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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第7話

第7話 「実りのパレードと青空マーケット」


実りのパレードには、
みんな、
とびきり背の高い竹馬に乗って参加する。

なぜなら、
雲の上の青空マーケットに
顔が出せないからね。

青空マーケットには、
大きな雲に乗った人たちが
たくさん
やってくる。

あちこちから
珍しい食べ物や
手作りの家具とか
鞄とか帽子を持ってくるんだ。

そして、
僕たちの
持っているものと交換する。

僕とレイじいさんは、
竹で、でっかいピーターを作った。

ピーターは、
竹でできた大きな人形。

たくさんの竹を組み合わせて
腕と足をつけて、
がしがし歩けるようにした。

顔に目を付けて、
鼻も口も付けて、
ピーターと名付けて。

僕たちは、
ピーターのがっしりとした両肩に乗る。

僕が右肩。

レイじいさんは、左肩。

周りを見ると、
みんなは、
巨大熊や鹿の角を大きくしたものや、
パワーショベルロボットみたいなものを作って乗っていた。

それから、
ものすごく高い高い竹馬に、明るい色を塗って、
上手に操って乗っている人たちも
たくさんいる。

「こういうところに
全力を尽くすのが、
楽しい暮らし方で、
その中で
センスを発揮するのが腕の見せ所だ」と
レイじいさんは、
鼻をぷぷんと鳴らす。

「ワシは、
珍しいファイの実を
青い服と交換するぞ。
苦くて甘くてしょっぱい未来の味さ。
月のカケラみたいに、
ところどころ光るんだ。
夜に照らすとね。
ピートくんは何にする?」

その時、
威勢のいい声が聞こえてきた。

「さあ、いらっしゃい。いらっしゃい!」

「すてきなものを持ってきたよ」

「おいしいものを持ってきたよ」

いろんな声が響く。

高い声、低い声、よく通る声。

いくつもの
ぽっかり浮いた雲の上に、
赤いじゅんの実、
くもの糸のレース、
甘いポー菓子、
目移りするほどすてきなものが
たくさん見える。

でも僕は…

「あ! それ、おくれ!」

レイじいさんは、
丸い雲の上のおばあさんに、
青い服を見せる。

レイじいさんは、
気に入っていた青い服を持ってきたんだ。

でも、
おばあさんは首を振る。

「私には、明るい色の服は似合わなくてねぇ・・・」

「じゃあ…これ、銀の懐中時計」

「私は、時計は使わないんだよ…」

「確かに…ワシも使わないんだ…」

レイじいさんは、苦笑いする。

おばあさんは、
困った顔をして、僕の方を見る。

「おや、そのセーターならいいよ。
孫に着せられる」

結局、
僕の持ってきた黄色いセーターは、
ファイの実になった。

「ピートくん、ごめんよ…」

レイじいさんは、極上のファイの実を
たくさん受け取りながら、
僕に謝る。

その時だった。

勢いよく流線形の雲が流れてきた。

「あ!」
と思った瞬間、
レイじいさんが青い服を空に投げた。

青い服が空を飛び、
次の瞬間には、
流線形の雲の上から
小さな袋が
しゅるりと落ちてきて、
僕の膝の上に
ぽとんと落ちた。

流線形の雲の上から、
羽根の帽子をかぶったお兄さんが
ひょっこりと顔を出し、
青い服を振って挨拶する。

「どうして…?」

僕は、驚いて、
レイじいさんの顔を見る。

「わかるさ。
それが、ワシの腕の見せ所」

僕たちは、
望み通りのものを手に入れた。

雲の上の青空マーケットが終わる。

そのあとは、パレードだ。

みんな、それぞれ、
自分たちが作った竹馬に乗って、
あちこちを歩き回る。

歌を歌ったり、
お喋りしたり。

そうして、
夕暮れ時に、
実りのパレードが終わる。

満月。

光る星たち。

庭の切り株に座って、
レイじいさんは、
月を見ながら
ファイの実をかじっている。

銀の時計と
交換した
大きな籐の椅子に座っている
ピーターと一緒に。

ピーターも
月を見上げている。

鼻歌が聞こえる。

レイじいさんが歌っている。

もしかしたら、
ピーターも歌っているのかもしれない。

僕は、
そっと
小さな袋を開ける。

流線形の雲の上から、
手を振った
羽根の帽子をかぶったお兄さんの
顔を思い出す。

僕の欲しかったもの。

僕は、
夜の間、
この、
鳥の羽根のついた
夢の中を歩ける靴を履くんだ。



To be continued. 

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