2022年2月の記事一覧
1985年のクリスマス
「臨時のバイト代が入ったから、ちょっと贅沢しようよ?」
ペラッとした茶封筒を握りしめて彼が言った。ニット帽の下からぴょこんと飛び出したくせ毛が愛しい。バイト代が入ったんじゃない、わざわざバイトをしてくれたんだ。
雪の壁で狭くなった歩道を二人で並んで歩くと、すべての音が雪に吸収され、彼の発する声だけがポッと灯って私に届く気がする。付き合い始めて、最初のクリスマスを迎えるころだった。
貧乏学生だ
あなたが負けるんじゃない
毎週観ているドラマ『ミステリと言う勿れ』
昨日の放送回を観て、看取ってきた方々のことを思い出し、自分の中で考えることがあった。
主人公の久能整(ととのう)が入院し、病室で隣のベッドにいる元刑事の牛田と話すシーンがある。
(まだ観ていない方へ、以下、シーンの台詞が出てきます)
自分はもうすぐ死ぬんだと「刑事としても負け、長い闘病生活の末、病気にも負ける」と話す牛田に、整は
あなたが負けるんじゃ