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光る君へ(20)映像表現も素晴らしい・大河ドラマで学ぶ脚本テクニック
大河ドラマ「光る君へ」が面白い。ということで、「「光る君へ」で学ぶ脚本テクニック」と題した動画を作っていくことにしました。動画といっても内容はスライドとテキストなので、noteにも載せていきます。
今回は第20回の映像表現についてです。
今回の学び
![](https://assets.st-note.com/img/1716457909448-Kkmu4mkX0N.jpg?width=1200)
テーマは「遅い矢」と「朝の光」です
遅い矢
![](https://assets.st-note.com/img/1716457922400-Qgf8TMByki.jpg?width=1200)
まずは「遅い矢」。
「長徳の変」のきっかけとなった、隆家が花山院に矢を射掛けるシーンの編集についてです。
このシーンの編集は、こういう順番になっています。
「隆家が矢を放つ」「花山院が驚く」「矢が牛車に突き刺さる」
これ、改めて考えると、おかしいですよね。
隆家の放った矢は、すごいスピードで飛んで、花山院が乗り込もうとしていた牛車に突き刺さったはずです。
ですから、現実的に考えれば、花山院が驚くのは、どう考えても、矢が牛車に突き刺さった後です。
矢のスピードがよほど遅いくない限り、現実ではこんな順番にはなりません。
前回のトンデモショット
![](https://assets.st-note.com/img/1716457940429-4hPvgiBUz9.jpg?width=1200)
今回のこのシーンは前回のラストシーンの繰り返しですが、前回はもっと現実を無視した表現がなされていました。
なんと、驚く花山院の鼻先を矢がかすめて飛びすぎるというスローモーションのカットが挿入されていました。
花山院にスーパーヒーロー並の動体視力と反射神経がなければ、こんなことは不可能です。
しかし、実際にドラマを見て、このシーンに違和感を感じた方はいないと思います。
それどころか、熱の入った演技と相まって、花山院の狼狽ぶりがよく伝わってきたと感じた方が多かったのではないでしょうか。
私もこの、あえて現実を無視した編集や映像表現は、とても効果的で面白いなあと感じました。
朝の光
![](https://assets.st-note.com/img/1716457952724-5uUKDqwcv8.jpg?width=1200)
2つ目は「朝の光」。
謹慎を言い渡された中宮定子が、こっそり帝に会いに来るシーンのライティングについてです。
このシーンでは、庭の奥、画面向かって左上から、強いライトの光が差しています。
このライトには、2つの意味があります。
ひとつは朝の光ですね。
昇ったばかりの太陽の光が、庭と廊下に差し込んでいるという情景を、ライトで表現しています。
もうひとつは、キャラクターの感情ですね。
どういうことかというと
人目を忍んで帝に会いに来た中宮の立ち位置は、向かって右側ですので、彼女の顔には、前方から光が当たる形になります。この光は、中宮の喜びの表情をより強調しています。
一方で、彼女に相対する帝は向かって右を向いていますので、その顔は、暗い影になります。この影が、帝の葛藤を私たちに伝えます。
中宮はその場で手をついて、兄の許しを請いますが、帝は無言をもってそれに応えます。
このロングショットが素晴らしいですよね。
影に沈んだ帝と、わずかに差す光の中で救いを求めて帝を見上げる中宮定子。計算されたライティングで美しさと感情表現を両立させた、素晴らしいショットです。
その後、帝の心中を察した中宮は、背を向けて帰ろうとします。
帝は思わず後を追い、立ちふさがって彼女を抱きしめます。
立ち位置が入れ替わったことで、今度は帝の顔がライトによって明るく照らされます。
光と影のコントラストよって、揺れ動く二人の感情を表現した、素晴らしい演出だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
背景画像:
From The New York Public Library https://digitalcollections.nypl.org/items/510d47e3-fe62-a3d9-e040-e00a18064a99
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