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自分と世界の関わりが見えてくるー『知の編集術』レビュー

「編集」という言葉につい反応してしまう、そんな人におすすめの本を紹介したいと思う。それは、「編集」に対する考え方が大きく変わるような一冊、松岡正剛さんの「知の編集術」。

そもそも、編集とは?

「編集」という言葉から思い浮かべるものは、なんだろう。

Webメディアと日々向き合っているわたしは、編集と聞くと本や雑誌などの「文章の編集」がまず浮かぶ。自ら文章を書く人が沢山いるnoteユーザーの多くも、そうじゃないかと思う。

でも、この本で扱われている「編集」は、文章や映像の編集に限ったことじゃないのだ。

例えば、法律や歴史について学ぶとき、海外旅行の計画を立てるとき、誰かと会話をしているとき……。わたし達は色々な場面で、無意識に情報を「知」として編集している。

著者の松岡さんは、編集についてこのように書いている。

「人間が言葉や図形や動作をおぼえ、それらをつかって意味を組み立て、人々とコミュニケーションをすること、そのすべてに編集方法がいろいろ生きているとみなします。」(『知の編集術 発想・思考を生み出す技法』より)

要は、編集をとても広くとらえているのだ。

松岡さんの提唱する「編集」をもってすれば、法律やスポーツのルール、テレビのニュースといった情報はすべて編集されているし、何気ない会話や文化そのものも編集の対象となる。

相手の「しぐさ」という情報から会話を進めていくのも、編集のひとつ。気づいていないだけで、編集はわたし達の身近にあふれている。

世の中にありふれながれも、普段見過ごされている編集的な視点。本書を読み進めていくと、徐々にそれが明らかになっていく。

楽しみながら、編集的な発想を鍛える

本書には編集術の実習として、【編集稽古】というエクササイズがところどころで用意されている。

例えば、「チャンバラ映画風の4枚の静止画を並び替えてストーリー(文脈)をつくる」という編集稽古。この項目では、映画でも編集が非常に大切であること、そしてその編集が「要約」と「連想」でできていることを知ることができる。

ほかにも、句読点を打つ位置を考えたり、文化的な「しぐさ」の意味を考えたりと簡単なものから、広告の図柄からコピー(キャッチフレーズ)を考えるという難易度の高い稽古まである。

このように、広い意味での「編集」を知りながら、かつ実践的に編集的な発想を鍛えられるのが本書の特徴だ。

「編集者」以外にも知ってほしい編集術

松岡さんは、編集術についてこう言っている。

編集術とは、われわれがどのように世界とかかわるかという「方法」に目を凝らそうという、いわば「気がつかなかった方法を気づくための方法」というものである。(『知の編集術 発想・思考を生み出す技法』より)

編集のノウハウ本とは異なり、「編集的な世界観」を知ることができる本書。すでに「編集者」として仕事をしている人はもちろん、これから「編集」について考えていきたい人にも、ぜひおすすめしたい。

「編集」という見方を通して、自分と世の中のかかわり方が少しずつ見えてくる、そんな一冊となっている。






編集:円さん


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