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光る君へ(27)ラブシーンを分析してみた・大河ドラマで学ぶ脚本テクニック
大河ドラマ「光る君へ」が面白い。ということで、「「光る君へ」で学ぶ脚本テクニック」と題した動画を作っていくことにしました。動画といっても内容はスライドとテキストなので、noteにも載せていきます。今回は第27回の学びポイントです。
歴史の知識や「源氏物語」については一切触れませんので、予めご了承ください。
今回の学び:秀逸なラブシーン
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冒頭で、まひろと道長は偶然再会し、一夜を共にします。
まさに「焼けぼっくいに火がつく」という表現通りの、ベタな展開でした。
メロドラマではあまりにありきたりな展開なので、こういうのは下手にやるとギャグになってしまう危険すらあります。
しかし、今回のラブシーンはとても良かったですよね。
これはやはり、脚本がよく出来ているからだと思います。
どういうことか、詳しく分析してみたいと思います。
鏡像のキス
![](https://assets.st-note.com/img/1721526002678-EWwZQOuKGM.jpg?width=1200)
今回の石山寺でのシーンは、第21回の六条の廃屋シーンと「鏡像関係」になっています。
鏡像というのは、「反転して反復している」という意味です。
キスの場面に注目して比べると、そのことがよくわかります。
第21回も今回も、2人のキスでシーンが終わります。違いは、第21回はまひろからキスするのに対し、今回は道長からキスすることです。
しかしどちらも キスのやり方は同じです
まひろも道長も、相手の顔を両手で包み込みながらキスします。ですから、この2回のキスはセットで構想されている、つまり「鏡像関係」を意識して演出されていることは明らかだと思います。
なぜそんなことをするのかというと、鏡像関係にすることで、逆の意味が生まれるからです。
第21回のまひろのキスが「別れ」を意味するキスであるのに対し、今回の道長のキスはその逆、「新たな関係を始める」という意味のキスです。
「二人の時間を巻き戻す」
そう表現してもいいかもしれません。
こんな感じで鏡像関係になっているのは、キスの場面だけではありません。そこに至るまでの会話も、そういうイメージで作られています。
心を見抜く場面の鏡像
![](https://assets.st-note.com/img/1721526017047-bni3W3upMs.jpg?width=1200)
ポイントを2箇所に絞って分析してみます。まずは、相手の心の中を見抜く場面。
第21回で、まひろが道長の心を見抜く場面がありました。
中宮や伊周を追い詰めたのは自分だという道長の顔を見て、まひろが「お顔を見て分かりました。あなたはそういう人ではないと」と言う場面ですね。
それが今回、立場を入れ替えて繰り返されます。
まひろが考えていることを言い当てようとした道長に、まひろは皮肉っぽくこう言います。
「偉くおなりになって人の心が読めるようになられたのですね」
道長は間髪入れず言い返します。
「偉くなったからではない」
これを聞いて、まひろを演じる吉高さんは、動揺した表情を浮かべます。カメラもそれをアップで捉えます。なぜかというと、これは愛の告白だからですね。そういうセリフの意味を汲んだ演技であり演出です。
それにしても、吉高さんはこういう微妙な演技が本当に上手いですね。
表情が非常にナチュラルです。それもあって、前回の宣孝との夫婦喧嘩を知っている我々は、まひろに感情移入してしまうわけです。
道長自身が第21回の意趣返しを意識したかどうかはわかりません。
しかし、弱っているまひろにしてみれば、再会していきなり「俺にはお前の心が分かる」などと言われたら、気持ちがよろめかないはずがありません。
「お健やかに」の鏡像
さて、もう一箇所注目すべきポイントは、まひろの「お健やかに」というセリフです。
このセリフは、第21回にも今回にも登場しますが、まったく同じ言葉でありながら、意味は正反対になっています。
こういう 同じセリフに別の意味を持たせるテクニックは
上手く使うと効果的ですよね。
第21回の「体をいとえ」「はい。道長様もお健やかに」は、文字通り別れを告げるセリフでした。
演じる二人も、キッパリ、サッパリという感じで言い切り、お互いに遠くを見たまま、視線を交わしません。
一方今回の「お健やかに」は逆に、「別れたくない、でもそんなこと言えない」という、未練たらたらな意味です。
その意味を汲んで、演じる二人はお互いに見つめ合い、動揺しまくりという感じで演技しています。
特に道長を演じる柄本さんは、「お前もな」というセリフの前に一度視線を外し、小さくため息までついています。
感情表現を抑えて道長を演じている柄本さんにしては、珍しくハッキリした演技です。
「…お前もな」というセリフで「くそう。別れたくないなんて俺も言えねえ」というニュアンスを表現するための演技ですよね。
このようなテクニックを駆使して、ご都合主義を感じさせることなく、二人の時間を過去へと巻き戻していく。そういう巧みなラブシーンだったと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
背景画像:
From The New York Public Library https://digitalcollections.nypl.org/items/510d47e3-fe62-a3d9-e040-e00a18064a99
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