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「ノマドランド」が教えること/一日一微発見211

最近はどういうわけか東京ではなく、京都の小さな映画館に行くことが多くなった。
大学の授業の翌日の昼に、久しぶりに京都シネマに渚と一緒に、クロエ・ ジャオ監督の『ノマドランド』を見に行った。

最初に感想を言うと、この映画がアカデミーを獲るというのは、本当にコロナ時代の象徴的なことであり、また「ノマド」という流動的な存在が生み出されていくグローバル経済の矛盾が生み出したものが映画のモチーフになっていることもまた、見事だと思った。

主役の名女優フランシス・マクドーマンの演技も、ジャオの演出力も、非常に賞賛したい。

しかし、まず書いておきたいこともある。
映画のはじめに台詞で出てくるが、「ノマド」は「ホームレス」のことではなく「ハウスレス」だという説明のこと。
つまりこの映画は、ノマドを「車上生活者」に限定して描いているのだということ。

ノマドというコトバや実態には、もっと複雑な「事情」がたくさん入っていることをわすれてはならない(哲学者のジル・ドゥルーズが言ったような、あるいは映画監督トニー・ガトリフが一貫してロマをテーマに描くような)。

ジャオは、この映画をポリティカルなものにしたくなかったと、インタビューでも語っているが、いや、はっきりと政治性(かたより)があることは、看過できない。

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編集者・アートプロデューサー・京都造形芸術大学教授/後藤繁雄です。 アートや編集のこと、思考、アイデア、日々起きていることなどをその都度書いていきます。 ここでの文章はハウトゥにはならないと思いますが、知性や感性を刺激したい人に読んでもらったらいいかなと思います。 僕は、人は、大きな出会いがやってきて変わるというより、微妙なものに気がついてだんだん変わることのほうが「可能性」が高いと思う。「微発見」。 それには、訓練が必要で、この「一日一微発見」も、僕の訓練法のひとつです。

「一日一微発見」というのは、僕が師匠だと思っている文化人類学者、故・岩田慶治が日々やっていたこと。 僕はそこからヒントをもらって、もう15…

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浜松と京都、東京の3拠点で暮らしながらアートプロデュース、編集、大学教授などをやっています。新刊 「超写真論 篠山紀信写真力の秘密」(小学館)「現代写真アート原論」(フィルムアート社)など発売中です。「自己編集(リエディット)」のためのスーパースクールも開講中。