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アートとコピーで、ストプラな僕が役割を把握できた話

アートとコピー講座に参加してきました

2022年3月から半年間、アートとコピーという講座に参加していました。
アートディレクター20人とコピーライター20人、合計40人で行われ、毎回異なるアートディレクターと組んで制作物を作る講座になっています。

https://www.sendenkaigi.com/class/detail/copywriter_abe.php


全8回の講座で初回を除き毎回課題提出があり、結果、半年間で7人のアートディレクターの方とコンビを組んで制作作業をしました。2022年10月1日に最終講義を終えました。

その講座を通して学んだ…と言ってしまえば月並みな表現ですが、自分の役割や自分の現在地が少し分かってきたので振り返ってみたいなと思っています。

そもそも講座を通して何を得たかったのか?

僕は、普段、広告代理店でストラテジックプランナーとして働いております。PRやプロモーション企画を担当することがありますが、基本的には、企業のコミュニケーションの「戦略」を考案する立場におります。

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制作を担当するコピーライターではなく、1人のストラテジックプランナー(略称:ストプラ)の自分がなんでこの講座に申し込んだのか。色々な要因はありますが、「ストプラってなんで存在しているのか?」という禅問答のような問いが、自分の中にあったことがそもそものキッカケでした。

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だって、「戦略」ですよ。戦略。いや、戦略ってなんです?って話なわけで。

通常、クライアントのマーケティングチームが「オリエン」を実施してそこから代理店がチームを組成し、具体的に広告制作を進めます。

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「オリエンする側」も「広告制作をする側」も戦略的に「いかに人を動かすか」を考えているわけです。「みんな戦略を考えている」んですよ。ここがポイントで。

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コピーライターは、そのチームの中で唯一コピーを書く人だし、CMプランナーはそのチームの中で唯一CMを作る人だし、アートディレクターはそのチームの中で唯一ビジュアルを作るし。チームの中の「唯一性」があるから、その人たちの役割は明確なんですよ。一方で、「ストプラ」だけ唯一戦略を考えているか、というとそんなことはなく。みんな戦略を持っている、という状況の中で、ストプラはどう立ち振る舞えばいいのか、これが結構難しいのですよ。

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で、ここでご紹介したいのが、戦略と似た概念で「前段」というものがあります。「戦略」と「前段」という言葉の違いを、制作や営業の方はあまり意識していらっしゃらないかもしれないですが、割と僕はこの2つの概念の「違い」を意識しています。

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個人的な定義になりますが、
戦略は「これから作るものの起点となる言葉」であり、
前段は「すでに固まっているものの説明になる言葉」と考えています。

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往々にして、イケていない仕事をしてしまうと、抽象的な、どんなアイデアが乗っかる「前段的なコンセプト」を作ることしかできなくなります。

よくありませんか、いろんな調査数字とかグラフの説明がばーっとされた後にパワポにデカデカと書いてある「ターゲットの心に寄り添いつつ、メジャー感を醸成するコミュニケーションを実施」みたいな。いやいや、何スか寄り添うって、何スかメジャー感って。それは、今まで長々喋っていた調査をしないと本当に思いつかなかったコンセプトなんですか?とツッコミたくなるわけです。

ただこうなってしまうのも仕方がないことがあります。それは、結局、ストプラと制作チームがあんまり会話できていない、という問題を抱えている場合です。

制作チームがどんなアイデアを出してくるかわかっていないストプラは、「大体のアイデアの受け皿となりそうな毒にも薬にもならないコンセプト」を書きがち/求められがちになるのです。制作と話ができていないから、具体的に方向性付けをしていないorできないため、「ターゲットの気持ちに寄り添う〜」みたいな抽象的な言葉になってしまうのです。

また、僕は五年目のストプラなのですが、まだまだ会社の中では「若手」に所属します。そうすると、チームバランスによりますが、例えば、CDからこんな言葉を投げかけられます。

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うーん…

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この場合は「ストプラと制作と会話ができていない」という問題が起きる以前に、「(制作からすると)ストプラと会話する必要性がそもそも見出されていない」ような状況です。すると、僕、ストプラ君に求められる役割が、進めようとする方向が「正しい」と信じられる数的データなどを整理してパワポに綺麗にする、会議資料のための資料作り、になってしまうわけです。おー、怖。

いやいや、それって戦略なん?っていうか、意味あるそれ?それがストプラなん?CDさんが自分で書けばよくね?という問いが生まれ、結果的に「わたしたちストプラはなぜ存在するのか?」という禅問答の世界へいざなわれてしまいます。

ただ、一方で、ストプラという領域出身で活躍しているハイパフォーマーも確かに存在している中で、じゃあストプラの価値をちょっと改めて僕も本腰入れて考えるべきではと思うに至りました。

なぜ、ストプラがそのような役割に終始してしまうのかを考えた時、そこにあるのは「作業の分断」という課題があるなと思いました。制作はCRだけで、戦略はストプラだけで、という分断。

そして、その分断の末に、僕は「今自分が書いた戦略で、最終的に、どう世の中に出るのか」という着地点をイメージしきれていない。だから、抽象的なコンセプトを振りかざしてしまうからではないか?という仮説が生まれました。

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制作するという表現周りの経験を、業務で中々機会がないのであれば講座で…ということで…前置き、ならぬ、「前段」が長くなりましたが。そのチャレンジが、結果的に、「ストプラ」「戦略」という役割、立ち位置を明確にしてくれれば良いなと思って講座に飛び込んでみました。

距離感のある存在、アートディレクター

「ストプラ」という存在に関する個人的課題とは、また別の論点として、アートディレクターと一緒に仕事をしてみたいという気持ちがありました。

いや、社内にも、同期にも、アートディレクターはいるわけで、話しかければできるんですけど。ストプラとアートディレクターで仕事をするような機会は一切なく、クリエーティブディレクターとコピーライターと一緒にアートディレクターはアサインされるわけです。

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なかなか話しかけようにも、「ストプラがADに何の用?」的な空気を感じてしまうのも正直なところ。

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まぁ誤解を恐れずにいうならアートディレクターは「緊張する先輩のツレ」くらいの距離感なんですよね。あくまで例え話なんですが。緊張する先輩って学生時代いたじゃないですか?運動神経万能で、友達が多く、あの先輩に嫌われるとやばいよって噂されているような「緊張する先輩」。アートディレクターって、その緊張する先輩の「ツレ」くらい、話しかけるのが恐れ多くて距離感のある存在だったんですよね。

いや、あくまで例え話なんですが。

クリエーティブ局の人はアイデア考えてその後アートディレクターに「絵」にしてもらってビシッとプレゼンしているのが、まぁ「ずるいな〜、いいな〜」と羨ましい気分で見ておりました

そんな感じで「緊張する先輩のツレ」くらいの距離感のアートディレクターと、クリエーティブディレクターもおらず、コピーライターもおらず(一応僕がコピーライターという名目で)いくつかアウトプットを制作できる環境が講座で得ることができました。

その経験を通して、結論から言っちゃうと「あれ、ストプラってめっちゃポテンシャルあって、ええ役割やん」と自分の今の職種を好きになれました。

学んだこと①「僕はクリエイターではない」

全然ペーペーな自分が話すには大変恐縮ですが、うまく行った時とうまく行かなかった時の違いが個人的に面白かったのでその話を。まず、基本的に制作作業は以下の7つの段階で行なっていました。

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大きな流れでいうと「企画があって、ビジュアルモチーフを決めて、コピーで接着する」の順番の時が理想的なアウトプットができる気がしました。講座の中でも高く評価されたアウトプットが作れたのはこのパターンでした。

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で、そういった作業を進めていく中で、そもそも僕がやっていたのは「コピーライティングか?」という疑問が出てくるわけです。自分が集中力マックスで頑張ったのは「パートナーの得意技を知る」と「課題設定」と「狙いと企画を言語化」という制作の割と序盤の段階でした。

まずパートナーの得意技を知るのは、何となくその方が今までやってきた仕事を見せてもらったり、憧れているデザインに関して聞いてみました。

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そうしていくと、当たり前ですがみなさん個性が色々あるわけです。ギャグ系なら話題化PR的に振った企画を出した方が映えそうだなとか、スマート系なら言葉の説明を最低限にしないとな…とかそういう「大まかなトンマナ」を頭の中で何となく考えていました。

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そしてそこから、切り口をいくつか検討して、勝ち筋になりそうな課題設定をしました。ここが一番意識的に頑張っていた気がします。

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僕は言葉単体でグッとくるコピーを書いたり、もしくはAdobeソフトを使いこなして絵や動画を作るということに「得意」を見出していません。いわゆる、左利きのエレン的な「クリエイター」の世界線とは違うというか。

そしてそんな自分が目指したい役割とは、(会社の先輩がおっしゃっていた言葉を自分が考えたように使うのですが)クリエイティブではなく、イマジナティブな仕事でした。

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イマジナティブとは、例えるなら、跳び箱の「踏み台」だと思っています。

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アートディレクターといったクリエイターが「正しい方向に高く飛ぶ」ためのグッと踏み込む場所を考えることが「イマジナティブな企画作り」だと思っています。

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7回の課題制作を通して、アウトプットがうまく行かない時は2パターンありまして、以下の2パターン。

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逆にうまく行った時は以下のパターンでした

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イマジナティブなコンセプト。それは、アイデアの終着地点を設計せずに言いっぱなしにする抽象的な「前段的なコンセプト」とは一線を画す役割だと思っています。また逆に具体的すぎるがゆえにアートの遊び幅が少なくなる「踏み込みすぎコンセプト」とも違います。

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これはちょっと感覚論なので中々伝わりづらいかもですが、言うなればクリエイターが「面白がってアイデアを出したくなる」お題を決めることだと思っています。人が集まってきたくなるシャープで、かつ、余白のある魅力的な「課題設定」をするスキルだと思います。

この「クリエイティブではなくイマジナティブになろう」と自分の目標とする地点が明確になり、成功体験が積めたのはとても大きな収穫でした。

学んだこと②「たかが議事録係の僕の特殊スキル」

ストプラをやっている僕には、特殊技能がありました。というか、あまりその技能を特別なものだと思っていなかったのですが講座を通して、「あ、特殊技能だったんだ」と認識しました。机の中を漁っていたら昔もらったお年玉が出てきた時くらいの、棚から牡丹餅感です。

というのも、「戦略」という抽象的な議論をいろんなステークホルダーの間で合意形成へ持っていくのが僕の仕事だったりするわけです。

いわゆるマーケっぽい議論、「調査数字上どうか、競合はどうか、ブランド資産はどうか」みたいな議論と。同時に、マーケっぽくない議論もあります。営業が配慮したいこと、クリエイターが表現できると思っていることクライアント担当者、クライアント決裁者の意見…1つの広告を作るのに多くのステークホルダーの「思惑」が交差します。

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そのままだとバラバラなので、それらを言語化し、整理して、1つの信じられる「合意形成」を生むためのドキュメント作りが仕事だったりするわけです。で、正直な話をすると、自分はこの仕事が「めっちゃ大変な議事録係」くらいにしか思えずコンプレックスでした。

「議事録」って誰でも出来そうじゃないですか。

戦略を言語化して、その広告が世の中にアウトプットされてもCDやコピーライター、アートディレクターはブレーンで名前が出るのに、この「さまざまなステークホルダーと議論し、言語化し、合意形成をした」ストプラが名前が出ないわけです。

そこにモチベーションを削がれるところがありました。ぶっちゃけね。

ただ今回、講座で7人のアートディレクターと組んで明確に役に立ったのが「言語化して整理する」という、僕からしたらなんでもないと思っていた能力でした。言語化されているから企画の狙いがシャープになり、深める必要のない議論へコストをかけずに効率的に進めることができました。

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結果的に、アートディレクターの方の時間を「企画にクリティカルに影響を与える、本質的なポイント」へ集中してもらうことできました。企画が迷子にならずに済んだところがあるかなと。

自分がコンプレックスのように思っていた「議論整理力」「たかが議事録作成能力」だと思っていたものが、実際にクリエイティブ作りに役立ったのは自分にとって自信につながりました…というか、まぁ無駄じゃなかったんだなという謎の安心感がありました。

半年間の講座を通して見えてきた現在地

アートとストラテジーを通して、
自分の提供できる価値2つ見つけられました。

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正直、「表現言葉」という市場においては、本業でコピーライターをしている人とでは覚悟が違うし、そこでは戦えないなと思いました。ただその分、自分にできることがあることを知れました。

「ストプラが実際にアートディレクターと組んで企画を作る」という業務ではできない経験を通して、月並みな言葉で表すなら「自信ができた」「やる気がおきた」「もっと頑張ろうと思えました」でございました。

そんなこんなの役割を見つけた末に…

パートナーのアートディレクターさんと作った雑誌広告が1つ、雑誌「ブレーン」に掲載することになりました。この「アートとコピー」という講座そのものの宣伝を目的とした雑誌広告であり、今回のアートとコピー講座の最終課題でございました。

広告業界に入って五年、あれ、自分の名前で「作ったぞ!」ってものが世の中に出るのは初な気がしています。たぶん初。めっちゃ嬉しいので詳細が決まったらまたご報告させてくださいませ。

正直こんな偉そうなnoteを書いた後に告白すると、パートナーであるアートディレクターさんの力が圧倒的で、本当に僕はラッキー、フリーライダーでございました(歓喜)

最後になりますが…

コンビを組んでくださった7人のアートディレクターのみなさん、切磋琢磨してくれた講座に参加したライバルのみなさま、特別講師の先生方、それこそ想定外のコンビが生まれるイマジナティブな場所を提供してくれた「阿部広太郎さん」と宣伝会議のみなさまに、最大級の感謝を込めて。

ありがとうございました。

講座の個人的な振り返り、めちゃ恥ずいですが何かのご参考になれば幸いです。






あと……課題設定から一気通貫して企画を作れるプランナー……それでいて、若くて割りとやる気とスピード感持って対応できる……そんな奴がチームに欲しいよ〜って人……いま、あなたの脳に直接話しかけています……なにか……お仕事のお話貰えると嬉しいです。

何卒何卒。

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