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【解説】広島叡智学園中学校の作文って、どんな問題?③(2019年_適性検査B)

※2021/08/09:記事内容の更新
※2023/07/16:下記追記
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こんにちは!公立中高一貫対策のiBASEです。
今回は、全国的にも注目度の高い「広島叡智学園中学校」の適性検査B(文系分野・作文)の問題について解説・分析を行います。

今回はその第3弾!前々回の記事では出題の内容を概観し、前回の記事では【大問1】について解説しました。今回は社会分野を扱う【大問2】について、より詳しく見ていきましょう。


検査B_大問2の出題

複数の資料が提示され、1.「資料の分析・課題の発見」を行い、2.「その解決策を考え提示する」という問題です。広島叡智学園が入学後に重視している探究的な学びのプロセスを再現している出題であると言えるでしょう。出題においては始めに、以下のような設定が提示されました。

千夏さんのクラスでは、総合的な学習の時間で、「よりよい町づくり」というテーマで班ごとに自分たちの住んでいるA町の課題を見つけて解決する学習をしています。そして、その学習を通して考えたA町の課題とその解決策を町長さんに提案しようとしています。

その後さまざまな条件の設定がなされた後、最終的には以下の問いに取り組むことになります。

あなたが千夏さんの班の一人なら、A町にどのような課題があると考え、どのような解決策を提案しますか。資料1~3から2つ以上の資料を用いて、あなたの考えるA町の課題と、「A町のよいと思うところ」をふまえた解決策を、文章にまとめて書きなさい。
【資料1】A町の人口の変化
【資料2】A町の年代別の人口の割合の変化
【資料3】A町に住むさまざまな年代の人に対する聞き取り調査の結果

0.答案の構成

大問2については字数制限はなく、罫線のみの解答用紙です。よって細かく気にする必要はありませんが、学校HPに掲載の実際の解答用紙によれば、最大約500字程度の解答欄となっています。

今回の出題では「A町の課題」と「解決策」それぞれについて、丁寧に述べていくことが求められています。分量と配分について特に気にする必要はありませんが、約半々の構成としてみましょう。

1-1.資料の分析

まずは資料1~3から読み取れることを簡単にまとめておきます。

【資料1】A町の人口の変化(棒グラフ)
1985年~2015年にかけて、人口が減少し続けていることが示されています。

【資料2】A町の年代別の人口の割合の変化(帯グラフ)
全体として「0~19歳」「20~39歳」の若い層の割合が小さくなり、逆に「60歳以上」の高齢層の割合が大きくなっていることが分かります。

【資料3】A町に住むさまざまな年代の人に対する聞き取り調査の結果
「働くところが少ない」「買い物施設が少ない」「交通の便が悪い」「遊ぶ施設が少ない」「空き家や空き地が多い」などが挙げられています。

と、かなりオーソドックスな「過疎化」や「少子高齢化」についての現状が資料と共に提示されています。資料から分かることを丁寧に(=減点されないよう気を付けながら)まとめていくことで、きちんと点数を積み上げられることでしょう。

1-2.課題の設定

高齢化率が高まっているのに人口は減っている。つまり、若い人がどんどんその町から出て行っているということ。ゆえに、若い人に必要とされるような施設や機会がどんどん失われてしまっています。こうした「よくない現状・状態」のことを、「問題」と呼びます。

そして「問題を解決するために取り組むこと」を「課題」と呼びます。今回提示された「問題」で言えば、「町から若い人を流出させないようにすること」と課題と置くのがよいでしょう。

この「問題」と「課題」という言葉の概念をきちんと区別して理解しておくことが大切です。多くの受検生がこの2つの言葉を混同しているため、的を射ない答案を書いてしまうのです。この点は、iBASEでも何度も指導していくポイントの1つです。

問題」=よくない現状・状態のこと
課題」=問題を解決するために取り組むこと

2.解決策を考え提示する

課題を実現するために実行することを、解決策と呼びます。出題では、「A町のよいと思うところ」をふまえた解決策を提示することが求められています。

【A町のよいと思うところ】
●豊かできれいな自然

「水や空気がきれい」「新鮮な野菜がとれる」「四季の風景がきれい」「釣りや登山を楽しめる」
●伝統的な文化や人間関係
「文化を受け継いでいる」「地域行事に住民が積極的」「住民同士がお互いに助け合って生活している」

問題文で挙げられていた「A町のよいと思うところ」は、大きく「豊かできれいな自然」と「伝統的な文化や人間関係」の2つに分類できます。いずれかを使って、若い人が町にいたいと思い続けられるための施策を構築しなければなりません。

たとえば、若い人が町を出ていく大きな理由の1つは、やはり仕事の問題です。よって流出を防ぐためには、若い人が働く魅力的な場所を作ることが必要です。豊かな自然を活かして観光客を増加させる施策を講じ、その場所で若い人が様々なスキルを発揮できる仕事を作っていくことが、一案として考えられるでしょう。

そして読み飛ばしがちですが大事なポイントとして、出題の設定が「町長に提案する」内容であるということが挙げられます。行政が取り組むようなスケールの大きい施策の提案が求められているということも、広島叡智学園から受検生への強いメッセージだったと言えるでしょう。

3.対策にあたって

さて、初年度にあたる2019年度は「町づくり・人口問題・地方創生」がテーマとなる出題でしたが、以降はどのような出題がなされるのでしょうか。その予想の手がかりとなるのが、広島叡智学園に導入予定の「国際バカロレア(IB)」のカリキュラムです。(IBについての参考記事はコチラから)

IBでは国際的な視野を持つ生徒を育成するため、学校で学んだことを教室の中で完結させるのではなく、実社会に結び付けて関連付けて理解することが求められます。この時に用いられるのが、6つの「グローバルな文脈」という項目です。様々な学習内容は、この6つを元にテーマが設定され、授業が構成されていくのです。

グローバルな文脈

(IBO『MYP:原則から実践へ』2015年、P.80より)

(以下が6つの「グローバルな文脈」の詳細ですが、”サッ”と流し読んでください。)

①アイデンティティーと関係性
「私は誰なのか?」「私たちは誰なのか?」アイデンティティー、信念と価値観、個人的・身体的・知的・社会的・精神的健康、家族や友達、コミュニティー、文化などの人間関係、人間であることが何を意味するのかを検証します。

②空間的時間的位置づけ
「どこ」「いつ」の意味はなにか? 個人の歴史、ふるさとと旅、人類の転機、発見、人類の探査と移住、個人的・地域的・グローバルな観点から見た個人と市民権の関係と相互の関連性を検証します。

③個人的表現と文化的表現
「創造的な表現の本質と目的は何か?」考えや感情、性質、文化、信条、価値観を発見し、表現する方法、自分の創造性を振り返り、広げ、楽しむ方法、美的認識を検証します。

④科学技術の革新
「自分たちが住む世界をどのように理解するのか?」自然世界とその法則、人々と自然世界との相互作用、人間は科学的原則の理解をどのように用いるか、科学的・技術的進歩がコミュニティーと環境に及ぼす影響、環境が人間の活動に与える影響、人間は自分のニーズに合わせて環境をどのように選ぶかについて検証します。

⑤グローバル化と持続可能性
「あらゆることはどのようにつながっているのか?」人間がつくったシステムとコミュニティーとの相互関連性、地域の過程とグローバルな過程との関係性、地域における経験がどのようにグローバルに関わっているのか、世界の相互関連性によってもたらされる機会と葛藤、人類と環境に対する意思決定の影響について検証します。

⑥公平性と発展
「共通の人間性がもたらすものは何か?」権利と責任、コミュニティー間の関係、限りある資源を他の人々や他の生物と共有すること、平等な機会へのアクセス、平和と紛争解決について検証します。

こうした入学後の学習内容が、入試(適性検査)にも大きく影響を与えているであろうことは想像に難くありません。

iBASEの社会科では、こうした6つのテーマを意識しつつ、予想される出題テーマに対応した演習課題を用意しています。単純な受験テクニックだけではなく、講師との本質的な対話・議論を通して、豊かな発想と高い視座を持った生徒を育成することが、iBASEの隠れた(?)目標の1つです。

4.まとめ

3回に渡って、広島叡智学園の出題内容を解説してきました。開校間もないため、参考とする過去問が少ないことにお悩みのご家庭も多いことかと思います。

ですが大きな特徴は、初年度の出題を見るだけでも十分分析が可能です。
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