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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第3話

第3話 「パシノン草のこと」


パシノン草は、
夜に咲く。

日暮れ頃から、
小さなつぼみが
顔を出し、
月が光る頃に、
ひとひら、
ひとひら、
花びらを開く。

夜に咲く
雲の花だ。

僕たちは、
さっそく、
パシノン草を
探しに行く。

昼間に、
大きな雲が出たら、
パシノン草が咲く
合図なのだ。

「いいかい。
ピートくん。
パシノン草に、
気付かれたら、おしまいだ。
パシノン草は、
人知れず咲く花だからね。
気を消さなければ
見ることができないぞ」

レイじいさんの言う通り、
パシノン草の花は、
誰も見たことがない。

「じゃあ、
なぜ、
夜に咲くって
知ってるの?」

「よく聞いた。
それは
ベジータ・ベジノさんに
聞いてごらん」 

イカリ島に住む、
そのおじさんは、
雲の研究家で、
雲印を
よく知っている。

雲の花も。

「ベジータ・ベジノさん。
パシノン草を知ってるの?」

「ああ。一回だけね、
見たよ。
不思議な花さ。」

「どんな色? どんな形?」

「さあねぇ。
見てみなきゃ
わからないねぇ」

「どうやったら、
見られるの?」

「君の気を消すんだよ。
そしたら、
見られる」

気を消すって、
どうするのか、
僕にはわからなかった。

レイじいさんは、
やり方を知ってはいるが、
教えることは難しいと言った。

つまり、
見たいけれど見たくないよ
というふうにすることらしいが…

できるだろうか。

「イカリ雲が出たぞ。
今日は、3つ咲くよ」

イカリの塔から、
ベジータ・ベジノさんの声。

「さぁぁ、行くぞっ!」

レイじいさんは、
気合いを入れて
気を消した。

僕も気を消す。

夜になって、
探し出す。

どんな花かって?

見なきゃわからないよ。

でも、ちょっとだけ。

それは、
白くて
黄色くて、
甘くて、
とがってて
ふわふわの
泡さ。



To be continued. 

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