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たに りり「稲作SDGsをお米のプロに学ぶ 食卓と里山をつなぐ36人の「マーケティング力」」

・本書は、料理のわかるごはんソムリエ、食卓視点でお米を愛する農政ジャーナリストとして活動する著者が、販売、生産などさまざまな立場のコメ業界からインタビューをし、私たちが知らないお米の状況について伝えた1冊。

・コロナ禍の影響で、炊飯ジャーの業界出荷数はこのところずっと下降傾向だった。また、お米の消費量は1960年代をピークに、今や半分にまで減っている。
・加えて人口減少や食の多様化などを考えると、大きな流れとしての下降傾向は続くとするなら、炊飯器メーカーとしても、未来に希望をなかなか持ちにくいのではないか、という著者の疑問があったが、象印マホービン株式会社の経営企画部マネージャーの後藤譲氏(以下、後藤氏)は、「下降傾向の中でも、ご飯のおいしさに気付いていない人はまだけっこういるのかなと思っている」と語る。
・後藤氏は、象印食堂を企画した。この企画はもともと、炊飯ジャーのプロモーションで、東京や大阪など地域限定で、期間限定の象印食堂を何度か出店し、そのときに想像もしなかったほどお客さんが集まったとのこと。これを分析すると、お客さんが求めていることの中で、『おいしいご飯を食べたい』という要素が非常に大きいということがわかった。
・この炊飯器のプロモーションとして始まった新しい事業をきっかけに、象印が炊飯器というモノを売る企業から、人々が求める「ご飯のおいしさ」を提供する企業へと変化してきたことがうかがえる。
※象印の考える「ご飯のおいしさ」とは、象印、パナソニックなど販売の現場の取り組みの詳細については本書をお読みください。

・南魚沼にて、45年以上にわたり、コシヒカリを作り続けているベテラン生産者である井口登氏(以下、井口氏)は、中学生のとき、学校でアメリカの粗放農業(耕地に労働力や資本をあまりかけずに自然の力を生かして作物を作る農業)を学び、それがきっかけで1977年(昭和52年)のときにアメリカで一年間の農業研修を受けた。
・帰国後、イネの苗の販売から手をつけ、父親が苦労していた経営を立て直そうとした。業績がぐんぐん伸びる前に、農協の米価大会騒動や、食管法(食料が不足している時代に、主食のコメなどを国民に安定供給するため作られた法律)の挑戦などおこない、現在も「どんなものなら売れるのか」と改善し続ける姿勢のまま、生産に取り組んでいる。
※井口氏、新潟県五泉市、群馬県沼田市など生産者の取り組みについての詳細は本書をお読みください。

・本書では、「炊飯器メーカの新たな挑戦」「輸出で小さなてっぺんを狙う男」といった販売の現場の取り組み、「トップセールスマンから生産者に変身」「新品種の発見からブランドを作り上げた生産者」といった生産の取り組み、「農薬の販売者・農林水産省の視点」「学校給食導入など教育の取り組み」「除草ロボット(アイガモロボット)から目指す有機米ビジネス」など、各分野で活躍するコメ業界の取り組みが紹介され、お米の厳しい状況を知り、お米の価値に気づかされる内容が収録されている。

お米の有り難さを痛感すると同時に、著者がこのインタビューをまとめるのにどれだけ苦労されたかが、ひしひしと伝わってきました。

日本人のエネルギーの源とされるお米についてとても大事なことが書かれていますので、ご興味ある方はぜひご一読くださいませ。

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