ウクライナ 発見された雑なボット活動

ロシアのIRAは世界的に有名なトロールファームで、アメリカ大統領選でその名を世界に轟かせた。とはいうもののロシアのネット世論操作は洗練された高度な手法を駆使するというよりは、戦略的にプリミティブな方法を使いこなしている印象がある。2022年1月28日に公開されたMIBUROのMarkian Kuzmowycz「Are Pro-Russian Bot Swarms Making A Comeback?」(https://miburo.substack.com/p/are-pro-russian-bot-swarms-making)からもそれがうかがえる。

2022年1月26日、ウクライナのキエフにあるアメリカ大使館から職員が避難したことを伝えたニュースアカウントのツイートに不自然なリプライが押し寄せた。調査した結果、わずか28人のアカウントが、2,017件以上の同じ文字列を含むツイートを投稿していたことがわかった。これらには次の共通点があった。また、ボットはウクライナ語の「避難」、「大使館」、「ウクライナ」などに反応するようになっていたようだ。

・アカウントの表示名がロシア語
・すべてのアカウントが2022年1月17日以降に作成されていた
・AI=GANによって生成されたプロフィール写真
・アカウント名とプロフィール写真の性別が一致しないものがあった
・GANによる子供の写真が多く使われていた
・すべてのツイートは,Twitter Web Clientから送信されていた
・ほぼすべてのアカウントが、ロシア国内の場所を記載していた

プロフィールは雑に作られており、たとえばあるアカウントは、ニューヨークの法律事務所に勤務とプロフィールに書きながら、場所はモスクワの郊外にしていた。何百回もの異なるアカウントが同じ誤字のリプライを返していたこともある。

ただし、このレポートではロシアによるものと断定するには証拠が足りないとしている。ただし、調査で得られた内容と現在の情勢を考えると、その可能性は高いとしている。


なお、連動してプロキシやボットなども活動している。それらについては下記を参照。
*ウクライナ関連記事
ロシアが繰り広げるツイッターによる世論操作 Mythos Labsの「Investigating Twitter Disinformation in Ukraine」シリーズ
発見された雑なボット活動
メディアのプロパガンダ
ロシアのプロキシの動き
最近のSNSの動き
ウクライナ情勢を受けてロシアのプロキシも増強

こうしたネット世論操作やフェイクニュースの入門として下記がおすすめです。
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