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私、デザイナーに向いているの?〜悩んだ時に読んだ本5選〜

はじめまして、JOMA(常通雅代)と申します。
デザインでお金を頂くお仕事をはじめて、紆余曲折あり大体8年(多分)。IBMにてデザイナーをしております。

私がはじめてデザインを勉強し始めたのは、23歳の時でした。

元々は政治の勉強がしたくて法学部に入り、勉強をしていた時にグラフィックやデザインが歴史を動かして行った経緯を知りました。また、学生時代に音楽活動や政治関連活動に参加し、さまざまなものを作ったり、書いたりする経験をして、いつしかもっと自分の手で形にしてみたいと思うようになりました。

当時は、今のように綺麗に言葉には出来ず、ただ、考えたものを形にする力が無い自分に恥じらいを感じていました。

そこから、たくさんの人の力を借りて、運良く渡米をし、デザインを学ぶことになりました。

その後、なんだか色々あって、現在デザイナーとして働いております。
(私の留学秘話や経緯についてはまた別の機会に…。)

そんな私ですが、結果的にデザイナーになっているものの、デザインを勉強していても、「これを続けて何になるんだろう」と疑問に思う日々の繰り返しでした。「デザイナーになりたい」という確固たる意思があって物作りを始めた訳でもなかったので、自分のやっていることが、将来何につながっていくのかわからず、余計に不安だったのかもしれません。

仕事をするようになってから、作った作品が評価されても、憧れの人と仕事をしても、デザイナーでやっていけるのか、果たして自分に向いているのか、常に不安はつきまといます。もう辞めたほうがいいんじゃないか、別の道があるんじゃないか、といった疑問もずっと胸の中にあります。

「わたし何にもつくれない〜〜〜〜〜!」と、毎日のように嘆いていた時期もあり、同居していた友人のデザイナー、職場の制作陣にはたいそう励ましていただきました。今も定期的に悩みますし、家の中で転げ回る日もあります。なんでこんなものしか作れないんだろう、と。

考える度に別の職に就いた方が良いんじゃないかとも思う日もあり、堂々巡りの思考の旅が始まります。

そんな、はっきりとしない日々の繰り返しの中で励まされたのは、本の中の言葉たちでした。

デザイナーではなくとも、「働くってなんだろう」、「自分は何をしていったら良いのだろう」、と悩む時は、誰にでもあるかと思います。

私はそうした時間を、自分とお話しする大切な時間だと思っています。暗雲立ち込める自分の心と向き合い続けて、気がつけば電子&リアル書籍含め年間約200冊、本を読んでいました。寝ても覚めてもデバイス片手に本を読んでいる状態になっていました。

デザイナーであると、必ず落ち込むシーンが出てくると思います。明確な数値で測ることが難しい、抽象的なスキルを持ったデザイナーは、才能や経験といった言葉に踊らされる人も多いのではないかと思います。自分が向いているのか、向いていいないのか。辞めるなら今だけど、今じゃないのかもしれない。続けてどうなるのだろう。未来は明るいのか。

私は、そんな時には本を読みます。著者たちの知恵の力を少しでも借りて、悩みの尽きない自分を一歩でもマシな人間にしたいからです。

今日は、私が道に迷った時、ひとり悩んだ時に出会ってきた本を、少しだけ紹介させてください。

今、悩んでいるデザイナーのたまごや、同じ悩みを抱える人たちに、少しでもお力になれれば幸いです。

1冊目「非属の才能」山田玲司

「人と違っていること」は、日本の学校教育の中ではあまり評価されにくいのでは、と思います。中学校、高校時代、なんとなく周りと考えていることが違うのは気づいていても、違いがあることを恥ずかしく感じていました。他の人が出来るような発言や行動ができないし、うまく振る舞えない。なのに、自分が思ってもいないことは同意出来ない頑なさもありました。今でこそ、自分の意見もある程度波風を立てず言えるようになりましたが、当時はなんだか周囲と違う自分が辛くて、でも、別に天才でもないし、優秀でもないただ変な人である自分自身を持て余す日々でした。ある時、同じような悩みを持つ友人に紹介してもらった本です。

世の中で活躍する人たちがどんなに変わっているのか、そして天才ではないけれど、凡人でもない人がどれ程いてそれぞれの道を歩み活躍しているのか。「自分なんてこの人達に比べたら普通だわ」と、逆に安心して、「ちょっとだけ人と違う」自分のユニークな部分を大切にしたいと思えた本です。

2冊目「自分の中に毒を持て」岡本太郎

大学4年生の頃、当時の私は海外の大学へ進学しようか、就職しようか迷っていました。スカーラーシップを貰っての留学なんてまたと無いチャンス、でも、新卒カードを捨ててしまって大丈夫だろうか…。今だったらもっと良い就職先もあるんじゃないか….。大学院へ行くのではなく、まさかの第二学士(しかもデザイン)を取る人なんて聞いたことないし…。と、毎日お風呂の中で沈みながら過ごしていた時でした。今考えると、案外大丈夫なんだけれど、当時、浪人も留年も、たいして大きな失敗をしたことも無かった私にとっては大きな選択でした。才能が無い、頭が悪い、言い訳なんていくらでも頭の中に出て来ました。当時、先行き不明の未来に進む私を励ましてくれた本です。「自分はあんまり頭もよくないし、才能のない普通の人間だから何も出来ないんじゃないか、なんて考えるのはごまかしだ。そういって自分がやらない口実にしているだけだ。」(自分の中に毒を持て、P105)と、手厳しい一言が胸に刺さりました。大きな選択に迷った時は、難しい方を選ぶ。今も、新しいことにチャレンジする勇気の持てない自分に出会った時、ページを開いています。

3冊目「センスは知識から始まる」水野学

海外の大学に行き、デザインを勉強し仕事を始め、デザイナーを数年やってみても、やっぱり自信がない。ある程度のものは作れる、プレゼンはできる、なんとなく自信はあるが、上手い人なんて世の中にたくさんいる。自分は何が強みになるのか…、迷っていました。よくもわるくも中途半端。ジェネラルに程よく何でも出来る人になったら良いのか、スペシャリストを目指したら良いのか…。いやもっと別の道があるのか、雲を掴むような気持ちでした。そんな時に出会った本です。

こんなものしか作れない自分でも、知識が貯まればいいデザイナーになれるのかと思い、とにかく、まずは悩んだら目の前の仕事と向き合っていこうと励まされた本です。

また、当時の上司と話していた時、「良いデザイナー=解決力があること」と話をしていたことを思い出し、その裏付けの理由を学んでいるようでした。

私には学ぶ力と、好奇心がある。先のことはわからないけど、もうちょっとがんばってみよう、と、知識の集積が力になることを信じさせてくれました。デザインを続けていくことの励みになった本です。

4冊目「仕事は楽しいかね?」デイル・ドーテン (著), 野津智子 (翻訳)

次は、改めて何を仕事にしていくか、考えさせられた本です。

IBMに来る前、約1年ほど、病気のため会社を辞め、お仕事をお休みしていた時期があります。(自分では「人生の夏休み」と読んでいます。笑)

現在も病気とお付き合いをしながら仕事をしています。

ちょうど、日本に帰国して4年ほど経った時でした。日本での働き方ってどうなんだろう、そもそも、仕事ってなんだろう。働くってなんだろう。仕事をして自分が大切にしたいこととはなんだろう。

デザイナーとして、というよりも、改めて、「自分は何がしたくて働いているのか」、「どう働いたら幸せなのか」、働くことの意味や形を改めて考えていた時でした。

デザイナーにはなったけれど、なにか満たされていなかった自分は何を求めているのか、一度立ち止まって考える機会をくれた本です。やってみて、試してみる気持ち、完璧な状態を求めるのではなく、少しベターな方法を探していくこと、それを続けていくこと。そのサイクルを続けていく勇気を分けてもらいました。

5冊目「なぜ僕らは働くのか-君が幸せになるために考えてほしい大切なこと」池上彰

こちらも、人生の夏休み期間中に読んだ本です。いつの間にか、「仕事はxxでなければならない」という思い込みが、自分の中にもあったのだと、気付かされました。

どんな環境であれば良いのか、スタイルは、仕事内容は?

次はどんな働き方がしたいか、どんな環境で誰と何をしたいのか、より具体的に想像させてくれた本です。この本を読んでしばらくして現職へジョインさせて頂きましたが、あの時、自分の思考と向き合ったおかげで、具体的な自分に合った「働いている自分」のイメージが出来たのだと思います。例えば、40歳になったら仕事を辞めて1年間別の国でボランティアや遊学をして、また仕事に就く。そんなことがあったっていい。働き方も人それぞれ向き不向きがあり、自分にあったスタイルを具体的に想像していくこと、また、働くことに対してのイメージを自由に思考することの大切さを教えてくれた本です。根が臆病なので、続けていく勇気、好きなことにチャレンジしていく気持ちも、改めて学ばせて頂きました。

さて、少しではありますが、私が出会ってきた本を紹介させていただきました。

人とは「出会う時に、出会うべくして出会う」という言葉がありますが、本も一緒だと思っています。

今日紹介した本の中には、なんとなく目に入った本、インターネットの海でたまたま出会った本、会社を辞めた時にお母さんが買ってくれた本など、さまざまな出会い方をしています。

どれも、「その時の私」にとって、必要だった本だと思います。
これからも私と本の旅は続いていきます。

そして読んでくれた皆様にも、たくさんの良い出会いがありますように。

参考文献
山田玲司(2007). 『非属の才能』. 光文社
岡本太郎(1993). 『自分の中に毒を持て 』. 青春文庫
水野学(2014). 『センスは知識から始まる』. 朝日新聞出版
デイル・ドーデン(2001)「仕事は楽しいかね?」野津 智子 (翻訳). きこ書房
佳奈(2020). 『なぜ僕らは働くのか-君が幸せになるために考えてほしい大切なこと』池上彰(監修). 学研プラス

ライター&図書委員:JOMA(常通雅代)
日本IBM テクノロジー事業本部 Client Engineering Designer (UX Designer)。外資系IT企業、出版社ブランド事業部、Creative Boutiqueを経てIBMへ。悩みが多すぎて年間約200冊本を読む。猫と音楽と山菜が好き。関わって来たのはUI&UX Design / Motion Graphics / Graphic Design / Illustration、デジタル✖︎リアル企画、設計など。
note▷ @jomachan

発信済のコンテンツ
VOL.03 - 人を配慮するデザイン
VOL.02 - ビジネスとカーボンデザインシステムの記事を記載して公開しています
VOL.01 - 一緒にはじめるデザイン思考〜デザイン思考型ワークショップの課題と展望〜