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安部公房写真展 Kobo Abe as Photographerカタログ『安部公房全集026』(新潮社刊)/目は旅をする065(都市と写真)

安部公房写真展 Kobo Abe as Photographerカタログ(ウイルデンスタイン東京刊)『安部公房全集026』(新潮社刊)

安部公房は、1993年ちょうど30年前に68歳で急死した。1924年生まれだから、来年生誕100年ということになる。
だからと言って僕には過去の人ではまるでない。彼が書いた小説やインタビュー、戯曲などを読むと、僕にとり彼は最も刺激的で、「存在の新しいモデル」なのだ。だから、全く死んだ感じがない。

今でこそ、村上春樹や多和田葉子がノーベル文学賞に取り沙汰されるが、安部公房は早くから海外での翻訳も多かったし、「急死がなければノーベル賞を取ったろう」と今も言われている「文学者」だ。
彼がもう少し長生きしてくれていたら、会ってインタビューしたかったと思う。

彼はある時に「言語を使って反言語的な作品を書く」と言ったが、これは安部の基本的なスタンスであったと思う。
『砂の女』『箱男』『密会』などの小説は、高校生の頃から読んでいたが、その効き目は、自分が年齢を重ね、一方では彼の死後の30年の間、時代がどんどん加速度的に劣化自壊して行く中で、安部公房がとった立場のラディカルさを強く痛感する様になっている感じがする。
時代が悪くなればなるほど、安部の世界に近づいていくとも思う。

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