家族の話
おばあちゃんが、認知症になった。
おじいちゃんと夫婦で自営業を営み、地区の委員などを積極的にして、近くのスーパーに行くと10人くらいには声をかけられて、すぐ終わる買い物が1時間半かかるおばあちゃんだ。
3年ほど前だろうか、おばあちゃんの物忘れが激しくなったのは。自営業をやめたことが1つのきっかけだと思う。
おばあちゃんの家に行くと恒例だった毎朝の美味しい朝食(なみなみと注がれた具材が15くらい入っているお味噌汁が絶品)、早朝からの忙しい足音がめっきり減った。カーラーでいつも丁寧にセットされ、毎月染めていた髪の毛も、いつのまにか白髪だらけになっていたし、いい匂いのする美容液の棚も、使用期限が切れたものばかりになっている。いつのまにか6人いる孫の名前も、間違えるようになっていた。
ここまではおばあちゃんの話。
実は同じ時期におじいちゃんも認知症になった。自営業をやめた途端、夫婦で認知症だなんて残酷すぎる。
おじいちゃんは仕事一筋の人だった。愛情深いが、あまり社交的ではない。だから認知症になってから、家からほぼ出ることなく、部屋に1人でぼーっと座っている方が多くなった。その姿を思い出すだけで今でも涙が出てくる。きっちりワックスで固めていた髪もボサボサ。ご飯の前は長いお風呂に入ってから美味しそうにビールを飲むのが日課だった。今はお風呂に入ることも忘れて、現実を受け入れられないのか、飲んだことを忘れてしまうのか、ビールが欠かせない生活が続いている。
認知症の症状が出てから3年ほど経った。
しかし、私はおじいちゃんとおばあちゃんになかなか会いに行けないでいる。
続く。
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