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藤井聡太二冠のおかげで、父との時間が増えた話。

先日棋聖戦最終局を終え、史上最年少で初のタイトル防衛を果たした藤井聡太棋聖(王位)。
同時に『タイトル3期』の条件を満たし、10代にして九段昇格。
これまた最年少記録を更新する怒涛の活躍ぶりだ。

今回はその若い天才棋士に多少なり影響を受け、父との関係に変化があった話をしたいと思う。


私は小さい頃から負けず嫌いで、
家族とゲームをする時なんかでも泣いたりする事が多かった。

一人っ子で育った為、対戦相手は主に両親か祖父母。

人生ゲームやドンジャラ等のボードゲームや、トランプ・UNO等のカードゲームは日常的に遊んでいた。


5歳の頃6つ年上の従兄弟から、
私の人生に大きな影響を与える事となる『テレビゲーム』というおもちゃを教えてもらった事がきっかけで、週末父と一緒にゲームをして遊ぶ様に。

私が生まれる前からファミリーコンピュータを持っていた父が、将棋のソフトを紹介してくれた。

元々将棋自体も好きだった父が若い時に購入した、
『森田将棋』の対戦モードで、時間無制限ののんびり対局。

知識がミリ単位も無い私は当然父に勝てるわけもなく。
「勝てないよ~!!」と毎度泣き叫んでいた記憶が今も薄っすら残っている。


負けず嫌いだった私は負けたら基本興味が無くなる事が多く、
数回の対局の後、やりたくないと嫌厭するようになった。

一度も勝てなかった為、ちびっ子なりのちびプライドが傷付き、
将棋自体も嫌いになっていった。



それから将棋の話は家庭内で一切出ないまま、数十年が経ち、2017年。

新星の如く現れた中学生プロ棋士、
藤井聡太四段(当時)に世間が注目する中、
もれなく我が家でも話題に上ることが増えてきた。

初めてまともにプロ棋士の対局をテレビで見て、
その思考力と解析力、ずば抜けた発想にまた「理解出来ない…!」と思いながらも、
棋士達の醸し出す独特の世界観に私もハマりつつあった。


同時期に父が定年退職してからは、2人で将棋の話題で盛り上がる事が多くなった。

それからはAbemaや日曜朝の某キー局杯の対局を見るのが日課になり、
将棋自体理解できなかった私が、父とスムーズに将棋の会話が出来る程度には知識がランクアップした。


定年まで父が働きに出ていた間は、
どちらかと言うと母との時間の方が多く、父と話す事自体少なかった。

2人だけで盛り上がったのは思い出す限り、多分生まれて初めてで、
私の中では“ちょっとした親孝行”が出来ているのかなと嬉しくなった。

家に居る時間が増えたのも重なって、
父の笑顔を見られる様になったことは近年私の中で大きな幸せの一つだ。



現在私が結婚してからは定期的に実家に通う形となり、
話す機会は前より減少したが、
時間に余裕があれば将棋盤を出し、父と対局をして穏やかな時間を過ごしている。

長年のファンの方々からすれば、
「また藤井君から入ったニワカファンか」と思いたくなる話だろう。

だが彼の影響でほんの少しでも環境に変化が現れた人は、大勢居るだろうと私は思う。

出会ったこともない人々に影響を与える彼の活躍は、
少なくとも私の人生に心豊かで温かな機会を与えてくれた。

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