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天然と賢さのあいだで

私の仲のいい友人には共通点がある。
皆、地頭はいいのに繕わないゆるさや不器用さがあるところだ。私はそこが人としてたまらなく愛おしいなと思う。
よくインテリぶったり、賢くみられたくてボロを出そうとしない人がいるが、恰好つけようという人よりかは断然気持ちがほぐれるくらいの人の方がちょうどいい。

今日はそんな大切な友人の一人を紹介したいと思う。
ここでは仮に名前をAさんとしよう。彼女は大学時代からの知人で4年生になって急激に仲良くなり、社会人4年目の今も変わらずとても仲良くさせてもらっている。
物事に真剣で賢くて、留学経験もあって英語も達者。音楽の才能もずば抜けているAさんなのだが、何よりも魅力的なところがある。


極度の天然だという事。

Aさんは表向きには前述した通りとても真面目な人物に見えるのだが、仲を深めるとあら不思議。こんなにも面白い人がいたのかとそのギャップに驚くことが何度もあった。
今回はそんなAさんの天然エピソードを書いてみようと思う。

私たちは大の歌好きで月に一度のペースでカラオケに行くような仲(このコロナ禍で全く今は行けていないが)。
その日も新宿の歌舞伎町のまねきねこに二人で行き、早速部屋に入りドリンクバーから飲み物を持ってこようとしていた。
私は機械からカルピスソーダを入れて部屋に戻ると、荷物を置いていたAさんが私を見るなり「え、カルピスソーダあるの?飲みたい〜」と言って足早にドリンクバーに向かって行った。だが、しばらくして帰ってきたAさんの手に握られていたグラスに入っていたのはどうみてもウーロン茶。


「???」


私が「あれ?カルピスソーダなかった?」と尋ねると「うん。ペプシのやつともう一つの方しかなかってん」と狐にでも化かされたような顔をしているAさん。
もしやと思い、私はAさんに聞いてみた。

「ペプシのほうの機械触ってみた?」
Aさん「いや、なかったから隣のやつでウーロン茶入れてきちゃった」
「え、ペプシのやつにカルピスソーダ入ってたのに!」
Aさん「え、そうなん?あれペプシの機械じゃなかったの!?」

(画面が白くなり劇的ビフォーアフターの穏やかなピアノの曲が流れ、徐々にドリンクバーの映像が映される)
なんという事でしょう。Aさんはそのマシンからペプシコーラしか出ないと思っていたのです。
匠によって設置されたペプシコーラの為だけの専用マシンの存在を素直に信じている、こんな健気な人がどこにいるでしょうか。

・・・と茶番はここまでにして、Aさんはタッチパネル式のマシンの液晶にペプシのロゴマークがでかでかと浮かんでいたばかりに、その注ぎ口からはコーラしか出ないと思っていたのだ。
彼女の普段の慎重な性格がここで裏目に出るなんて。思わずお互い大笑いをした。

で、まだここで終わりではないのだ。
それから数時間経った時のこと。飲み物がなくなったAさんは椅子から立ち上がりこう言う。

Aさん「ちょっとポップコーン飲みたいから入れてくるね!」
「??????」

唖然とした私にAさんは慌てて「間違えた!コーンポタージュ!」と言って訂正する。
ここは歌舞伎町。ちょうど店の前の目と鼻の先にTOHOシネマズがあったので、ちょっと頭の中で考えることでもあったのだろう。私も思わず「ポップコーン飲みたかったらTOHO行っといで!」と突っ込んでしまった。そして天然エピソードはまだまだ続く。
3、4時間歌い続けてお腹もすいてきた頃。ちょっと腹ごしらえをしようとサイドメニューを頼むことに。Aさんは開いたメニューからフライドポテトを指さして一言。

Aさん「ここはやっぱりオートバックスに行こ!」
「????????」

喉に油でも差すつもりだったのだろうか、はたまた喉ごと交換するつもりだったのか。でもオートバックスは歌舞伎町からは遠いし・・・(否、そこではない)。
聞けば本当はオーソドックスと言いたかったようだ。無事解決。めでたし、めでたし(?)

そんな感じで年を重ねれば重ねるほど、Aさんの天然エピソードは現在進行形で量産されている。
それほど人間として愛おしい一面を持つAさんだが、彼女は去年仕事を辞め現在はまた違う夢に向かって勉強に励みながら、彼氏さんと同棲生活をしている。

ちなみに私はその彼氏さんともとても仲良くさせてもらっている。友人の彼氏と仲がいいってあまりない。でも出会ってすぐに仲良くなれるほど素敵な人で。

何事に対しても腹を決めたら揺るがない侍気質な子なのだが、Aさんに負けずゆるくて面白い一面があり、そりゃ気があうわなあ、と納得してしまうくらい二人は仲が良かった。こんなに応援したいと第三者が思う関係も珍しいと思う。

彼氏さんとの時間は普段からもちろん大切にしているAさんだが、私も交えてテレビ電話をしたり一緒に観光をしてくれる二人の懐の広さに私は毎度感激している。強すぎる。神々しい。

二人を見ているとまるで夫婦漫才でも見せられているかのよう。常に笑いっぱなしだ。
斯くいう私は恋愛にはここ数年無縁で、なんだったら恋愛もののドラマは見ていてイライラする傾向があるくらいなのだが、二人に対してはそのような感情を抱いたことがない。

惚気ることなく互いに支えあって将来のことも真剣に考えているからだろう。そしてそういう関係を作るとかつての友人と疎遠になる人もいる中で、むしろずっと繋がっていてくれる事に私自身も大きな信頼を置いているからだと思う。


あまり具体的に考えていなかったけれど、将来のパートナーや生き方についてこの二人には考えさせられることが沢山あって、とても感謝している。二人が幸せになってほしいなと常々願うばかりだ。


人生において大事にしたい友人がいるのはありがたい事。そして天然かつ賢さのバランスが程よいって良い。

そんなわけで今日は唐突に始まった私の自慢の友人紹介。
また気が向いたら書いてみようかな。

読んでくださりありがとうございます。 少しでも心にゆとりが生まれていたのなら嬉しいです。 より一層表現や創作に励んでいけたらと思っております。