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タタラ場の女たちと、子育てがしたい。

「タタラ場で、子育てができたらいいのに」

十数年ぶりに戻ってきた「もののけ姫」を観て、わたしはこう思った。

小さいころ、まともに観たジブリ作品は「となりのトトロ」くらい。「もののけ姫」は名作とは聞きながら、初っぱなの祟り神の黒いグニョグニョや、アシタカの弓で吹っ飛ぶ首や腕がこわくてこわくて。まともに向き合って鑑賞していなかった。

時と共に、ジブリの受け止め方は変わる。

昔、アシタカとサンのゆくえばかり追っていたのに、今はタタラ場の女たちに惹きつけられたのだ。アシタカは、夜通しタタラ?を踏みつづける女たちに訊ねる。

「きびしい仕事だな」
「そりゃそうさ」
「四日五晩、ふみめくんだ」
「ここのくらしはつらいか?」
「そりゃあさ。…でも下界に比べりゃずっといいよ」
「お腹いっぱい食べられるし。男がいばらないしさ」

タタラ場の女たちは、いつも豪快で、たくましくて、口を大きく開けて笑う。こんなところで子どもを産んだら、きっと女たちみんなで子育てするんだろう。今わたしが抱えている「育児の孤独」なんてものは、これっぽっちも感じないはずだ。

仕事に向かう旦那を見送ると、運動会のピストルが鳴る。彼が帰って来るまでの、耐久レースの合図。泣けばあやして、抱っこして、歌を歌ってやる。それでもダメなら散歩に連れ出して。

時々、「あー」「うー」と発する子どもだけが、わたしの話し相手。まだ上手にしゃべれないだけで、いつも耳を傾けてくれている。だから、弱音を聞かせたくなかった。うるさいとか、静かにしてとか、こっちの辛抱が足りないだけじゃないかって。

タタラ場にいたら、きっと赤ちゃんは取り合いこ。育児で大変なことも、心配なことも、みんなが笑い飛ばしてくれる。

そういう場所が、仲間が、あったらいいのに。

わたしのタタラ場は、わたしが見つけないといけない。不満ばかりを口にして、動けない大人になる前に。

育児は、孤独だ。

だから、「助けて」をずっと言い続けて、歩いていくんだ。



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