ウクライナ ロシアが繰り広げるツイッターによる世論操作 Mythos Labsの「Investigating Twitter Disinformation in Ukraine」シリーズ
なぜか日本ではまったく紹介されていないようなのでご紹介したい。Mythos Labs(https://mythoslabs.org)はコメディ(誤植ではない)とAIを使ってテロや影響工作と戦う企業である。私も知らなかったのだが、この分野では世界的に有名なDFRLabのレポートで紹介されていたことで知った(https://twitter.com/DFRLab/status/1488540118717718528)。残念ながらビッグデータ解析の元となるデータは開示されていないで、解析の妥当性は確認できなかった。しかし、分析の結果明らかになった中心となるアカウントは、確かに親ロシアあるいは反NATO、反米の言説を発信していた。
「Investigating Twitter Disinformation in Ukraine」シリーズ(https://mythoslabs.org/2022/01/04/investigating-twitter-disinformation-in-ukraine/)はツイッター上でのロシアのウクライナに関するネット世論操作を分析したシリーズで、現在2021年12月9日と2022年1月18日の2つレポートが公開されている。もしかして毎月公開するつもりなのだろうか?
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ロシアが繰り広げるツイッターによる世論操作 Mythos Labsの「Investigating Twitter Disinformation in Ukraine」シリーズ
発見された雑なボット活動
メディアのプロパガンダ
ロシアのプロキシの動き
最近のSNSの動き
ウクライナ情勢を受けてロシアのプロキシも増強
●概要
2つのレポートの結論はおおまか下記である。
1.ツイッター上のアカウントが協調して、親ロシア、反米、反NATOの偽情報や悪意のある情報を拡散していた。
•アメリカはウクライナにドンバスを攻撃するよう圧力をかけている。アメリカはウクライナに混乱を巻き起こし、EUを戦争に引きずり込もうとしている。
•ウクライナはドンバスやクリミアで軍事活動を行い、ロシアを戦争に巻き込もうとしている。
•ウクライナ軍はドンバスの民間人に対して戦争犯罪を犯している。
•NATOの拡大はロシアの脅威であり、NATOへの加盟はウクライナの過ちである。
拡散していたアカウントは12月のレポート(11月時点)では58,1月のレポート(12月から1月初旬)では697と大幅に増加した。
なお、12月のレポートではウクライナを責めるものが多かったが、1月のレポートではアメリカを責めるツイートが多くなったことがわかった。また、トルコやインドなど非欧米諸国に向けた情報も発信するようになった。
2.親ロシアの偽情報/プロパガンダを拡散するアカウントがウクライナについてツイートした回数は、2021年1月から11月までは1日16回だったのに対し、11月は平均して1日213=3,334%増加した。12月と1月初旬にさらに375%増加した。
3.ロシアは大幅に軍を増派する2週間前にプロパガンダを増加させていた。2021年4月上旬と11月上旬の2回、ウクライナとの国境沿いにロシア軍が大幅に増派される2週間前に、親ロシアのデマやプロパガンダを流すアカウントによるウクライナ関連のツイート量が急増した。
4.これまで他のトピックでロシア寄りの偽情報やプロパガンダをツイートしていたアカウントが、ウクライナに関するツイートを主に行うようになり、ウクライナが重要課題となったことがわかる。
5.12月のレポートでは親ロシア派の情報・プロパガンダを 流すアカウントは、ロシア語圏と欧米圏の両方 の視聴者に影響を与えようとしていた。ツイートする言語は、ロシア語に次いで、英語、フランス語(NATO の2つの公用語)の順に多かった。英語やフランス語はEUやNATO加盟国を含む西側諸国の世論に影響を与えようとしていることを示 唆している。
1月のレポートでは英語ツイートが半分以上57%に増加し、英語圏の読者を主要ターゲットにしたことがわかる。
5.12月のレポートでは、親ロシアの偽情報/プロパガンダを拡散するアカウントは、ロシア国営メディア@rianru、報道機関を装ったアカウント@DonbassSegodnya、偽情報を発信する人気のあるアカウント@anatoliisharii、@hnv_NaTa、@AntonGolovnev91、@RadioStydobaなどのツイートを拡散していた。
1月のレポートでは傾向が変わり、親ロシアの公式あるいは評価や信頼を得ているアカウントのツイートを拡散するようになった。たとえば、スノーデン事件で知られるジャーナリスト、Glenn Greenwald(@ggreenwald)のツイートの中からロシアにとって都合のよいツイートを拡散している。オーストラリアのジャーナリストJohn Pilger(@johnpilger)、アメリカ下院議員Matt Gaetz(@mattgaetz)、極右ジャーナリストTruckistan Amb. Poso(@JackPosobiec)などだ。
もちろん、ツイッター以外でもロシアのネット世論操作は過激に活動中なわけですが、それはまた別途。
こうしたネット世論操作やフェイクニュースの入門として下記がおすすめです。
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