ウクライナ メディアのプロパガンダ
ウクライナ情勢の緊迫化にともない(もしくは軍事的手段の前段階、代替として)、プロパガンダの発信が増加している。DFRLabなどのレポートから気になる部分をピックアップしてご紹介したい。元となった主要なレポートは末尾を参照。
プロパガンダ発信に用いられるメディアは多数あり、そこで語られる内容はある程度重複している。もちろん、連動してプロキシやボットなども活動している。
*ウクライナ関連記事
ロシアのプロキシの動き
ロシアが繰り広げるツイッターによる世論操作 Mythos Labsの「Investigating Twitter Disinformation in Ukraine」シリーズ
発見された雑なボット活動
メディアのプロパガンダ
最近のSNSの動き
ウクライナ情勢を受けてロシアのプロキシも増強
●ロシア系プロパガンダメディア
●語られている内容の例
・ウクライナには周辺地域に攻撃を行う意図がある
・ウクライナのNATO加盟は実現しない
・プーチンはウクライナ侵略の意図はない
・ウクライナに送られている兵器は旧世代の不要品であり、事故の危険がある
・欧米メディアへの批判
・アメリカはヨーロッパでの影響力とNATOを維持、拡大するためにウクライナを利用し、ロシアを悪役に仕立てている
・中国がロシアを支持していることを過剰に強調
●ロシアのシンパ
ロシアを支持するいわばシンパの人々もいる。たとえば下記のような人々。
・親ロシア派ウクライナ議会議員Valeriy Hnatenko
「ワシントンは旧式の武器をキエフに送り、ウクライナはすでにアメリカのミサイルよりも強力な武器を保有している」という主張がRia Novosti, Lenta, Ukraina.ruなどに掲載された。
・親ロシア派コメンテーター、ウクライナ保安局元職員Vladimir Mulik
イギリスの対戦車システムが2022年に期限切れになると語り、Sputnik, Ria Novosti、Rambler、 Lentaなどに掲載された。
・ロシア国立核リスク削減センター(Russia’s National Center for Nuclear Risk Reduction)所長Sergei Ryzhkov
ロシア国防省が断ったラトビア軍代表の欧州安全保障協力機構(OSCE)の条約に基づくブリャンスクとスモレンスクのロシア軍管区の査察を行われたとSergei Ryzhkovが語り、それがRIA Novosti、Baltnews Latvia、Regnumなどのメディアに掲載された。
・グルジアのFacebookページPoliticano
Politicanoは親ロシアであり、「Yevgeny Primakov Public Center」と親ロシアの「News Front Georgia」に関係しており、Facebook上でウクライナとNATOを標的とした投稿を拡散した。グルジアのDisinformation対策研究機関Media Development Foundationによると、Politicanoは12月1日から1月22日の間に少なくとも8つの投稿を拡散した。その内容は、ウクライナが破綻国家であり、ナチスの支持者であるというクレムリンの長年のデマや、ウクライナに比べてロシアの軍事力が優れていることを強調していた。また、スポンサー記事では、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領を「ピエロ」と呼んだ。
・親ロシアの政党Conservative Movementとその傘下のメディアAlt-Info
Conservative Movementとその傘下のメディアAlt-Infoは、反NATO、反ウクライナ、親ロシアのシナリオを拡散している。
●反NATO
NATOに反対する人々もいる(親ロシアとは限らない)。ロシアの反NATO主張と合うので利用される。
・クロアチア大統領Zoran Milanović
1月25日の記者会見で、ウクライナをNATOに加盟させるべきではないとし、ウクライナとロシアが軍事衝突した場合、「クロアチアはいかなる軍隊も派遣しない」と発言し「ロシアの安全保障上の利益を考慮すべきだ」と付け加えました。
この発言は、Tsargrad、Gazeta.ru、MK.RU、Izvestiya、Russkaya Vesna、Komsomolyskaya Pravdaなどに掲載された。
・スペインの欧州議会議員Manuel Pineda
RTのインタビューで、「これはアメリカとNATOによる挑発であり、彼らは発展途上国への影響力を失っているため、世界秩序を変えたいと考えている」と語った。
・フランス国民議会(French National Assembly)議員Michel Larive
RTは、フランス国民議会議員のMichel Larive氏が、フランスはNATOから離脱すべきであり、冷戦後に同盟は終了すべきだったと発言したことも報じた。
・フランス・インテリジェンス・リサーチ・センター(French Intelligence Research Center)の創設者兼ディレクターÉric Denécé
RIA Novostiは、フランスのメディアAtlanticoに掲載された、同氏の「フランスがNATOから絶対に離脱すべきだ」という言葉を紹介した。
・ハンガリー国防相Tibor Benke
同氏の「ハンガリーの安全には差し迫った脅威はないのでNATO軍の追加は必要ない」という発言をRusskaya Vesnaは、「ハンガリーがNATOを強く押し返した」という挑発的な見出しで紹介した。
また、PolitEkspertやNews Frontは、Tibor Benkeがハンガリーは当初ウクライナのNATO加盟を支持していたが、その後意見を変えたと述べたことを強調して取り上げた。
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