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ロンドン・ナショナル・ギャラリー展を観て西洋絵画について考えてみた

大阪の国立国際美術館へ「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を観に行って参りました。

こちらの巡回展は、イギリスのロンドンにあるロンドン・ナショナル・ギャラリーという美術館に展示されている作品です。同美術館には、2300万点にも及ぶ西洋絵画が集められており、ゴッホやフェルメール、レンブラント、モネ、ルノワールなどの誰もが知る画家達の絵を一挙に見ることができます。

本来、国外への貸し出しはほとんど行われることはないそうで、貴重な機会だと思い見学して参りました。

多くの方がすでにロンドン・ナショナル・ギャラリー展について語られていますので、ここでは私の好きな絵と、それについてのちょっとした意見を述べていきたいと思います。

1.聖エミディウスを伴う受胎告知

[画像引用]国立国際美術館

こちらは、イタリア人画家「カルロ・クリヴェッリ」が描いた作品です。イエスの母マリアが、イエスを身籠ったことを天使から宣言される「受胎告知」の場面を描いています。画面右の女性がマリア。そして画面左、2人いるうちの左側にいるのがマリアに受胎告知を告げに来た天使「ガブリエル」で、その横が「エミディウス」という人物。

エミディウスは、マリアのいる街「アスコリ・ピチェーノ」の守護聖人です。

私もあまり観たことはないなと思ったのですが、受胎告知の場面にマリアと大天使以外の人物がいるのは稀なことなのだそう。どうやら、アスコリ・ピチェーノという街の自治権が容認されたことを祝う作品でもあったようです。

この絵自体も、当時最新の技法である「遠近法」をふんだんに使用し、ローマやギリシャ風の模様を描いた壁や柱やなどが美しく画面を彩ります。作者である「カルロ・クリヴェッリ」の力量の高さが伺えますね。また、イタリア人らしい色彩豊かさには惚れ惚れするばかり。

壁や柱にあるレリーフの模様をじっくり観てきましたが、細かいことと言ったらないですよ。絵も、想像よりもかなり大きくて迫力がありました。大きさ細かさもあり、私もですが他のお客さんも隅々まで観ている人が多かったです。




2.聖ゲオルギウスと竜

[画像引用]国立国際美術館

本絵を描いた「パオロ・ウッチェロ」は、遠近法の腕前に長けた画家であると伝わります。画面右にいる聖人ゲオルギウスが持つ「槍が竜に刺さる」というこの角度が画面構成をぎゅっと凝縮させリアルな世界観にしているのです。

ここで倒されている竜とは、疫病を表しています。竜などのモンスターは、西洋だと異教徒の悪魔を指すこともありますが、疫病を表す場合もあるんだなぁと思いました。

また日本で竜といえば水や雨を司る「水神」であったり、中国では皇帝を表しています。国が違えば同じ竜でも持っている役割に違いがありますね。

3.レディ・エリザベス・シンベビーと アンドーヴァー子爵夫人ドロシー

[画像引用]国立国際美術館

美しい女性達の優雅なひとときを描いているのは、イギリス宮廷画家の「ヴァン・ダイク」です。ヴァン・ダイクはフランス人で、あのバロックの巨匠「ルーベンス」の弟子になります。

ヴァン・ダイクは、ルーベンスの写実表現と華麗な画面構成を引き継いでいます。そんな彼はイギリス宮廷界では超が付く売れっ子でした。

その理由は、描いた人物を本物より少しだけ「見目良く」することを得意としていたらからです。確かにそのままな似顔絵を描かれるより、少しだけ可愛く・かっこよく描いてくれる方が気持ちいいですものね。

4.ひまわり

[画像引用]国立国際美術館

これはもうゴッホの「ひまわり」といえば誰も知らない人はいない名作中の名作。私もこの絵は大好きです。ロンドン・ナショナル・ギャラリー展にあるひまわりは、ゴッホの全7作ある中の4枚目に当たります。

なんでもこの絵は、当時一緒にフランスのアルルで同居していた画家で親友のゴーギャンにあげたものらしいのです。個人的には、誰かに依頼されて描いた絵ではなく親友のために描いた絵が後世まで語り継がれているということに痺れます。

またキャンバスへの絵の具の載せ方も、厚塗りに塗られていることから、絵を描くのに気持ちが乗っていんだなと証明するかのようで観ていて楽しいです。

あとは、アルルというと私はゴッホの「アルルの部屋」という絵が好きです。なんてことない日常のワンシーンなんですが、あたたかな色合いと独特な歪みに癒やされます。(これも同名作が3作存在します)

■ゴッホ「アルルの部屋」(別名に「ファン・ゴッホの寝室」)

[画像引用]Wikipedia

印象派の画家の絵は、その名の通り「印象」のみなんですよね。でもそれは、絵を観て受け取り側がどう考えるかで「印象」の意味は変わってくると思います。

特に、モネの睡蓮なんかは、同じテーマで何枚も何構図も描いています。それでもひとつとして同じ絵はありません。描く日や天候、時間、光の当たり具合など、条件が違えば同じにはなりえません。

そして、そこにはリアルな描写ではなく、画家の目から見えた世界になります。それこそが「印象」の真髄だなと近頃は考えるようになりました。

■モネ「睡蓮」

[画像引用]国立西洋美術館

あと当時は、カメラがだいぶ普及してきた時代でしたので、似顔絵も風景もリアルに描く必要がないくらい写真が表現してしまいましたからね。画家も違う方向性を模索する人々が現れても不思議ではないです。

5.ポリュフェモスを嘲あざけるオデュッセウス

[画像引用]国立西洋美術館

こちらは18世紀後半に誕生した「ピクチャレスク」(絵のような)といった少し独特な美学のもと描かれた絵画です。自然の中ある美しさを、懐かしさや哀愁などを幻想的に描きます。私もこちらの「ウィリアム・ターナー」の作品は、知らない光景なのになぜか懐かしいと感じてしまいます。

シーンは、ローマ神話の英雄「オデュッセウス」が、巨人を倒して船で出向するシーンです。絵の奥の消失点から夕日が優しく広がり、雲や水面に映り込むなんとも繊細な色合いが素敵ですね。

6.おわりに

そういえば、知り合いに「今度、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展に行くんだ」と話したら、「そうなんだ。でも僕はロンドンで観てきたことあるから」とナチュラルなマウントを取られました。……別に…全然悔しくなんかないし。

とにもかくにも素晴らしいの一言でした。

そして今回は、グッズがすみっコぐらしとコラボしていたので、全種類揃えてきました。左からドガの「踊り子」、ゴッホの「ひまわり」、レンブラントの「肖像画」、フェルメールの「ヴァージナルの前に座る女」、モネの「睡蓮」をテーマに作られています。なんて可愛いんでしょうかね❤


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