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【短編】奇縁の愛
あなたは運命を信じますか?
2〜3分程度で読めるショートショートです。
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「ね、総務の瀬谷さんって知ってる?」
「名前は分かるけど顔が出てこないなぁ、背高めの人?」
「ううん、身長は低めかな。ロングヘアの人。今度結婚するんだって」
「へぇ、全然知らなかった。じゃあ寿退社?」
「さぁ、そこまでは分からないけど、噂ではね、相手の人すっごいイケメンなんだって」
「やるね〜、でも総務の女性陣って美人多いって聞くもんね。ほら、あのすっごい美人も総務じゃなかったっけ」
「あぁ、吉野さんね。それが実はさぁ、相手の男、もともと吉野さんの彼氏だったらしいんだよね」
「えー何それ、略奪ってこと?」
「略奪って言うよりは乗り換えたって感じみたいだよ。彼の方が瀬谷さんにベタ惚れなんだって」
「へぇ、瀬谷さんがどうってわけじゃないけど、吉野さんほどの美人の隣に並んだら誰だって見劣りすると思うけどね」
「だよねぇ。でもそれがさ、なんでも男の方がちょっとやばい人だったらしくってね。なんか前世の記憶があるとか言って、"ずっと彼女のことを探してた"とか"彼女のことは俺が守らなくちゃ"とか言ってるらしいんだよね」
「うわー何それ、完全にちょっとおかしい人じゃん。いくらそれ以外のスペックが高くてもねぇ」
「でもモデル級のイケメンで一流企業勤だよ。性格だって普通にしてれば優しい訳だし、自分のことそれだけ愛してくれるなら割と優良物件じゃない」
「でも別れる時とか拗れそ〜。私は無理だなぁ。てか前世ってどう言うことよ、まさかかつて二人はロミオとジュリエットで、運命に引き裂かれたーとか言わないよね」
「うーん、いいとこ突いてるよ。そこまで設定盛ってないけど、前世で恋人同士だった二人の仲に嫉妬した女が瀬谷さんを殺しちゃったんだって」
「いやいや、それ言われてよく瀬谷さん納得したね。普通そんなこと急に言い出す男と付き合う?」
「まぁ、それを受け入れられるってことは彼女もちょっと変わってるんじゃない。それこそお似合いってやつでしょ」
「それにしたってさぁ、限界あるよ。てゆうか前世がどうとか、ずっと探してたーとか適当なこと言っておいて、実はストーカーか何かでしたってオチじゃないよね。怖すぎるんだけど」
「それ私も思った。でもね、ここからがさらにホラーなんだけど、瀬谷さんの体、生まれつき痣とか傷があるらしいんだよね」
「え、何それ大丈夫なの?」
「うん、痛みとかはないらしいんだけど、体の至るところに傷跡があって、見たこともないのにピッタリ言い当てたんだってさ。それが前世からの傷で〜とかなんとか」
「いや、それこそ盗撮とか盗聴とかさ、疑うべきでしょ」
「普通はそうなんだけどさ、普段は髪の毛とかで隠れて自分でも分からないような傷とかまで知ってるとか、なんか流石にちょっと信じちゃわない?」
「そりゃそうだけどさー。てか前世の痣やら傷やらが残るとか怖すぎ。どれだけ怨念こもってるの」
「ほんとそれよね。女の嫉妬は怖いからなぁ、イケメンと付き合う女はいつもどっかしらで恨み買ってんのよ、きっと。向かうところ敵なしだった吉野さんだってそうなんじゃない」
「そんなものかなぁ。でも吉野さんくらい美人なら、そんな変なイケメンじゃなくっても良い男捕まえられそうだよね。それにそもそも本人すらも知らないような耳の後ろの切り傷、ピッタリ言い当てられた時点で吉野さんもドン引きでしょ」
「そうだよねー。彼、瀬谷さんと出会った瞬間から態度豹変って感じだったらしいし、そこまで狂気的だとさすがに百年の恋も冷めるわ。せいぜい前世とやらで嫉妬に狂った女にまた殺されないようにね、ってくらいだよね」
「確かに。そこまで因縁が深い人間関係、できるなら関わりたくないわ」
「私も。触らぬ神に祟りなしってね。あ、そう言えば今日のランチ、新しくできた大通り沿いのお店行かない? あそこのリゾットが絶品らしいんだよね〜」
「あー行ってみたいんだけど、今日のお昼はちょっと用事済ませたいんだよね」
「そうなの、残念。銀行とか?」
「ううん、総務部」
「ふうん、じゃあ明日にでもしよっか」
「うん、用事が終わればスッキリするし、明日なら美味しく食べられそう」
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