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結婚式は、あります!


今年の5月上旬、29年生きてきた人生の中で初めて友人の結婚式に参列した。

一年前までは本当にこの世に結婚式は存在しているのか、自分とは縁がなさすぎて「それは何をされている式なの?」と心の中でアッコさんに扮したMr.シャチホコがずっと居座っていたのだが(これについてはこちらの記事に書いてあります)、この期に及んでようやくそれを目撃することができたのだ。
と、茶番はここまでにして。

今回の結婚式は高校時代から今までずっと事あるごとに時間を共にしてきた、私にとって大切な友人の式だった。

大学の吹奏楽団時代を共にした仲のいい友人3人。
彼女たちとは年に数回集まっては旅行に行ったりビデオ通話をするのだが、入籍をする話を聞いたのはそのうち1人の家でお泊り会をした時のビデオ通話越しだったことを覚えている。

パートナーがどんな人なのかという話は以前から聞いていたけれど、実際にその時画面越しに会ってとても優しく包容力のありそうな姿を見て、「あらー、初めましてー!」「素敵な彼氏さんやんー」と夜中にも関わらずみんなで大喜びした事も新鮮に思い出す。

この友人たちの良いところは人のゴシップや陰口なんかで盛り上がらないところだ。
会ったらたちまち、それまでに溜めに溜めたエピソードトークの大放出大会が始まり、しょうもない話でみんなで大笑いする。

知り合った頃の他人行儀すぎる会話のことや、大学の定食の唐揚げが歯茎が傷つくほど固かった話、眠たくなった時に友人が超不機嫌になる話など・・・。
話す相手がいなければ消化できなかった小さな事でも、ここなら心おきなく話せる。

でも、笑ってばっかりではなくしんどい時はじっくり話を聞いてくれるのもこの友人たちの信頼できる部分だ。
無理に「頑張ろう」と言って上げようともしないし、ネガティブに引き摺り込もうとする事もない。

自身の未来に希望が見えなくなりかけた時も、助けを求めればいつだって相談に乗ってくれるし、頼ってもくれる。芯が強い人たちばかりだ。
お互いにとって居心地の良い場所があるということに年々感謝が尽きない。

それくらい大切な友人の挙式。誘われて行かないわけがない。
限られた友人と身内だけで執り行うということで、3月末には厳かな招待状も届いた。

私の住むアパートの簡素なポストには似合わないくらいのその招待状に胸が高鳴った(旧Twitterで何ヶ月かに一回は流れてきていたような、結婚式の招待状ハガキに粋なイラストを描きこんで返事をするという一つの夢が叶ったのも嬉しかった)。

ただ、ここからである。
結婚式初参戦の私、マナーなんぞとは無縁の世界にいたので初めてのことだらけだ。無礼なことはできない。

20代前後ならまだしも良い歳して参戦するのだから、スマブラでいうピカチュウやらマリオやらカービィみたいな百戦錬磨を潜り抜けている冠婚葬祭の古株ベテランに舐められては困る。

ということで衣装を揃えるところからはじまり、テーブルマナーやご祝儀など、当日を迎えるまでずっと落ち着けない日々を過ごしていた。
「この場合はどうしたらいい?」「じゃあこんな時は?」と、お得意の石橋を叩いて渡るための猛チェックをしていたので、側から見てもずっとそわそわしていたと思う。

ただ当日を迎えてしまうと緊張が吹き飛ぶほど、温かく柔らかい雰囲気に迎えられて参列することができた。
受付を通るとロビーや階段には二人の思い出の写真が沢山飾られている。

久しぶりに会う友人や先輩と楽しく話を交わしながら、会場のスタッフさんに導かれるままに挙式が行われる場所に向かっていくと、一体こんな空間どこにあったんだというような建物や庭が現れた。

チャペルに入るのも初めてだったし、さっきまであんなに街中にいたのに突如出現したこの空間に圧倒される。
こんなに隔離された空間にあるのでは、そりゃあ普通に生活していても見つかるはずがないわな、とこれまでの疑問に合点がいった。

司会の声と共に挙式が始まり、新郎新婦が入場してくる。
タキシードとドレスに身を包んだ二人の晴れ姿はとても輝いていた。
人が特別な日に纏うこの眩いオーラが私はとても好きである。

披露宴も笑いあり涙ありの数時間だった。
二人がハリウッド映画さながら外から車に乗ってやってきたり、シェフたちがテラスで腕をふるって料理を作ってくれたり、新郎新婦が手紙だけでなく歌で親への感謝を伝える場面もあったり・・・。こんな贅沢な式が初めてで良いのかと戸惑ってしまうくらい心に残る1日だった。
これが最初で最後の参列になっても全然良いです、私。

あともう一つ嬉しかったのは、私が二人に向けて描かせてもらった記念のイラストを大切に会場に飾ってくれたり、引き菓子の袋に使ってくれていた事だ。これまた嬉しさで胸がいっぱいになった。
本当に夢を見ていたのかと思ってしまうほど、想いで満たされていた空間だった。

でも外へ出てしまえばさっきまで本当に秘密の部屋にいたのかと思うくらい、平凡な日常が目の前にあった。

絶えず走っていく車を横目に駅に向かって行けば、ショッピングモールへ買い物に来た人たちで街は溢れかえっていく。

友人と私はその中に溶け込みながら電車に乗って新大阪駅へと向かい、カフェで談笑を楽しんだあとそれぞれの宿泊場所へと戻っていった。

今日の昼間にあったことを遠い夢のように感じながら、人で賑わう近鉄電車に乗った。

一人になった途端緊張が解けたのか睡魔に襲われ、立ちながら眠りへ落ちかける。
でもSTAP細胞くらいこの世にあるのか不思議でならなかった結婚式という謎の存在をこの目で見ることができた私は、心の中で高らかに宣言していた。
「結婚式は、あります!」

読んでくださりありがとうございます。 少しでも心にゆとりが生まれていたのなら嬉しいです。 より一層表現や創作に励んでいけたらと思っております。