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#077コロナ禍で、組織の感情を変える「EQ」感情マネジメントが見直されている。

最近、人への投資が叫ばれているが、改めてEQマネジメントの重要性が再認識されている。今回、年金シニアの好奇心は、EQマネジメントの関連記事を拾い読みしてみた。
1)先ずは、コロナ禍を逆手に取り、DX戦略マネジメントに成功した「ホームセンター市場で業績1位」のカインズなどがその代表例ではないか。レガシーな組織構造から一気に転換し、組織改革をやり遂げつつある事例を紹介したい。


2)「EQブーム」の再来

大芝 (グロースウエル代表)
日本に初めてEQが紹介された90年代後半は、終身雇用の時代です。当時のビジネスパーソンは、会社に守られている半面、無条件に上司の命令を聞くことを求められるのが普通でした。
一方、EQはセルフマネジメントの一種です。その目的は、感情をマネジメントすることによって、自らを適切な行動へと向かわせることです。こうしたアプローチは、当時の上意下達なカルチャーにはいまひとつなじみませんでした。
その後、2000年代中盤にも再びEQが注目された時期があったのですが、折しも当時の日本ではドラッカーの『マネジメント』がブーム。
「部下のマネジメントは上司の仕事」という風潮の中で、このときもEQが広く普及するには至りませんでした。
転機となったのはコロナ禍です。テレワークが広がるなかで、モニターの内部だけでは部下のコンディションを把握できなくなってきました
定期的な1on1だけで、部下が本当に考えていることを把握するのは難しいものです。人は「思考」と「感情」で動く生き物です。このうち、働くモチベーション、ひいては会社を辞めるか辞めないかといった判断に大きく影響するのは「感情」のほうです。
にもかかわらず、ビジネスシーンでは「思考」ばかりが注目されてきました。『7つの習慣』をはじめ、ビジネス系自己啓発書の名著と呼ばれるものは、主に思考を変えようと説くものです。その一方で、「感情」という生々しい部分はスルーされてきた感があります。しかし、会社や上司によるマネジメントに限界が来ているいま、一人一人が自分の感情を認識して管理していく時代に移行せざるを得ません。
そんななかで、感情をマネジメントするための「知識体系」であるEQが注目されているのです。

EQの「8つのコンピテンシー」

EQの8つのコンピテンシーは、大きく3つの能力に分類することができます。

1つ目は「感情を知る能力」。すなわち、自分の感情のあり方や、その感情がもたらす行動パターンを理解することです。これは、感情をマネジメントするうえで最も基本となる能力です。

2つ目は「感情を選ぶ能力」。すなわち、自分の意志で最善の道を選べる能力です。感情がもたらす結果に対してシミュレーションを行ったり、「適切な行動」に向かわせる感情を意図的につくり出したりすることを指します。

3つ目は「感情を活かす能力」。すなわち、自分だけでなく「すべてにとってよい」を実現する能力です。他者の気持ちに寄り添い、状況も踏まえたうえで、事態がよくなるような「行動」に移したりすることを指します。

「感情が組織を変える」

もし、組織の一人一人がEQを高めていくことができれば、組織の在り方も大きく変わることでしょう。昨今、「(会社や仕事に)飽きた」という理由で退社していく人が急増しています。優秀な人材ほど、こうした理由で辞めていくことが多いと言いますから、事態は深刻です。
しかし、EQの高い人材であれば、自分がどういうときに「飽きて」しまうのかを知っています。自分が仕事に何を求めているのかを、感情ベースで理解できていると言ってもいいでしょう。それは「ウキウキ」かもしれないし、「ワクワク」かもしれないし、「ドキドキ」かもしれません。いずれにせよ、EQの高い人は、自分のモチベーションを生みだしている感情を言語化したうえで、その感情を生みだせるよう、自らをナビゲートすることができます。こういう人材がリーダー層にいれば、組織として「ウキウキ」「ワクワク」「ドキドキ」を生みだす仕組みを取り入れることも可能です。まさに、「感情が組織を変える」のです。

大芝 「「感情を選ぶ能力」のひとつである「楽観性の発揮」でしょうか。楽観性とは「ポジティブな結果を期待する」傾向のことです。楽観性を発揮している人は、成功することを前提に行動するので、大きな目標に挑戦することができます。楽観というと、「根拠なく物事がうまくいく」という思考停止のような状態を想像するかもしれませんが、それは誤りです。むしろ、どうすればうまくいくかを「思考」できるのが、楽観性を発揮できている状態です。とりわけ日本人には、楽天性を発揮するのが苦手な人が多い傾向が見られます。これは、社会がある程度恵まれていて、「乗り越えられないような大きな問題」がなかなか発生しにくいため、楽観性を伸ばす機会が少なかったからだと考えられます。生命保険会社のメットライフは、保険販売員の採用にEQのコンピテンシー評価を活用したことで知られています。このとき、「楽観性の発揮」のスコアが特に重視されたという逸話は、示唆に富むのではないでしょうか。

一人一人異なる「脳の嗜好性」

──ご本の中では、EQの核になる考え方として、「8つのコンピテンシー」と並んで「8つのブレインスタイル」というものが紹介されていました。両者の位置づけについて、改めて教えてください。
「8つのコンピテンシー」は、個人がセルフメンテナンスを行うための指標です。一方、「8つのブレインスタイル」は、一人一人の「個性」をベースに、職場の人間関係をデザインするための指標です。組織全体としての感情をポジティブなものに変えていくには、この両方が大事であるというのが、EQの考え方です。先ほど「個性」と言いましたが、EQでは「脳の嗜好性」と呼びます。脳の嗜好性を調べるには、下記の3つのスケール(ものさし)を用いて、その人がどのような感じ方や考え方をする人なのかを分析していきます。

その分析結果を、それぞれ特徴的な傾向を持つ8つのスタイルのいずれかに当てはめていくのです。

EQの「8つのブレインスタイル」

──8つのスタイルそれぞれに、固有の持ち味や役割があるイメージですね。

つまり、ブレインスタイルがわかれば、相手の立場で物事を考えやすくなるのです。その結果、私たちはより適切なコミュニケーション手段を選べるようになり、逆に不適切なコミュニケーションを回避できるようになります。
考えてみれば、EQが最初に日本に紹介された1990年代は、「会社が求める社員像」に、誰もが合わせていた時代でした。一方で、一人一人の感情や考え方を「個性」として活かそうというEQの発想は、まさに「多様性」を実現するためにあります
その意味で、四半世紀を経た令和の日本でEQが改めて注目されているのは、時代の必然だと思うのです。」


<まとめとコメント>
カインズの成功事例からも理解できるように、EQの高いリーダーが、DXマネジメントを引っ張り、更に「DIY・HR」という人事マネジメントを掲げての組織改革は見事なものだ。人間関係をデザインするために、従業員の多様な性格や価値観を理解し、コミュニケーションを効果的に行っていると思われる。
また年金シニアの私にも、8つのブレンスタイルのどれに当てはまるのかを再考してみるのも退屈しのぎにもなるのだが・・・・・。
チャットGPT時代に、「思考」と「感情」をどうさばくのか課題は山済みである。





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