるとは思わなかった。データは政策をつくる上の足腰であり土台。それが崩れれば、議論が成り立たなくなる。
 書き換えられたのは、建設業の受注実績を表す国の基幹統計の調査票。2013年から、提出が遅れた建築業者の受注実績の推計値をはじきだし、後から提出された実数と足す二重計上が始まった。安倍政権が進めた経済政策「アベノミクス」が始まった後だ。
 その後18年には今回と同じく基幹統計である「毎月動労統計」の不正が明らかになった。重大な点は、以前より平均賃金を高く算出する方法に切り替えたのに、さかのぼって計算し直さなかったため、18年だけ賃金が急上昇したことだ。これでは統計としての連続性が守られない。
 

国土交通省は会計検査院の調査を受け、都道府県に書き換え作業をやめさせたという。この時点でやるべきは謝罪と、さかのぼって正しいデータで計算し直すことだった。だがその後も自ら書き換えを続けた。
 それは、やめたらGDP(国内総生産)にマイナスの影響が出てしまうと思ったからではないか。統計を実態より、よく見せようとしたのではという疑念は、厚労省のときも今回も共通する。
 なぜ、書き換えや二重計上をしたのか。官僚にメリットはないはず。誰が指示をして、誰にメリットがあったのか。動機にスポットを当てて解明してほしい。


    (聞き手・宮野拓也)

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