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【日本を芸術で溢れかえらせる#3】50年後にプロオーケストラは存在するか?(前半)

こんにちは!
先週ミューザ川崎にて行われた、東京都交響楽団×ジョナサン・ノットの歌劇「サロメ」の演奏会がとても素晴らしかったです。
これまであまり歌劇を見に行ったことがなかったのですが、歌はもちろんのこと、歌い手の一挙手一投足に役が入っているように感じられて、大掛かりな装置がなくてもとても臨場感があり、没入してしまいました。
歌劇、ちょーおススメです!

さて、前回のnoteはご覧いただけましたか?
前回のnoteでは、芸術のあれこれをアーティストとお話する【芸術の種をまく会】という私が主催するカンファレンスについての記事を書きました。
学生アーティストの生の声がみられる素敵な記事ですので、是非ご覧ください。
(↓前回の記事はこちらから↓)

今回のnoteでは、
「オーケストラ産業はいつか立ち行かなくなってしまうのではないか」
という私が最近考えている課題感についてお話しようと思います。

オーケストラは”高い”。。。

記事の最初でもお話したように、私は大体2~3回/月ほどプロ/アマ問わずクラシック(僕の場合はオーケストラ)の演奏会に行きますし、とあるプロオーケストラでステージのアルバイトもしています。
お客さんとして、又は裏方として演奏会に立ち会って最近思うことがあるのですが、
プロオーケストラの演奏会は「お客さんの年齢層が”高い”」です。(敷居も高く、料金も高いといわれているのですがそれはまた後日💦)
たまにオーケストラの演奏会に行かれたりする方もそうでない方も、何となくイメージできるのではないでしょうか?

何か明確な統計を取ったわけではないのですが、プロの演奏会に行った際に客席全体を見渡してみると、実感値としては8割が50代以上の方、1割は熱心なクラシックファン1割はファンに連れられてきた新規さんというような感じでしょうか。
もちろんどこにある(都会or地方)オーケストラなのかということや、プログラムによっては一概にはそういえないかもしれませんが、傾向としては確実に存在していると思います。

例えばこんなデータがあります。

引用(東京交響楽団*1)

これは東京都交響楽団が作成した、一定の期間内のクラシック演奏会に訪れたお客さんに関するデータを抜粋したものです。
上の画像にはとあるオペラの来場者の属性が示されています。
年齢内訳をみると、50代以上が全体の8割を占めています。
確かにオペラは自分含め聞きなじみがないですからまだ年齢層が高いことにはうなずける気もします。

では次にこちらのデータを見てください。

引用(東京交響楽団*1)

こちらは東京交響楽団が2016年12月に開催した定期演奏会(楽団がレギュラーで行っている演奏会)の来場者の属性を示したものです。
こちらの場合も50代以上で全体の7割超を占めており、20~30代の割合は1割そこそこです。曲目が特別マイナーな曲というわけではないため、こう見ると先述の”客層が高い”という実感値は大方間違っていないことがわかります。

年齢層が高いと何が問題なのか?

プロの演奏会において若年層のお客さんが少ないことにどんな問題があるのでしょうか?
一つは、将来的にお客さんが減少する可能性があるということです。
数年の話ではなく、20~30年の中期、また50年という長期で考えたとき、今のボリュームゾーンである50代以上の方はもう演奏会にはいらっしゃれません。
そうなったとき、今の10代~30代がちょうど今のボリュームゾーンの年代と重なってくるのです。
「若い時は生のクラシック音楽の良さがわからなくても、年を重ねればわかってくる」と考えますか?
私はそのようには思いません。なぜなら今はエンタメの数が非常に多いからです。しかもその手軽さも以前より格段に増しています。YouTube(基本無料)やSpotyfy(基本無料)、Amazonmusicなどのサービスが当たり前にある世代が、年を重ねれば放っておいても演奏会に来てくれるようになるとは思えません。
そうなればお客さんの数は徐々に減っていき、極論、クラシック音楽やオーケストラは立ち行かなくなってしまいます。

また音楽で生計を立てられるような人が少なくなるという問題も同時に発生します。
理由は単純で、現状でも資金面が潤沢とは言えないオーケストラが先ほどお話した通りお客さんが少なくなって売り上げが立たなくなると、演奏家のポスト(人件費)がどんどん減っていくからです。
現状、大学を出た後の演奏家にとって、オーケストラの団員になるというのは演奏活動を安定させるうえで有用な選択肢の1つと言えます。
その選択肢が非常に取りづらくなる/なくなってしまえば、金銭的な理由から音楽を志せない人も増えてしまうでしょう。

こうした理由から私は、若年層のお客さんがいないことは懸念すべき問題だと思っているのです。

楽器演奏/クラシック音楽が好き≠プロオケを聞きに行くのが好き

先の東京都交響楽団のデータを見たときこんなことを思いました。
「自分の周りには音楽好きな人ばっかりなはずだけど、みんなあんまり演奏会とか行かないのか?」
(演奏会に行くことが“良い/悪い”、行かないことが“良い/悪い”という考えは全くないです。)
僕は自身の大学のオーケストラサークルに所属しており、そこにいる同期の友人、後輩先輩共にみんな楽器を演奏することが大好きな人たちです。
さらに、彼らの中には大学のオーケストラだけにとどまらず外部の有志のオケにも参加していたりする人もいます。
つまり、クラシック音楽や楽器を演奏することが好きな若者(特に学生)が一定数存在するということです。

では彼ら含め、演奏するのが好き/クラシック音楽が好きな人はオーケストラの演奏会に行くのでしょうか?
僕のInstagramを用いて彼らにアンケートをとってみました。
質問はこちら。
「(あなたが)プロ/アマであることを問わず、月に平均して1回以上“プロ”の演奏会に行きますか?」

結果はこちら。

筆者作成

行くと回答したのは22%、行かないと回答したのは78%でした。
この結果からみると、演奏することが好き/クラシック音楽が好き=プロの演奏家を聞きに行くという構図は必ずしも成り立っていないように感じます。
実際に“行く”と回答した人の中には芸術大学で学ぶ学生がある程度おり、大学オーケストラで楽器を演奏している人たち(アマチュアで楽器好きな人)はあまりプロの演奏会に行かないのかもしれません。

ただでさえお客さんの数が多くはないクラシック音楽の演奏会、そしてその中でも圧倒的に少ない若年層のお客さん、その潜在顧客としておそらく一番のポテンシャルがあるだろうクラシック音楽/楽器演奏好きの人たちがこれくらいの割合でしか演奏会に行かないのです。
ある程度同じ属性の人たちであること、母数も少ないことを考えると、これを一般的な傾向としてしまうのは良くないですが、少なくとも私の周囲での事実ではあります。

前半のまとめ

さて今回のnoteでは

・オーケストラの演奏会のお客さんの年齢層は高い(50代~が中心)
・若い楽器奏者/クラシック音楽好き=既存顧客or潜在顧客とは限らない
⇒このままだと50年後にオーケストラの演奏会に行く人はいなくなるかもしれない

ということを紹介しました。
次回のnoteでは、
「なぜ演奏会に行かないのか?」
「どうすればお客さんを増やすことができるのか?」
という点について考えてみようと思います。

それでは来週の記事も乞うご期待!またね👋

参考資料
*1 東京交響楽団「オーケストラのマーケティング・リサーチと芸術団体のための戦略プラン構築、およびオーケストラのためのマーケティング・ハンドブック制作事業」
(H1_H4 (tokyosymphony.jp))

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