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ロシアのアイデンティティの危険な一面【スレッド要約 #2】
今回のスレッドは、アザマット・ジュニスバイさんのものです。カザフスタン出身で、米国カリフォルニア、ピッツァー・カレッジで社会学の教授をされているとのことです。
スレッドの原文がこちら↓
The undeniably broad domestic support for Russia’s brutal attack against Ukraine has baffled and horrified people around the world. How could so many ordinary Russian people fall for Kremlin’s crude and outlandish anti-Ukrainian propaganda? A long 🧵
— Azamat Junisbai 🇰🇿🇺🇦 (@azamatistan) November 10, 2022
やはり日本人にはなじみのない、ロシアとしてのアイデンティティ、その考え方の根底にあるものを説明してくださっているので共有させていただきました。
今回はまた要約というかほぼ全訳……それではどうぞ。
【以下翻訳】
ロシアの人々の、ウクライナ侵攻に対する大きな支持は否定できない。
これは多くの人を混乱させ恐れさせてきた。
なぜこんなにも多くのロシア市民が、クレムリンのぞんざいで奇異な反ウクライナプロパガンダに惑わされてしまうのか?
この問題を解明しようと私は必死だった。取りつかれていたと言っていいい。
私の結論には、間違いなく私自身の中央アジア(カザフスタン)人としての立ち位置が多くの情報をもたらしている。
端的に言えば、クレムリンのプロパガンダは、プーチンが覇権を取るずっと前からロシア人のアイデンティティの大事な一部であり続けた部分に訴えかけているのだ。
ロシア社会が20世紀の間に極端な大変貌を遂げたのは広く知られている。革命、世界大戦、ソビエト連邦の大頭と崩壊。目の回るような変化と途絶の度合いは誇張しすぎることは無い。
しかしこの騒動の最中でも、ある一つのロシアの価値観は変わらなかったのだ。
幾つもの歴史と政権種別を超えて残る、驚くほど安定・永続している現象がある。
それは、ロシア国民の、周りに良いものをもたらす大国ロシアとして、そして他より優れた文化と道徳をもたらすロシア人としての自認識だ。
深く内面化された、そうあること自体が慈悲深くさえあるという考え方は、長い間ロシア社会に浸透しそれを形作ってきた。
この考え方では、ロシアは無慈悲な植民地支配の罪を犯した古いヨーロッパの大国とは異なり、文化、繁栄、秩序を無私に分け隔てなくもたらすものなのである。
ロシアの『周囲のより地位の低い人々に恩恵を与える兄貴分』であるという視点は、どんな政治的信条だろうとそれを持つロシア人の誰にでも見られる。
この考え方では、ロシアの近隣諸国は永久にロシアに恩義があることになっている。常に関係は対等ではない。
「贈り物」という言葉が頻繁に使われる。それにはロシア語、文学、音楽、芸術が含まれている。そして科学、現代性そのものまでも。
当然、この世界観ではロシア人は他より立場が上で、ロシアの寛大さを受け取る側にいる人々はそれに感謝することが当たり前だ。
ロシアの中央アジア人に対する見方は、まるで「立ったまま小便をする方法を教えてやったのだ」とでも言うような、臆面もなく悪びれもしない人種差別である。
ウクライナ人に対するロシアの長年の見方はもっと複雑だが、同様に有害で見下すようなものだ。
気味の悪いことにプーチン以下のロシアの政治家によれば、ウクライナとカザフスタンに関しては、ロシアからの『贈り物』には、領土の一部や国家そのものすら含まれているのだ。
1991年に主権国家となったウクライナとカザフスタンの両方とも、プーチンには『人工的に作られた国家』だと説明されてきた。
この世界観の中心にあるのは、『以前はモスクワの支配下にあった国々が独自の機関を持つことができる』という事実に対する否定だ。
キーウ、アスタナ、またはトビリシがロシアとは異なる道を進もうとする試みは、他の大国に操作された結果だと思っている。
この世界観では、モスクワの支配から解放され自分自身で物事を決めようとするウクライナは精神に異常をきたしており、だまされやすく腐敗したウクライナの指導者たちが、ワシントンやロンドンなどに操られた結果なのだ。
だってそうでなければ、どうしてロシアの『影響下』から逃げたいなどと考えようか?
ロシアの大衆の想像力に及ぼすこの考え方の影響力は、誇張しすぎるなどということは出来ない。大いに宣伝されていた、『侵略するロシアの兵士が、「解放された」ウクライナ人によって花と共に迎えられる』という予測のことを考えてみてほしい。
ロシア国民の、主権国家に対する恐ろしい攻撃に対する支持を理解するためには、ロシアの悪びれもしない大国としての長い歴史と、長年持ち続けた自国と近隣諸国に対する視点を考慮に入れなければならない。
プーチンのプロパガンダは、ロシア人が奥底に持つ帝国主義的な考えに訴えかけるからとても有効なのだ。
実際、帝国主義は長い間ロシアの政治と社会の切り札であり続けている。
これはプーチンの戦争ではなく、ロシアの戦争だ。
プーチンのロシアではなく、ロシアのプーチンなのだ。
ロシアが自らを『慈悲深い帝国』だと、以前植民地だった国の主権を『修正が必要な「地政学的大惨事」』だと見なしている限り、誰も安全ではない。
世界は早いうちにこれに気が付くべきだ。
【翻訳以上】
本スレッドは、以前要約したカミルさんのスレッド↓と合わせて読まれると更に理解が深まると思います。よろしければご覧ください。
それではまた。
翻訳者、瀬道
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