可愛い後輩を可愛がらない。

アイツは可愛い、可愛い後輩だ。


アイツは素直だ。

手伝いなど頼んでも嫌な顔せず引き受ける。反対や口答えは見たことがない「はい、わかりました〜」「あ、それ僕やりますよ〜」が常の口だ。

アイツは丁寧だ。

賢く行動力もあるので、バックグラウンドがそれなりにある、ただそれをひけらかすような態度は決して取らない。他人に対して常に丁寧で謙虚に振る舞う。

アイツは好奇心旺盛だ。

それなりに色々とやってきただけある、好奇心旺盛だ。
先輩らの趣味の話や誘いに対して断ることはほぼない、「え〜、面白そうですね!」「それ僕も今度やってみたいです!」よく言う。

そんなアイツは可愛い後輩だ。

【可愛い後輩】というレッテルを自分に貼るのがすこぶる上手だ、先輩はもちろん、会う年上にことごとく好かれる。
僕も『あ〜、ありゃ可愛い後輩だな〜』と思う。

それだけ、ただそれだけだ。
人に可愛がられたい、気に入られたい、その本能に乗っ取り行動し、精巧に淡々と任務をこなす存在に見えてしまっている。

攻略本通りに動く勇者ああああはイレギュラーを起こさない。
僕は人間が人間である証が好きだ、美人なあの子が腹に持つとんでもない毒が仕込まれた鋭利な刃物、人気者の奴の裏アカ
、誰からも見られてないあの人が見せる親切……。

簡単に言えばギャップ、難しく言えば自身に対してのアンチテーゼを持っている人が好きだ。

だからアイツを面白がれない。

水没からの復旧作業に勤しむアリや、歪な生態環をつくる寄生虫、レンガの間に生える苔、普通の彼が持つ特殊な世界観…。
そんな見えていないモノを見つけ、自分の見方で愛でる事が好きだ。

だからアイツを可愛いがれない。

勘違いしないでほしいのは、別にアイツの事を嫌いという訳ではない、というより、好き嫌いの線上にアイツはいない。

年齢の上下はあれど、大切な友人だ、それからも普通に接していく。

なに…気にすんな、単なる嫉妬の話だよ。

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