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~第56回 ~「タケノコの話」

端午の節句にあたる5月5日は祝子祭でした。
この神事は国の宝である子供たちの健やかな成長を願うもので、近年新しく行うようになった祭祀です。

氷川神社では以前、旧暦の5月5日の節句には「粽神事(ちまきしんじ)」を行なっていました。(現在は6月5日)
邪気を祓うといわれる真菰で作った粽を神前にお供えしますが、粽は5月5日の節句に古くから食されていたものです。

一方、本年の祝子祭では神社の神域で採れた筍(タケノコ)をお供えしました。
タケノコは8世紀成立の「古事記」にも登場する食材で、「筍」「竹の子」などの字が当てられます。
成長が早く、10日間(旬内)で竹になることから「筍」の字が当てられたり、竹の地下茎から伸びた若い茎であることから「竹の子」と書かれたりします。
このタケノコは『古事記』には、氷川神社の主祭神・須佐之男命の父神、伊耶那岐命(イザナギノミコト)が「黄泉の国」の醜女(シコメ)に追われた時の逸話に登場します。
伊邪那岐命が醜女から逃げる際、右の髪から竹櫛を引き抜いて捨てたところ、土に刺さった櫛からタケノコが生え、これを醜女たちが食べている間に逃れることができたという、タケノコで禍から御身を護られた逸話です。

タケノコも粽も、太古より災禍から身を守るために食された食材です。
6月5日の粽神事も、邪気を払う祈りを込めて奉仕を致します。

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〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕

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