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ドラマ『広重ぶるう』

NHK制作のドラマを録画視聴しました。阿部サダヲさん、優香さん主演。
原作は梶よう子さんの同名小説とのこと。

松竹との共同制作とのことで、セットがしっかりとしたものでした。衣裳や鬘に手間暇もかかる時代劇はなかなか厳しい状況ですが、時代劇の火を消すまじ、という松竹の心意気が感じられます。

ドラマとしてもしっかりとした見応えで、主演のお二人の真っ直ぐな生き方、広重が見上げた空の青さのように澄んでいて、芸達者なお二人が見事に演じていて惹き込まれました。

それに加えて脇を固める役者陣がまた素晴らしかった。口うるさい舅の笹野高史さん、渡辺いっけいさんや勝村政信さんなど安定の布陣に加えて、画狂・北斎を演じた長塚京三さんが何とも素晴らしい存在感。絵に取り憑かれた、と自嘲する彼の眼に宿る狂気、確かに感じられました。

さらに特筆すべきは、真の主役とも言うべき、版元「保永堂」の主人・竹内孫八(眉山)を演じた高嶋政伸さん。見開いた大きな眼で、広重の才能を見抜き、時代の流れを読み、食えない人物でありながら、広重の妻・加代への秘めた想いを守り通す純な部分も併せ持つ男。加代が亡くなった後、広重との会話のシーンで保永堂が流した涙には、思わず観ているこちらも貰い泣き。

さらに贅沢なことに、あの吹越満さんが歌川国貞役で出演。美人画で名を馳せた絵師らしい、妖しくて色気たっぷりの演技、さすがの貫禄。本当に吹越満は素晴らしい。出番が少ないのが物足りない。

もうね、これ、北斎、国貞、保永堂、それぞれを主役に続編作ってもらいたい。

描きたいものが見つからない、と悩み続けた広重が晩年ついに見つけたその主題は、大地震で被害を受け、そこから立ち直ろうとする江戸の町そのものでした。そして傑作『名所江戸百景』が産まれるところでドラマは終わりました。もう少しこの晩年のくだりも詳しく描いて欲しかった。それくらい、終わるのが惜しい、もっと観ていたいと、魅入られたドラマでした。

北斎と広重は今、大阪の中之島香雪美術館で展覧会が開催されています。(5月26日まで)
こちらも是非足を運びたいと改めて心に誓いました。


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