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第6回笹井宏之賞 応募短歌③

短歌16作

「恐ろしや」伏して嘆いた姫の声気づけば獣にとってかわって

鋏だけ置いていってくれません?髪くらいしか切りゃしないから

空っぽのカゴだけがあるその中に住んでいた子は幸せかしら

幸福の象徴などと呼ばないでそれを冠するのは彼だから

青い鳥夢想をやめず飛び回る彼の愛こそ私にあればと

宝石を運んだ鳥は落涙す彼の代わりにぽろぽろぽろと

簡単にはがせる皮膚を喜んで血肉にかえる人間どもよ

翼さえなければとっくに王子様あなたの側で私は眠った

今もなお遺言信じ運びだす王子の亡骸つつくくちばし

こんにちはもしも来世があるのなら朝の家には誰も呼ばない

おばけなら消えてしまったと微笑んだあなたはきっとかれらのなかま

シーツだけ被ったおばけの愛らしさシーツすら被らぬおぞましいそれ

寒い日は毛布を奪い合ったのに あなたと別れてはじめての冬

うつぶせの圧迫感に耐えられず横を向いてもさびしいったら

布団からはみ出た足にあたる骨 どこに埋めるか決められなくて

火を焚いたひとりでこっそり裏庭でなんだか大人になった気分


2023年の第6回笹井宏之賞に応募していた50首連作の、25首から40首までの掲載です。残りの41首目から50首目以降も後日公開します。

連作タイトルは「空想の世界だけが友達」でした。

同賞に応募した1首目から10首目はこちら。

11首目から24首目はこちら。

他につくった短歌は以下にまとめています。

見ていただきありがとうございました。

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