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月刊 撚り糸

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毎月7日にテーマに沿った小説を公開します。また同テーマにて創作を募集し、一緒に楽しめたらと思っています。3月のテーマは『その角を曲がったところに』です。
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記事一覧

そこにつくる想い|ショートショート #月刊撚り糸

 じわりじわり、とその感情はわたしを浸食した。だれもなにも悪くない。ただタイミングが悪か…

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お先にどうぞ  #月刊撚り糸 第804話・4.7

「お先にどうぞ」「ああ、これはどうも」  今日も私は、先に急ごうという人を先に譲った。私…

強く甘く #月刊撚り糸

スミレの花束を抱えて、春の風を受けている。陽の光は細かい粒となり、柔らかな風に揉まれて笑…

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晴天にグレー #月刊撚り糸

 今すぐに桜の花を見に行かなければ死んでしまうような気がしたことはありますか、と彼女に聞…

七屋 糸
2年前
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#月刊撚り糸 3月のテーマ『その角を曲がったところに』公開しました。

毎月7日にテーマに沿った小説を公開します。また同テーマにて創作を募集し、一緒に楽しめたら…

七屋 糸
2年前
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2人の道 #月刊撚り糸 【短編小説】2300文字

仕事用に使っているエルベシャプリエのカバンは淡いラベンダー色だ。 路肩の雪は解けて、コン…

イツキ 彩
2年前
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黒い真珠 #月刊撚り糸

青い空がどこまでも続いている。太陽はいつまでも降り注いでいる。椰子の木はどこまでも連なっている。ぽっかりとインド洋に浮かぶこの島には春夏秋冬なんてない。あるのは乾季と雨季くらいで、かと言って乾季から雨季になって何が変わるという訳でもない。天がしょっちゅうバケツをひっくり返したところで太陽はまた空を割って降り注ぐのだし、椰子の木々は変わらず連なり葉を耀かせている。気温だって一年通して概ね28度の辺りを浮遊している。 だからかーー。 この南国の人々は生き急がない。歩いても歩いて

その角を曲がったところに #月刊撚り糸 第773話・3.7

「その角を曲がったところに」ここで電話が切れた。「その角を曲がったところにって何なんだ?…

角を曲がったところにあったもの|ショートショート #月刊撚り糸

「ね。別れよっか」  笑顔でそう告げられたとき、俺はとても間抜けな顔をしたと思う。何を言…

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#月刊撚り糸 2月のテーマ『窓は開けたままにしておいて』公開しました。

毎月7日にテーマに沿った小説を公開します。また同テーマにて創作を募集し、一緒に楽しめたら…

七屋 糸
2年前
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裏庭に永久に #月刊撚り糸おまけ

 彼女から告白されないよう細心の注意を払ってきたのに、その瞬間は冷然と僕を襲った。  授…

七屋 糸
2年前
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#月刊撚り糸 2人の境目【短編小説】1900文字

「パパ、おやすみなさい。ママ、おやすみなさい。」 階下からお姉ちゃんのいつもの挨拶が聞こ…

イツキ 彩
2年前
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[小説] 消えた馬刺し #月刊撚り糸

「ほんと、やってらんないよな」  そう言いながら真田は喫茶店のソファに自分の背中を叩きつ…

きしもと
2年前
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#月刊撚糸  窓は開けたままにしておいて   僕の小鳥

「お母さん、絶対に閉めてしまわないでね」 「うん」 息子は必ずこう言って私に念を押してから登校する。 私はにっこりと笑ってそれを見送る。 それがもうずいぶん長い間続いている。 息子を見送り部屋に戻ると、必ず大きなため息をつくのが毎朝必ずの恒例行事になっている。 息子が夢中になって大切にしていたカナリアがほんの少し開いていた窓の隙間から逃げ出してしまったのはもう何か月も前の事だ。 鳥かごの中をきれいにするために家の中に放していた時、カナリアは逃げてしまった。 息子は