見出し画像

ISPは多彩なメンバーで活動しています。

主要メンバーである農学博士の秋山侃さんを中心にISP自然公園にある植物をつくば市市之台自生の植物に戻して、自然環境を整えるプロジェクトが心柱となります。
2020年プロジェクト開始時点での、秋山さんの調査によるとISP自然公園にある植物は草本58種、木本18種計76種うち外来29種。
守っていくべき種が色々あることが確認できました。

市之台いきものがたり

前置き

 ISP(市之台自然公園)は、現在は面積2100㎡(705坪)の草っ原ですが、ISP周辺域(ほぼ市之台第2自治会域に相当、約3.2ha)には、森林、草地、果樹園、水田、池、住宅地など多様な生態系が含まれていて、ここを動植物が絶えず行き来しています。
 そこでこのコーナーでは、そんな市之台周辺の自然の営みを四季の写真と文章で報告したいと思います。対象は植物、鳥、虫、獣などですが、どれも私が専門的に勉強した訳ではありません。間違いを書くことがあるかもしれません。

第1話 衣文掛(えもんかけ)になったカワウ

                  (2021年12月14日)
 ISPの北西側に接して位置する市之台池は、以前は養魚池として使われていたそうです。長さが約100m、幅が約50mの人工池で、現在は溜池として下の水田へ水を供給しています。これまでに確認できた水辺の野鳥はカワセミ、カイツブリ、オナガガモ、カルガモ、コサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、ゴイサギなどですが、最近ウが訪れています。
 私が長良川の鵜飼いで見たウミウは一生懸命アユを捕まえていましたが、ここのウが魚を追っている姿は見たことがありません。この写真は池から突き出た杭にとまり、羽を半分広げて明らかに羽を干している様子です。まるで衣文掛になったようで不思議な格好です。
 こんな格好で羽を干す鳥はほかに見たことがありません。ものの本によると水鳥はふつう 羽毛に大量の油分を含んでいて水に浮くのですが、鵜は油分が少なくて潜水に適しています。そのかわり羽の渇きが悪いため、このようなポーズを取っていると考えられます。
 ところでウにはカワウとウミウがいるそうで、こいつはどっちか。写真を撮影した藤岡耕治さんがネットで調べた結果、目の周りの白い毛からカワウと判定しました。ちなみに現在カワウは多くいるので猟銃で撃ってもよいがウミウは少ないため保護されているそうです。確率論的にもカワウです。
データ情報 カワウ(ペリカン目ウ科、分布は本州以南、関東以南では留鳥)

写真 衣文掛けになって羽を干すカワウ(2021年12月13日市之台池にて)

             文章:秋山 侃 写真撮影:藤岡耕治


第2話 冬空を赤く染める大木 イイギリ(イイギリ科) 

                                                                                  (2022年1月14日)
 空気が冷たくなって森の落葉が進み、赤い実が目立つようになる木がイイギリで、20m近くまで成長します。本州以南の山野に稀に自生もしますが、庭園に植えられ、それが鳥によって拡散されることも多い木です。ISP周辺域では善隣亭の後ろの林に高木が5-6本あります。雌雄異株ですので近くに雄の木がないと実がつきません。幹は灰褐色ですべすべし頬ずりしたくなるような木肌です。花は晩春咲きますが、雌雄とも目立つものではありません。11月頃になると大きくなった実が房状に付いて目立つようになりますが、この時期には鳥は食べません。おいしくないとか毒があるからと言われていますが、種子が十分熟すまで無駄に食べさせないための植物の知恵かと思います。今年は観察していると、12月の中旬になってようやくヒヨドリが啄むのが見られるようになりました。イイギリは飯桐と書き、かつては葉で飯を包んだからと言われています。殺菌作用があるようです。
 なお、イイギリのほか市之台で冬に赤い実をつける高木としては、常緑広葉樹のシロダモ、クロガネモチなどモチ類(主に庭木)があります。また低木にはナンテン、ノイバラ、マンリョウ、センリョウ、ヤブコウジ、アオキ、ピラカンサなどがありますが、不思議なことにほとんど常緑です。

写真1.イイギリの花 (2021年5月23日)
写真2.イイギリの実   (2021年11月8日) 
写真3. イイギリの雌樹(2021年12月12日)直径は約7mm、ナンテンより少し大きい 樹高は約20m

                                                                文章・写真: 秋山 侃  


第3話 ジャンボなキカラスウリとは(カラスウリ科) 

                                                                                  (2022年2月15日)

  秋から冬にかけて、この辺りの林の縁を歩くと、カラスウリ(烏瓜)の赤い実が沢山なっているのに気が付きます。林がすっかり伐採されたISPフィールドでもちょっと土を掘ると、カラスウリの塊根(サツマイモ状の芋)がたくさん出てきます。こうしたカラスウリは、夏の間は地表で蔓を伸ばし葉をいっぱいに茂らせます。しかし草原になったISP内ではほとんど花が咲くことがありません。たまたま垣根や木に取り付いて高いところに顔を出した株だけが花を付けられるようです。そのうえ雌雄異株と言って雄株と雌株があるので、近くに両性が育っていないと実を結びません。
 カラスウリの仲間にキカラスウリ(黄烏瓜)というのがあります。名前の通り黄色い実を付けますが、一番の特徴は実の大きさです。普通のカラスウリの大きさが5-7㎝のところ、キカラスウリは12㎝にもなり(写真2)、生重は200gもありました。どちらのカラスウリも夕方に開花し始め、翌朝にはしぼんでしまうので、妖艶なレース編みの花を見たことがない人が結構いらっしゃるようです。そういう方には、蕾が膨らみ始めたカラスウリの蕾を持った茎を切り取って持ち帰り、水盤につけておくのがお勧めです。夕方6時頃から、結んだ蕾がほぐれてレースのドレスに衣装替えするところを居ながらにして見学できます。
キカラスウリは牛久市では希少植物に指定されているくらいで、つくばでもめったに見られません。でも市之台から歩いていける距離内(半径4㎞四方)に3か所の生育地が見つかりました。その一つが昨年秋に宅地造成のため潰されてしまいました。その直前、私は塊茎を3つほど掘り出してISP圃場に植え替えることができました。去年夏には旺盛に葉は付けましたが、花も実も付きませんでしたが、今年は咲いてもらいたいです。

写真1.キカラスウリの花 (2021年6月18日)
写真2.カラスウリ(小さくて朱色)とキカラスウリ    
(大きくて黄色)の実の比較 (2022年12月10日)

                                                                     文章・写真: 秋山 侃     


第4話 樹高はどうやって測る? ユリノキに挑戦

                     (2022年3月15日)

 ユリノキは北米原産の外来植物で明治初年に日本に渡来し、庭園や街路樹として植栽されています。アメリカの自生地では高さ50mにも達するそうです。筑波では多分まだ移植後60年未満なのに、筑波大学の病院前にユリノキ通りという鬱蒼たる並木道がありますし、西大通の並木として牛久栄進高校の辺り一帯のユリノキは直径30-40cmになっています。市之台では善隣亭東側の森の端に並んで4本のユリノキがあります。研究学園開発の1960-70年代に誰かが苗を植えたのでしょう。初夏、径6-7cmで微芳香を放ちホオノキに似た白い花を咲かせます。葉形が半纏のような形をしていることから、別称ハンテンボク、英名は花の形からTulip treeと言います。秋には黄色く紅葉します。レストラン・パレット側の小高い場所から眺め、このユリノキがISP周辺で一番背の高い木だろうと判断し、以下の方法で測りましたところ樹高34mと出ました。
 ところでこうした大木の樹高はどうやって測るのでしょうか。10mとか15mくらいまでであれば竹竿に印をつけて、対象とする木の横に立てて測ることも可能でしょう。しかしそれ以上になると無理です。そこで私が習った簡易法をご紹介しましょう。この方法は森林の材木を持続的計画的に利用する技術に長けたスウェーデンで使われてきました。
 使われるのはリュッテという道具です。原理は「直角二等辺三角形の直角を挟む二辺の長さは等しい」という小学生でも知っているものです。この道具がない時は二等辺三角形の定規と50m巻尺さえあれば測れます。図を見て下さい。①測定木の根元(C)から、梢(A)が良く見える方向に真直ぐ巻尺を伸ばす。②測定木の根元から1.2mの高さにマークを付ける(B点)。③伸ばした巻尺上の適当なところに立ち、定規の45度の角を目の高さにもって、定規の直角の先端(B点)を見る。④顔を動かさず目だけ動かし、B点と測定木の最高地点(梢A)の両方が丁度見える地点を巻尺上で捜す。⑤この巻尺表示に1.2mを加えた値が樹高を表しています。なお1.2mは、普通の人の目の高さです。
 この測定法は簡便ですが、色々制限があります。平坦地であること。梢と株元が見通せること。葉のない冬が適しています。慣れた人でも1-2mの誤差が出ること。 

写真 ユリノキの花 (2018年5月8日)

図 樹高計測概念図(未完成)             
文章:秋山 侃、写真:戸塚昌宏


第5話 コクサギの秘密(何かがおかしい) 

                                                             (2022年4月15日)

 コクサギ(小臭木)はつくば周辺の丘陵や森で時々見かける低木です。ミカン科特有の臭気がありますがクサギ(臭木、クマツヅラ科)ほど嫌な臭いではありません。地元の里山の会で歩いているとき、先達に「この植物はとても変わった形をしているので、覚えておくと良いですよ」と紹介されました。花は黄緑色で小さく目立ちません(写真1)。果実は茶色で4つの種子が2×2状に並びます。ちょっと見、どこが変わっているのか分からなかったのですが、よくよく見ると葉序(葉のつき方)がおかしいのです。普通葉序は互生、対生、輪生などが一般的ですが、コクサギの葉は、右右、左左と2枚ずつ同じ側に付いています。広義では互生かもしれませんが、こんな付き方は見たことがありませんでした。
 家に帰ってインターネットで調べてみると、このような葉のつき方は「コクサギ型葉序」と呼ばれていることが分かりました。さらに調べていくと、ほかにもコクサギ型葉序の植物があり、イボタノキ(モクセイ科)やケンポナシ(クロウメモドキ科)が該当することも書かれていました。このうちイボタノキについては、私の見た限り普通の対生でした。
 さらに調べていくと、この現象を発見し「コクサギ型葉序」という名称を与えたのは有名な前川文夫東大教授で、植物学雑誌に載せていることも知りました。何か受光上有利な訳があるのかもしれませんが、簡単には説明できません。

写真1 コクサギの花(枝の途中の黄緑色)
写真2 コクサギの葉序

                                        
文章・写真: 秋山 侃


第6話 ニトリとコクサギのつながりは?

                                                                 (2022年5月15日)
  (株)ニトリ広報担当者殿                
 初めまして、私は茨城県つくば市に在住する男性老人です。里山の植物に興味を持っていて。近くの野原や丘陵などを散策することを趣味としております。そんな中で、最近ある事実に気づいてお尋ねする次第です。営業とは関係のないことで恐縮ですが、もしお分かりでしたらお教えください。あるいは分かる方をご紹介いただければ幸いです。
 添付した文章(第5話)は、私が近所の人たちに珍しい植物などを紹介する不定期の読み物に最近書いたものです。
 要はこの辺りの野山でよく見かける「コクサギ」という低木の葉序(葉のつき方)が変わっていて、右右、左左、右右という風に葉をつける(写真1参照)ことに興味を持ち色々調べてみると、ある面白い事実が見つかりました。普通、植物は対生、互生、輪生などで規則正しく葉をつけます。ところがコクサギの右右、左左という付き方は特殊なものとして「コクサギ型葉序」と名付けられていることを知りました。インターネットで調べてみると、極めて少ない例として、イボタノキとかケンポナシがこれに該当することもわかりましたが、私はコクサギ以外ではまだ確認できていません。
 そんな中、ある時、我が家二階の寝室のカーテンをぼんやり見ている時びっくりしました。カーテンに描かれた図柄の植物の葉序が正に「コクサギ型葉序」で描かれているのです(写真2参照)。このカーテンは西日が当たる寝室の遮光の為に、ニトリ牛久店で5-6年前に購入したものでした。プリント柄であまり高級ではない「大衆向け」製品だろうと思われます。このカーテンの図柄を作製した人は一体どんな人なのか、果たして珍しいコクサギ型葉序を意識して図柄を決めたのか、それともそんなこととは関係なく、植物を知らないアーティストがたまたま描いてしまった作品だったのか、ぜひとも知りたくなりました。
 もしこの件について何かお分かりでしたらお知らせください。 秋山 侃


写真1 コクサギ型葉序のコクサギ
写真2 ニトリで購入したカーテン


                        文章・写真: 秋山 侃

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?