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『コロナ利権の真相』 鳥集徹+特別取材班 宝島新書を読む    

湯水のように使った「コロナ予算」とは何だったのか?これを読むとその一端が見えてくる。まさに、「目から鱗が落ちる」とはこのことだ!!!

コラム 異次元!「コロナ予算」104兆円の衝撃

東日本大震災の復興予算は10年間の総額が32兆円

 新型コロナウイルスの感染拡大が始まつてから2年半以上が過ぎた。世界的なパンデミックによって、緊急事態宣言の発令や飲食店の時短営業および体業、人々の行動制限など過去に例のない事態が相次いだ。
 未曽有の危機を迎えた日本は、国民の命と暮らしを守るためにスピード感のある感染対策や経済対策を迫られた。その結果として、多額の税金が「コロナ予算」としてつぎ込まれた。むろん、適切な使い方によって救われた人や事業者は多かったはずで、感染対策においても潤沢な予算は大いに役に立っただろう。だが、社会も政治も混乱した状況で、ある意味ではドサクサ紛れに組まれてしまった「コロナ予算」の規模は本当に適切だったのだろうか。「コロナ予算」の検証が始まったことで不適切な使い道が次々と指摘されており、信じがたいほどの巨額の「ムダ金」が使われた可能性が高まっている。
 では、我々の血税からどれほどの額が「コロナ予算」に使われたのだろうか。
新型コロナウイルス感染症の流行が本格化した2020年、緊急事態宣言が全国に拡大してから約半月後の4月30日に令和2年度第一次補正予算が成立し、新型コロナウィルス感染症緊急経済対策関係経費として約25兆6000億円が計上された。内訳としては、雇用の維持と事業の継続に約19兆5000億円、感染拡大防止策と医療提供体制の整備および治療薬の開発に約―兆8000億円、官民を挙げた経済活動の回復に約1兆8000億円、対策予備費に約―兆5000億円、強靱な経済構造の構築という名目で約9000億円などとなった。
 それからわずか約―力月半後の6月12日には、第二次補正予算として約31兆8000億円のコロナ予算が組まれた。経済活動の停滞で打撃を受けた中小企業などへの資金繰り対応の強化に約=兆6000億円、今後の第2波。第3波に対応するための感染症対策予備費に約10兆円、地方創生臨時交付金の拡充や持続化給付金の対応強化のための対策費として約4兆7000円、医療提供体制等の強化に約3兆円、中小企業や小規模事業者の固定費軽減のための家賃支援給付金の創設に約2兆円、雇用調整助成金の拡充等に約4000億円といった構成になっている。
 さらに、翌2021年―月末には第三次補正予算が成立した。新型コ回ナ感染症の拡大防止策の予算として組まれたのは約4兆4000億円。病床や宿泊療養施設の確保などを主体とした医療提供体制の確保と医療機関等への支援として約―兆6000億円、新型コロナウイルスヮクチンの接種体制の整備や検査体制の充実などに約8000億円、感染症対応を目的とする地方創生臨時交付金などを中心にした「知見に基づく感染防止対策の徹底」との名目で約―兆7000億円といった内訳だった。さらに「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」として約=兆7000億円が計上された。これは、地域。社会・雇用における民需主導の好循環の実現として約6兆5000億円、経済構造の転換・イノベーション等による生産性向上として約2兆4000億円、デジタル改革・グリーン社会の実現としてカーボンニユートラル技術の開発支援やマイナンバーカードの普及促進、地方団体のデジタル化支援などに約2兆8000億円などといった内容だった。合計すると、第二次補正予算のコロナ予算は約16兆1000億円に上る。
 令和2年度(2020年度)だけで3度の補正予算が組まれ、その合計は約73兆50
00億円となる。これに第三次補正予算の「防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保」のための予算約3兆1000億円などを加え、令和2年度のコロナ予算は総額約77兆円と算出される場合もある(「NHKスペシャル」のデータなど)。2011年3月に発生した東日本大震災の復興予算は、約10年間の総額が約32兆円(東京電力への求償対象経費と復興債償還費等を除く)となっている。コロナ予算はたった―年間の補正予算で、その倍以上となってしまったのだ。もちろん、コロナ予算はワクチン接種や感染対策、個人から企業まで含めた経済対策、地方への支援など使い道は多岐にわたるので、想定以上に額が膨らんでしまうのも理解できなくはない。
 しかし、前述した東日本大震災の復興予算との比較でもわかるように、―年で70兆円以上の予算が組まれるのは異次元の規模であり、やはり「異常」と言っても過言ではないだろう。

国民一人当たりの負担は約82万円


 2021年3月には、総額約106兆6000億円の令和3年度予算が成立し、新型コロナ対策の予備費として5兆円が計上された。
 同年12月には、令和3年度補正予算が成立。新型コロナ対策関連の予算総額は約20兆4000億円となった。新型コロナ拡大防止策としては約18兆6000億円の予算が組まれ、病床確保やワクチン接種体制の整備、治療薬の確保、時短要請等に応じた飲食店などへの協力金、雇用保険財政の安定などに充てられた。住民税非課税世帯への現金給付、緊急小口支援等の特例貸付、売り上げが減った中小企業への最大250万円の「事業復活支援金」なども盛り込まれた。さらに、ワクチン・治療薬の研究開発や生産体制の整備、新GoToトラベル事業、予約不要の無料検査の拡大を軸にする「ウィズコロナ下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え」の予算として、約―兆8000億円が計上されている。
 令和4年度(2022年度)予算でも、5兆円の新型コロナ感染症対策予備費が確保された。2022年9月には、そのうち約3兆5000億円が新型コロナおよび原油価格の高騰。物価高への対策費として使われることが決定した。
 これまでの「コロナ予算」をざっと合算すると、総額は約104兆円に上る。これは令和2年度の「コロナ予算」の総計を73兆5000億円とした場合の金額だが、第三次補正予算の「防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保」のための予算、約3兆1000億円などを加えると、総額が約107兆円となる。2年半ほどの間に、単年度の国家予算に匹敵するほどの税金が「コロナ対策」名目の予算に化けたのだ。もはや天文学的な数字で実感が湧きづらいレベルの規模だ。リアリティを少しでも感じられるように現実的な数字に変えてみよう。2020年に実施された国勢調査によると、我が国の総人口は1億2614万6099人。「コロナ予算」の総額約104兆円を人口で割ると、国民一人当たりの負担は約82万円となる。赤ちゃんから学生、社会人、定年退職したご年配の方まで、あらゆる国民が約2年半の間に「コロナ予算」として82万円を負担したのだ。そう考えると、新型コロナ関連予算の規模が前代未聞であつたことが改めて実感できるのではないだろうか。

使い切れず「不要」と怒った予算が6兆円超


 もちろん、いかに巨額の予算であってもそれをすべて適切に使つているのなら何の問題もない。だが、本書でもさまざまな視点から指摘しているように「ムダ遣い」「不適切」とみられている使い道は数え切れないほどある。 また、あまりに予算が巨額すぎて「持て余した」という事態も起きていたとみられている。財務省が発表した令和3年度決算によると、本予算や補正予算で計上した約22兆4000億円が次年度に繰り越された。
 低金利下で使い残した国債費を含め、使い切れずに「不用」となった予算は過去最大の6兆円超となっている。2021年10月の総選挙で自民党は経済対策を公約としたため、緊急性の低い事業も予算に数多く組み込まれてしまったことなどが影響したと指摘されている。政府が国民や企業へのアピールとして「やってる感」を出すために規模ありき
の予算が組まれ、実際の執行までは考えが回つていなかったと言える。
 コロナ関連予算でどれほど「使い切れなかった予算」があったのかは不明だが、大規模な予算の持て余しまで起きたことを考えれば、かなりずさんなものだったと容易に想像できるだろう。
 そうした持て余しをなくすために政府が強引に予算を使おうとすれば、大した成果もなく運用停止になった新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA(ココア)」や、全国に配られて物議を醸した「アベノマスク」などといった、珍事業が繰り返されかねない。当然、予算の使い道を探している政府にすり寄り、甘い蜜を吸おうとする企業や怪しげな人物も無数に現れることだろう。そうなれば、もはや誰を救うための予算なのかわからない。約104兆円が我々の血税であることを踏まえれば、深く考えもせずに巨額の予算をじゃぶじゃぶと湯水のように使うなど、とても看過できることではない。

莫大な予算が日本のさらなる没落につながる!?


 そればかりか、コロナ対策に莫大な予算をつぎ込んだことが日本のさらなる没落につながるとの指摘も上がり始めている。支援金によって潤った結果として新型コロナ患者の受け入れを拒否するようになった病院や、必要以上の支援金。協力金を受け取っていた小規模飲食店、無料PCR検査事業で荒稼ぎしているとされる企業など、「コロナ予算」で儲けた人たちもたくさんいる。しかし、そうした不適切とも言えるお金の流れは壮大なツケとなって国民に返ってくる。「コロナ予算」にお金を回しすぎ、本当の意味での経済対策や国際的な競争力の強化、次世代の技術開発などに十分な資金が行き渡らなかったことで、今以上に諸外国に遅れをとる状況になるとみられているのだ。
 それでも巨額予算をつぎ込んだコロナ対策によって国民の命と暮らしが守られ、少しでも幸福になるならいい。だが、実際は海外に比べて過剰とも言える対策で若い世代は大きな犠牲を払うことになった。大学はオンライン授業が増加し、せっかく入学しても「友達が一人もできない」「チームワークで課題を解決する経験ができない」などといった問題が生まれ、将来的に日本経済にとっての大きな損失になるとの指摘がある。また、男女の出会いが減って婚姻数の減少につながり、少子高齢化の進行が早まることも確実となった。 一方、高齢者はコロナ対策によって多くの命が守られたといわれているが、ステイホームが習慣化したことで足腰が弱ってしまった人が増加し、これから健康寿命が縮んでいくと危惧されている。
 史上稀に見る大浪費が日本にどれほどのすさまじい苦境をもたらすことになるのか。いずれにしても、100兆円超の「コロナ予算」の使い道、そして政府や関係各所の責任については、徹底的に検証されるべきだろう。

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