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~第45回~「疫病の話」

新型コロナウィルス感染拡大防止にむけ、ワクチン接種が始まりました。
ワクチンが無かった時代、日本人は流行り病を疫病として扱い、その被害を抑えるための信仰や年中行事を大切しました。

例えば、平安時代初期に編纂された勅撰史書『続日本紀(続紀)』の慶雲3年(706)の記載に、
「是の年、天下の諸国に疫疾ありて、百姓多く死ぬ。始めて土牛を作りて大きに健す」
とあります。
土牛は中国の『礼記』などに登場するもので、日本では疫病を祓うため大寒の前夜に陰陽師が皇居の東西南北の門口に立てたものとして知られます。

また、疫病と牛の繋がりは中国由来に限らず、日本固有の信仰の中にもあります。
素戔嗚尊と牛頭天王を疫病の神とする信仰です。
古来、仏教の牛頭天王が道教系の武塔神と同一視されており、さらに『備後国風土記』によれば、この武塔神は、疫病を免れる茅の輪を蘇民将来に与えた素戔嗚尊とされることから、疫病を鎮める神として信仰が拡がりました。

どれほど広がっていたかというと、慶応4年(1868)に出た神仏分離令で
「中古以来某権現或ハ牛頭天王之類其外仏語ヲ以神号ニ相称候神社不少候何レモ其神社之由緒委細ニ書付早々可申出候事。」とあり、
つまり「権現」と「牛頭天王」の神号を用いる寺社はその名前を改めろ、と名指しで禁令が出されたほどです。

氷川神社の主祭神である素戔嗚尊は神社の枠を超え、広く疫病祓いの神として信仰されてきたことが歴史から窺えます。


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〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕

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