僕編8章

「戦略的編集」の時代が始まる/僕たちは編集しながら生きている 8

※このマガジンは、後藤繁雄が1996年から続けている「スーパースクール」のスクーリングの内容をもとに、2004年に初版出版された「僕たちは編集しながら生きている」の文章を加筆修正し、2010年に出版した「僕たちは編集しながら生きている・増補新版」の文章をそのまま掲載しています。年代やプロジェクト、事例はその当時のままとなり、現在は行われていないものもあります。


※別ページでの解説、「注釈欄」はこのマガジンでは省略します


※このマガジンに使われているスクーリングの内容をアップデイトした形で、現在も「スーパースクール」は、DMMオンラインサロンを利用した東京スクーリングと、浜松スクーリングを開催しています。詳細は、後藤繁雄のHPをご覧ください。

01 なぜ「戦略的編集」なのか


 本書が出た2006年以降、情報と我々を取り巻く環境は急変し続けています。2009年には、リーマンショックによる経済不況により、なんと140誌を超える雑誌が廃刊となりまし た。

創刊50年の「highfashion』、『エスクアイア』や「STUDIO VOICE 」も、相次いで姿を消したのです。それは不況による広告出稿の激減もありますが、同時に、媒体としての重要性がはっきりとweb広告へと移行したことを示します。

高機能化するiPhone、そしてiPadなどスマートツールがブームとなり、かつてあった出版を中心としたパラダイムは、はっきり終焉したと言ってよいでしょう。


 またコミュニケーションのあり様も、ブログやSNS を経て、「同時性」を求めるTwitterが爆発的に浸透したことにも注目すべきです。

高度な機能を持つツールが次々に手に入り、コミュニケーション依存症と言っていいぐらいの「なう」な事態。

だからこそ、いかに情報をたくみにコントロールし、自分の生活を効率よく、そして楽しく過ごすことができるようになれるか。もはや「情報量」ではなく、情報の「編集力」を身につけるかが決め手の時代に突入していることは明らかですね。


「編集」は、活字×ビジュアルメディアをつくるために進化してきたノウハウだったけれど、それが今や重要な「生活編集」「編集生活」の術となりました。

以前から述べてきたように、「編集」は、情報の「収集」→「加工」→「提供」·「蓄積」のすべてのプロセスに関わる作業・ノウハウ。しかし、技術を知識として習得するだけではだめで、重要なのは、どんな才能(人)と出逢うことができるか、そして「編集」の結果、どんな場が誕生するかということです。

面白い暮らしをしたかったり、いい仕事をしたければ、「面白い才能」に出逢わなければならない。情報が溢れ、ツールが行きわたった今だからこそ、「うまくやる」技術がますます必要だということです。


 僕が考える「戦略」とは、「うまくやる」ためのものです。

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