卒業制作を振り返って
怒涛のような卒業制作過程を振り返り、反省点と学びになったことについて述べたいと思う。
①デザインのコンセプトを固める際に、最終ゴールが変わったことを曖昧にしてしまった。
卒業制作のテーマを最初に考えたときは、「コミュニティデザイン✖️社会的処方✖️茶の湯」を主眼にしており、茶の湯の持つ「コミュニケーション」をどう伝えるか、「社会的処方」であることをどう伝えるか、「コミュニケーションが生まれる場をどう作るか」がデザインのゴールだった。しかし、途中から、実際に野点の場所を作ることを止め、まずは「茶の湯をより体験したくなるような簡単で面白いイメージを作る」ことをゴールに設定し直したことで、デザインのコンセプトが大きく変わることをあまり意識できなかった。そのため、「簡単で面白いイメージ」としてレトロポップなデザインの方向性に向かっていったが、「社会的処方」というコンセプトに引っ張られ続け「薬局」というコンセプトが今回のデザインに必ずしも必要ではないことに気付かなかった。結果的に「レトロポップ✖️薬局」となったことで、「なぜ薬局なのか」を相手に理解してもらうことが難しくなったように感じる。今考え直すと、「簡単で面白い」のみをコンセプトにすると、より伝わりやすいパッケージデザインができたのではないかと思う。
逆に、「コミュニティデザイン✖️社会的処方✖️茶の湯」にこだわり続けるとしたら、卒業制作物は「カフェの空間デザイン」「癒しが生まれそうなデザイン」「会話が弾みそうな空間や仕掛け」になったのではないか、と思う。
この経験を通じて「デザインのコンセプトの要素はシンプルな方が伝わりやすい」というのが学びであった。
② デザイン思考について
まず、デザイン思考とはなんなのか、アイデアの生み出し方、コンセプトとテーマの違いは何か、などデザインを考える際の思考過程に非常に苦労した。佐藤卓さんや原研哉さんなど著名な方のこれまでのデザインやその過程の考え方などについて本を読み、どうしてそういった発想に至るのかを辿る作業が面白くもあり、自分の発想の貧困さに嫌になることもあった。
社会課題を嫌味なく、わかりやすく、面白く伝えることができるデザインというものに非常に魅力を感じており、自分もそのような発想ができたら、と頑張ったが、最初は突破口がなく落ち込んだ。しかし、後半に「アイデア大全」「考具」を読んだ時に、ランダムに全く違うものを掛け合わせるブレインストーミグのようなやり方や、マトリックスを使ってそのテーマの課題やイメージから似ているものを合わせたり、発想を逆転させるなどの手法を学ぶにつれ、発想が出やすくなったように思う。結果的に40ほどのアイデアが出た。今回は作成できなかったが、エモい茶会やエモい和菓子、茶の湯芸術祭など今後できると楽しいなと思う(レポート10~12ページ参照)。
アイデアの出し方については、覚書として自分のnoteにも掲載した。
アイデアの練習
アイデア出しにできそうなこと
③ 制作することの大事さ
コンセプトが途中からずれたこと、デザイン思考に難渋したことから、制作を開始するのが秋からと遅れてしまった。そのため、実際に卒業制作物を使って実践する機会がほとんどなかった。卒業展に向けて、実践の場を作っていきたい。
また、他の学生作品を見て、圧倒的な量があると、とても統一感のある魅力的なデザインになり、メッセージも伝わりやすいと感じた。
デザイン思考にもあるよう、まずは作ってみてプロトタイプを検証してまた作るということを今後はもっと頻繁にできるようにしたいと思う。つい、完璧を求めて、頭の中だけで膠着してしまい、暗礁に乗り上げてしまうので、もっと気軽に作ってみたいと思った。
追記:色々な大学の卒展を見に行って、同じグラフィックデザインといっても全くアプローチが違うなと思った。
今思うともっともっと発想を広げられたと思うし、具体的な商品化を目指さなくても良かったなと思う。
茶の湯の作法がハードルを上げているということも、じゃあ逆に独自ルールを作ってやってみるとか、世の中に茶道しかなくなるとか、もっと奇想天外なこともできたんじゃないかな、と思う。
もし、また卒業制作を作る、となったら、もっとぶっ飛んだ作品を作ってみたいと思う。
グラフィックデザインを学んで
京都芸術大学に入学するにあたり、大学院に行くか、大学に行くか迷ったが、考え方だけでなくデザインスキルも学びたかったため、学部に入学した。
正直、手を動かし続けないとスキルは身に付かず、忘れていくのだと実感したところだが、まずは触りだけでもスクーリング作品を通じて実践したことで、ソフトを使うことへのハードルがかなり低くなったと思う。
そして、まずは意識してインプットすることの重要性を学んだ。制作をするために、元々自分の中でそのことのストックがないとそもそも発想が出てこない。意識的に、面白いと思ったことがどうして面白いのか、どういう点が興味を引いたのかなどを潜在意識のままにするのではなく、意識的に言語化する必要があると感じた。先生方も、非常にデザインについて言語化することが素晴らしく、自分がモヤモヤしてうまく言えないことも言語化してくださることが驚きだった。
次に、スクーリングや、提出課題の成績を振り返る。今まで好成績だったものの特徴としては、まず一つは「レポート課題」に強い。考察などを論理的に文章でまとめることは、普段から仕事でしょっちゅうやっていることなので、きっとそこで底上げになっているからだろうと思う。そのほか良かった成績は「タイポグラフィ」「ピクトグラム」「モーショングラフィック」「観察発想トレーニング」だった。これらは、自分で作成している時にも思ったが、思いついた!と達成感を感じていた。対象を観察して、発見があったもの、日頃から身近なテーマの制作は進みやすく、技術ではなく、発想なんだなと改めて思う。逆に成績の悪かった「広告企画とコピー」「映像メディア」「パッケージデザイン」などは、自分でもあまりうまくアイデアが発想できなかった気がする。社会的課題を考えすぎて面白くなかったり、要素を詰め込みすぎてわかりにくかったり、コンセプトがしっかり定まらず、色々なテイストが混在してしまったりしたことが原因だったと思う。
最後に、グラフィックデザインを学んで良かったこととして、「デザイン思考」とは何なのかがようやく見えてきた気がすること、毎日の生活を観察することが面白く感じるようになったこと、読む本の幅が大きく広がったこと、手を動かしてアウトプットする楽しさを知ったこと、プロの仕事を垣間見れたこと、一緒に学ぶ人たちから大きな刺激を受けたことだったと思う。コロナ禍の入学だったことから、仲間作りがそこまでできなかったことはとても残念だったけれど、これから細くても繋がっていけたら嬉しい。
卒業後は、まずはコミュニティ活動の仲間と「文学フリマ」で本を制作し出店したいなと思っている。その際の、ブースのブランディングなどもできたらと思っている。
また、身近な人たちの活動をデザインの視点から応援したり、公募展などで腕を磨けたらなと思う。インプットの3年間だったので、しばらくは学んだことでアウトプットをしていけたらと思う。また、デザイン思考は対象を見つめて作品を作ることだが、自分のために自分が好きだと思うことを煮しめただけの作品も作っていきたいと思う。
最後に、コロナ禍の中、楽しい授業、そして手厚いフォローをしてくださった先生方に感謝します。
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