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「石を拾うことはあっても玉を捨てることなかれ」---「上手に失敗する」「Risk-takers」

論文の査読ポリシー

最近、いくつかの学会論文査読ポリシーに「石を拾うことはあっても玉を捨てることなかれ」というものがあることを知った。(↓情報処理学会や文化人類学会等)

 玉石混交の投稿論文の中から「玉」つまり価値のある論文を見落として、学会誌に掲載されることなく、世に出ることがなくなってしまうことがないようにという方針だ。
 一方、「玉」を捨てないために、「石」つまり価値の低い論文を見誤って掲載することは良しとしようということになる。これを方針で明確に示しているのはとても良いなと感じた。
 審査をする側というのは、とても見識や能力・センスを問われているように見受けられる。漫才のコンテストなどでも、出場者と同じくらいプレッシャーがかかっている気もする。最近はオンライン上で審査結果についてもいろいろと書かれそうで、審査する側も審査されているような状況だ。
 「石」をひろうリスクや失敗はOKですよ、という方針が明確に共有されているというのはとても大きな意味を持つと考えられる。

IB学習者像「挑戦する人」(Risk-takers)   

https://www.shugakukan.ed.jp/ib/

 IBが示している10の学習者像のひとつに「挑戦する人」がある。「挑戦する人」と聞くと「Challengers」が頭に浮かぶかもしれないが、英語版では「Risk-takers」となっている。

 個人的には、日本の教育界でもっと強調されるべき学習者像がこの「Risk-takers」ではないかと考えている。
 困難なことに対してもがんばって「Challengeする」ことは日本でも大事にされてきた。しかし、「Riskをとる」ことはもっと強調しなければ、「出る杭は打たれる」恐れに負けてしまうことが多いように感じる。
 
 子どもたちだけではなく、学校や教員も「Riskをとる」ことのネガティブな面の方に目を向けがちだ。議論のなかでも「慎重に!」という流れになることが多い。「見通しが不明瞭」なことは受け入れられにくい。VUCAの時代を生きていく力をつける役割を担っているのが学校なのにもかかわらず。指導法やICT活用なども含めて学校の在り方がなかなか変わりにくいことの原因のひとつが、「Riskをとる」ことの重要性が共有されていない点なのではないか。
 「石を拾うことはあっても玉を捨てることなかれ」というポリシーを共有すると、少し前に進みやすくなりそうだ。管理職や主任などのミドルリーダーも「石をひろう」リスクをとりやすくなりそうな気がする。

ATLスキル「『上手に失敗する』を実践する」

 学習者像「Risk-takers」につながりそうなATLスキルに、「『上手に失敗する』を実践する」というものがある。MYPのATLスキルで「自己管理」のカテゴリーの中にある「情動スキル(感情を自己管理するスキル)」の中に示されているものである。
 「『上手に失敗する』を実践する」は、英語の学習では特に重要なスキルのひとつだと考えている。中学1年生の英語の授業では、入学直後から繰り返し強調している。
 「上手に失敗するとは?」「上手に失敗するためには?」を生徒たちが考え、付箋に書いたものを教室にも貼ってある。生徒の振り返りの中にも「今日は、○○をするときに上手に失敗できた」などのことばが自然と出てくるようになっている。
 このATLをさらに高めていくため、生徒たちにも「石を拾うことはあっても玉を捨てることなかれ」ということばを紹介したい。「上手に失敗する」ヒントになりそうだ。
 グループでのディスカッションなどでも、「石」かもしれないという意見であってもまずはひろってほしい。

「石を拾うことはあっても玉を捨てることなかれ」
最近、知れて良かったと感じたことば。



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