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Diversity&Inclusion for Japan⑪ 事実婚・同性婚・パートナーシップ

なぜ書くか

Diversity&Inclusion(ダイバーシティ・インクルージョン ※以下D&I)というコンセプトがビジネスの世界において重要になる中、日本に住む約1億人には細心の取り組みやトレンドを学ぶ機会が多くありません。Every Inc.では「HRからパフォーマンスとワクワクを」というビジョンを掲げ、グローバルな取組みやアカデミックな文献からD&Iに関する歴史、取組み、事例など”日本なら”ではなく、”グローバルスタンダード”な情報を提供しています。https://every-co.com/

はじめに

先日トランスジェンダーである横山さんが米国でご結婚されたという事がニュースになりました。日本の方にとっては、「へーそうなんだ。おめでたいね!」というニュースかもしれません。しかし、横山さんが仰る言葉に日本の現状があります。

「私事ですがアメリカで入籍したことを報告させて頂きます。もちろん日本では無効ですが、少しでも発展していくことを願っていますし、たくさんの方々に日本の現状を知って頂きたいと思い報告しました。そしてこれからもより一層身を引き締めて頑張るので応援よろしくお願いします」

もしかしたら、この「もちろん無効」という事を知る機会がない方も多いのではないかと思います。ですので、HRに関わる身として、少しでも多くの方に現状を知って頂ければと今回のブログを書く事に致しました。

※内容は執筆時段階(2021年9月)の情報です。

世界で初めて同性愛を認めたのはデンマーク

同性婚というものは様々な歴史、いくつかの定義があるのですが、歴史的に振り返ると、1989年世界で初めてデンマークで「シビル・ユニオン(登録パートナーシップ)法」という法律が成立したのが始まりです。

それまで疾患扱いしてきた同性愛を、1981年にデンマークはもはや疾患とは見なさないと宣言し、1989年の法律制定までこぎつけます。この法律では、異性カップルが結婚している場合に認められるものとほとんど同じ権利を同性カップルにも認められています。その歴史からか、首都のコペンハーゲン市は、「世界で一番ゲイフレンドリーな都市」と言われることもあるそうです。

尚、「同性婚」は歴史的に2001年にオランダが世界で初めて「Wet Openstelling Huwelijk」にて制定したと言われています。30年くらいの歴史、というものですが、アメリカでCivil Rights Act Title Ⅶ(所謂国籍や肌の色で差別をしないという市民法)が制定されたのも1964年であり、60年くらいの歴史しかありません。数字だけ見るとあまり大きな違いはないように思います。


同性婚と言っても種類は1つではない。

同性婚、実は一つの定義ではありません。各国の法制度はそれまでの歴史や社会的背景などにより様々で厳密には分類しきれませんが、大別すると以下の4つに分かれており、①婚姻型、②別制度型、③準婚姻型、④その他、に分類されます。

各国はその精度の中で実際にはいくつかを組み合わせたり、移行しながら運用をしているのが実情であり、日本は②別制度型となります。(詳細は後ほどの説明で)

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世界的な動きでは、ヨーロッパや北米を起点に異性間の法的婚姻制度を同性間にも拡大していく、①婚姻型の広がりを感じます。しかし一方で、EU加盟国であるハンガリーでは逆に各権利を禁止する動きがあったりと、世の動きに逆らう動きもあるようです。

(参照)
https://synodos.jp/opinion/society/3465/
http://partnershiplawjapan.org/global/

日本はどうか?

驚きかもしれませんが、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)で同性婚を認めていないのは日本のみです(ロシアまでを含めると、ロシアと日本だけ)。国連加盟国のうち、28カ国(15%)が国として認知している中、GDPで世界3位の日本はこの仕組みを整えるまでに至っていません。

https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/mondai/h26/k_4/pdf/s1-4.pdf

正確に表現しますと、渋谷区を筆頭に同性婚を認知する仕組みはあります。日本は自治体毎に同性パートナーシップ制度を持ち、現在は130以上の自治体が同性パートナーシップを認めているのです。(2021年7月現在)

ここでのポイントは、国としては認めていない、ということ。すなわち、日本ではパートナーシップ関係を法的婚姻制度を同性間に拡大しているわけではない。これが横山さんの言う「無効」という意味なのです

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<出所:&関連団体>
一般社団法人Marriage For All Japan:セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)にかかる理解を促進するための社会教育事業及び啓発活動を行う団体
同性パートナーシップ・ネット:各自治体の導入検討状況を一覧で確認可能

具体的に何が違うのか?

では、「無効」という言葉の意味をさらにかみ砕いていきましょう。どのような違いがあるのでしょうか?

日本の「②別制度型の同性パートナー制度」という仕組みの中では、法律婚であれば認可される健康保険や遺族年金、育児介護給付に関するものが同性パートナーでは受けることが出来ない。例えばの一例は以下の様な形。

図2

上記に加えて、「配偶者(家族)」であるからこそできること、配偶者ビザの取得や病院での面会など、私たちの人生にとって大きな出来事に対しての影響度を持ってます。


国が認知していないからこそ、企業は努力できる

国としてこの同性婚を認める事には当然ながら複雑で長い道のりが必要です。一方で、企業はその溝を意図的に埋めることが出来ます。その取り組みは企業としての差別化要因になり、顧客や従業員がその取り組みに共感し、さらなるファン獲得やコミットメントの獲得が期待されます。

GenZが労働人口の中心となる10年後を見据えると、
企業の規模問わず、アクションすべきテーマだと私は感じています。


最後まで読んで頂き有り難うございました。次回以降は、各国の取り組みにも触れながら、企業としての取り組みをご紹介していきたいと思います。



著者紹介:松澤 勝充(Masamitsu Matsuzawa)

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神奈川県出身1986年生まれ。青山学院大学卒業後、2009年 (株)トライアンフへ入社。2016年より、最年少執行役員として組織ソリューション本部、広報マーケティンググループ、自社採用責任者を兼務。2018年8月より休職し、Haas School of Business, UC Berkeleyがプログラム提供するBerkeley Hass Global Access ProgramにJoinし2019年5月修了。同年、MIT Online Executive Course “AI: Implications for Business Strategies”修了し、シリコンバレーのIT企業でAIプロジェクトへ従事。2019年12月(株)トライアンフへ帰任し執行役員を務め、2020年4月1日に株式会社Everyを創業。採用や人材育成、評価制度など、企業の人事戦略・制度コンサルティングを行う傍ら、UC Berkeleyの上級教授と共同開発した3カ月プログラムで、「日本の人事が世界に目を向けるきっかけづくり」としてグローバルスタンダードな人事を学ぶHRBP講座を展開している。

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