民主主義の現在 EUの民主主義行動計画 European Democracy Action Plan

COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS On the European democracy action plan(EUROPEAN COMMISSION、2020年3月12日)
https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/12506-European-Democracy-Action-Plan

European Democracy Action PlanはEUで民主主義を建て直すための計画である。公開されているロードマップには克服しなければならない問題として下記があげられている
 ・Disinformation いわゆるフェイクニュースなどであり、コロナのパンデミックによってその影響はさらに広がった。
 ・Media freedom and media pluralism メディアの自由と多様性の維持。ジャーナリズムへの脅威の増加、デジタルメディアとの競合、そしてコロナによる影響でより状況は悪化した。
 ・Election integrity ネットの発達により、有権者へ直接アクセスすることが容易になり、誤った誘導を行う試みが増加した。
 ・Civil society 市民社会もこれらの脅威に直面している。
 ・EU外からの干渉 海外からのフェイクニュースなどの干渉の脅威が増加した。

2020年3月12日版に委員会から提出された資料によれば、計画の概要は以下の通りとなる。報告書の冒頭で、民主主義、法の支配、基本的人権をEUの基盤と位置づけ、民主主義を中心的価値としている。そして民主主義は当然のものではなく、育成、保護する必要があるとして、近年、ロードマップに書いた問題いよって脅威にさらされている。
そしてその危機の背景としてデジタル化、情報化をあげている。フェイクニュース、マイクロターゲッティングなどによるネット世論操作の脅威に直面している。その対策として大きく3つをあげている。詳しく内容を見ると、ネット世論操作への対策と、メディアやジャーナリズムへの支援に力点が置かれていた。

 ・PROTECTING ELECTION INTEGRITY AND PROMOTING DEMOCRATIC PARTICIPATION
  選挙の完全性と政治参加を促進
する。特にSNSによる悪影響を指摘しており、さらに下記の4項目にブレイクダウンされている。
  Transparency of political advertising and communication SNSでは広告とそうでないものの区別がつきにくい。利用者にそれが広告であり、出稿している主体がわかるようにしておかねばならない。またマイクロターゲッティングを用いた操作なども規制すべきである。そのための法案を2021年に提出する。
  Clearer rules on the financing of European political parties 政党への資金提供のより一層の透明化(特にEU外からの)。2021年に既存法の改正案を提出する。
  Strengthened cooperation in the EU to ensure free and fair elections EU内外との協力関係の強化、既存のEU組織間での協業。選挙のための新しい仕組みの構築など。
  Promoting democratic engagement and active participation beyond elections 政治への参画を促進、教育するための資金の提供。ヘイトスピーチへの法の厳格化。

 ・STRENGTHENING MEDIA FREEDOM AND MEDIA PLURALISM
  メディアの自由と多様性
が損なわれている。フェイクニュースなどのネット世論操作や組織犯罪などによるジャーナリズムへの圧力が増しており、コロナによって事態はより悪化した。このために行うべきことは次の4つ。
  Safety of journalists EU加盟国の中でもジャーナリストへのオンラインおよびオフラインでの攻撃が増加している。中でも女性ジャーナリストは狙われやすい。こうした攻撃の増加による自主検閲につながっている。2021年に女性ジャーナリストが直面しているオンラインの脅威への対処勧告を実行。European News Media Forumが中心となって関係機関と調整し、勧告を実行する。ジャーナリストへの資金提供、サイバーセキュリティトレーニング提供、法的支援の実施。
  Fighting abusive use of strategic lawsuits against public participation いわゆるスラップ訴訟(Strategic lawsuits against public participation=SLAPPs)への対処。EU内でスラップ訴訟が増えている。スラップ訴訟では訴える側と訴えられる側の力の差が大きく、深刻な悪影響をもたらす。2021年の早い内に専門家グループを組織し、後半にはスラップ訴訟からジャーナリストと市民社会を守るためのイニシアチブを立ち上げる。
  Closer cooperation to develop and implement professional standards メディアの独立性や専門性を支援するために基準の策定、トレーニング、ベストプラクティスの共有などを行う。EU間での関係組織との協力やパートナーシップを促進するためのイニシアチブを作る。
  Additional measures to support media pluralism その他に、メディアの所有者の透明性の向上のための監視強化。スポンサーから圧力を減少させるための政府広告の出稿。メディアの多様性や自由に関する調査(特にオンライン)などを行う。

 ・COUNTERING DISINFORMATION
  ネット世論操作対策。misinformation、disinformation、information influence operation、foreign interference in the information spaceの4つの対処を想定している。
  Improving EU and Member State capacity to counter disinformation 中国とロシアを名指しし、コロナ禍の中でさらにネット世論操作が増加したと指摘。ハイブリッド脅威としている。NATOやG7などと協力。攻撃者のコストを増加させる仕組みなどのツールキットを開発し、関係機関を共有する。攻撃者の証拠を確保するための仕組みの構築。攻撃を検知するための協力関係、定期的調査を行う。
  More obligations and accountability for online platforms SNS企業に義務を課し、責任を負わせる。ここは長く書かれている。SNSでのネット世論操作とSNS企業の対処の監視、多様な視点を含む信頼できる情報がネット上に充分あるかの確認、ネット世論操作の金銭的インセンティブ減少。SNS企業とファクトチェック組織の間で透明性があり、オープンな手続きの確立、人工的拡散への対処、ネット世論操作研究のためのデータ公開を進める。
  Empowering citizens to make informed decisions 市民へのメディア・リテラシーとクリティカル・シンキングの教育。ジャーナリストなど関係機関と連携してのプロジェクトの推進。

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