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卵は万能選手だ。卵そのもののおいしさはもちろんのこと、一緒に調理する食材のおいしさもしっかりと引き出してくれる。また、全体をまろやかにまとめる力もあり、まさにオールラウンダーといえる。

卵が冷蔵庫にないとなんだかそわそわして、落ち着かない。今朝、冷蔵庫を開けたら、卵のパックに残りは1つだけ。今日、出かけた帰りに買ってこなくちゃ。忘れないよう、スマホのメモ機能に「卵」と書き込んだ。

お気に入りは月に一度訪れる日曜市で買う平飼い卵。農家のNさんとは知り合いで、一度鶏たちが育っている環境を見せてもらったことがある。鶏舎の床にはふかふかの藁や草がたっぷりと敷き詰められていて、野菜屑を中心とした自然の餌が与えられる。

鶏たちの糞が藁に混ざると発酵が進み、巡り巡って、身体に良い成分が地面から立ち上る。結果、鶏たちは鶏舎の中で健やかに過ごせるのだという。天気の良い日には鶏舎の扉が開け放たれ、鶏たちは自由に草をはんだり、日光浴をしたり。こんな環境で育ったら、それはおいしい卵になるだろう。Nさんの卵の黄身は薄いレモンイエローで、殻の色もさまざま。それはそれは美しい。

卵を買ってきた日には、なにはともあれ卵かけご飯。S-Mサイズの小ぶりの卵は卵かけご飯にちょうど良く、醤油を少しだけ垂らして食べる。ねっとりとした濃厚な卵がご飯を包み込み、それだけで大層なご馳走になる。

落とし卵にも、よくお世話になっている。ようは、汁物に卵を落とすだけ。味噌汁やうどん、そば、ラーメンなんかに卵をポトンと1つ落とせば、ゆで卵をつくる手間もかからない。黄身が半熟に仕上がるよう調理するのはタイミング的に難しく、いつもしっかりと火が入ってしまうけれど、それもまたよし。

卵炒めは、卵と野菜を炒め合わせるだけ。まずは卵だけ多めの油でふんわりと炒めて一旦取り出し、続いて野菜を炒める。野菜はトマト、長芋、ピーマン、オクラとなんでもよく、わかめ、ひじきなどの海藻類もよく合う。変わり種では豆腐も美味。時間がないときや、料理するのが億劫に感じるときは、卵炒めになることが多い。

もっと手抜きをしたいときは、スクランブルエッグに限る。卵に豆乳と砂糖、塩を加え混ぜて、熱したフライパンでジュっと一気に仕上げる。たいてい、卵料理には塩を使うけれど、スクランブルエッグのときだけはケチャップが欠かせない。できたてをご飯にのせて、丼にするのも気に入っている。

卵焼き、目玉焼き、煮卵、オムレツ、かきたま汁、卵サンドと、卵の世界には果てがない。こんなにも人を安心させる存在が、つい羨ましくなる。「冷蔵庫に卵があれば安心」のように、「君さえいてくれたら安心だよ」、なんて誰かに思ってもらえたら幸せだろうな。

今夜は買ってきたばかりの卵で、やっぱり卵かけご飯。数日前に買っておいた長芋をすって、一緒にご飯にかけようか。それに、空芯菜と豚肉の炒め物、じゃがいもとわかめの味噌汁、高菜の浅漬け。

冷蔵庫には、まだたっぷりと卵がある。安心、安心。

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