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メタバースの地政学(メモ)

ビッグテックが地政学上のアクターと喝破したのは国際政治学者イアン・ブレマーだった。その流れでイアン・ブレマー率いるユーラシア・グループは、メタバースの地政学を公開している。
それ以外に、ここで以前紹介したEUなどいくつかの組織がメタバースの地政学について資料を公開しているので簡単にご紹介したい。

●あまりにも短い要約

SNSプラットフォームがそうであったように、メタバースも地政学上のアクターとなる可能性が高い。SNSの問題がほとんど解決されないままであることから、メタバースでは同様の問題がより深刻な形で現れる
アメリカと中国がメタバースの覇権を争うことになり、それは中央銀行デジタル通貨(CBDC)の覇権争いなどさまざまな領域と関連してくる。
アメリカのメタバースは民間企業主体で推進されるため、よい意味でも悪い意味でも現在のSNS同様治安が悪化し、誹謗中傷、犯罪、極右、陰謀論などが横行する空間になる可能性がある。
中国でも表向き民間企業主体で進むが、中国政府はメタバース産業委員会を通じてコントロールする他、ブロックチェーンを低コストで構築できるブロックチェーン・サービス・ネットワーク(BSN)を提供する。BSNはイーサリアムなど既存のブロックチェーンを利用することもできるが、当局が監視できる仕組みになっている。
ロシアとインドの動きは現在のところ不明だが、なにか仕掛けてくる可能性がある。EUは法規制大国としてメタバースに向き合うことになりそう。

●主要な資料

・イアン・ブレマーとユーラシア・グループのもの

The Geopolitics of the Metaverse(ユーラシア・グループ、2021年12月、https://www.eurasiagroup.net/live-post/the-geopolitics-of-the-metaverse)
The Technopolar Moment How Digital Powers Will Reshape the Global Order(Foreign Affairs、2021年11月/12月号、https://www.foreignaffairs.com/articles/world/2021-10-19/ian-bremmer-big-tech-global-order)
TOP RISKS 2022(ユーラシア・グループ、https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Media/files/EurasiaGroup_TopRisks2022_Japanese.pdf)

・EUやヨーロッパからのもの

Metaverse – virtual world, real challenges(EU Analysis and Research Team(ART)、2022年3月9日、https://www.consilium.europa.eu/media/54987/metaverse-paper-9-march-2022.pdf
Metaverse Opportunities, risks and policy implications(European Parliamentary Research Service(EPRS)、2022年6月24日、https://www.europarl.europa.eu/thinktank/en/document/EPRS_BRI(2022)733557)
上記ふたつについてはこのnoteで紹介記事https://note.com/ichi_twnovel/n/n2fe82b6b2c55を書いた。

The Political Economy of the Metaverse(フランス国際関係研究所(IFRI)、2022年6月27日、https://www.ifri.org/en/publications/briefings-de-lifri/political-economy-metaverse)

・世界経済フォーラム

Who will govern the metaverse?( 2022年5月21日、世界経済フォーラム、https://www.weforum.org/agenda/2022/05/metaverse-governance/)
なぜか、中国のプロパガンダメディアCGTNの記事https://news.cgtn.com/news/2022-05-26/Who-will-govern-the-metaverse--1all7j0Alkk/index.html)を転載している。


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