光る君へ(7)反復と偶然・大河ドラマで学ぶ脚本テクニック
大河ドラマ「光る君へ」が面白い。ということで、「「光る君へ」で学ぶ脚本テクニック」と題した動画を作っていくことにしました。動画といっても内容はスライドとテキストなので、noteにも載せていきます。今回は第7回の学びポイントです。
歴史の知識や「源氏物語」については一切触れませんので、予めご了承ください。
今回の学び
第七回の学びは、反復と偶然です。
面白い脚本は、この2つの使い方が上手いと思います。
反復
まずは反復です。
今回のクライマックスは、「打毬」のシーンでした。これは、第四回の「五節の舞」シーンの反復です。
前回はダンスで今回はスポーツ、また前回はまひろがプレイヤーで道長が観客、今回は道長がプレイヤーでまひろが観客、という違いはありますが、どちらのシーンも、いにしえの文化を再現した、映像的な見せ場です。
撮影のやり方も似ていて、どちらのシーンでも、真上から撮影した俯瞰ショットが最初にインサートされます。
前回の「五節の舞」は、脚本的には、まひろが大変ショッキングな事実に気づくという重要なシーンでした。
われわれ視聴者はそれを見ていますから、「またまひろにショッキングなことが起こるのでは…」と、今回はシーンの初めからハラハラ・ドキドキしてしまいます。
実際にまひろは、「打毬」のあと、大変ショッキングな会話を聞いてしまい、道長からのラブレターを燃やしてしまいます。
このような、映像的な見せ場と脚本的なクライマックスの一致は、おそらく今後も反復されるだろうと思います。
まひろが逃げた猫を追いかけるのも、第一回で子供時代のまひろが、逃げた小鳥を追いかけるシーンの反復です。
まひろが何かを追いかけると、それが彼女の運命を大きく変えてしまいます。
小鳥を追いかけたせいでまひろは道長と出会い、それが遠因となって彼女の母親は殺されます。
今回も、猫を追いかけたせいで彼女はショッキングな会話を耳にし、道長からのラブレターを燃やしてしまいます。
この まひろの反復される行動は、「我を忘れて何かを追いかけてしまう」という彼女のキャラを表しているのかもしれません。
それから、傷跡で直秀の正体がバレるシーンも、以前に見たシーンの反復です。
大人になったまひろは、足の傷跡を見て、道長が三郎であることを知りました。
今回道長は、腕の傷跡を見て、直秀が盗賊であることに気づきます。
道長と直秀という対照的なキャラクターが共に、自分より「強い者」によってつけられた傷を持つという、なかなかシビれる反復シーンだと思います。
偶然
2つ目の学びポイントは
シーンのきっかけとして、偶然をうまく使っているということです。
腕の傷跡で直秀の素性がバレるシーンには、2つの偶然が使われています。
一つは行成の突然の腹痛。
それで彼は打毬に参加できなくなり、チームの頭数を揃えるために道長が直秀を呼びます。
もう一つは試合中のにわか雨。
雨で濡れた体を拭くため、直秀は上半身裸になり、傷跡を晒してしまいます。
にわか雨はまた、猫が逃げるきっかけにもなっています。
逃げた猫を追いかけたせいで、まひろはショッキングな会話を聞いてしまいます。
偶然は使いすぎると説得力がなくなりますが、うまく使うと偶然なのに必然に感じられます。その良い例ではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後も、こんな感じで学びポイントを取り上げていくつもりです。
背景画像:
From The New York Public Library https://digitalcollections.nypl.org/items/510d47e3-fe62-a3d9-e040-e00a18064a99
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