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UC Berkeley Business Schoolからの手紙③(労働環境:労働法と就業トレンド)

さて、今回は「労働法と就業トレンド」について、学んだことを書いていきたいと思います。HRとしてのより良いパフォーマンスを出していくためには、最低限抑えなくてはならないものかと思います。UC Berkeley のような世界トップ10に入る大学が何を伝えているのかをシェアします。


1. アメリカの就業トレンド

日本でも外国人労働者に対する規制緩和などが進められていますが、アメリカは従来から”移民の国”として言われるように外国人労働者が多く存在します。中でも最近のトレンドは、Hispanic系人種の増加、Asian Americanの増加です。

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(Asianというカテゴリーはこの映画のおかげでホットになりましたね)

また、総論としては3つ言われています。少し古いですがアメリカの調査機関が発表した「A Century Apart(2010年)」で発表されたデータの中では、人口、平均寿命、平均賃金、教育の観点から様々な見解が述べられており、教授の見解も含めると、以下の3点が述べられました。

1.  人種の多様化
アメリカでは、移民法の変更など多くの話題になっているとおり、経年比較でみれば人種の多様化※1が促進されています(白人・黒人は大きく変わらず、Hispanic系人種とAsian American ※2の数が増えている)また、上記のレポートではAsian Americanが最も教育熱心であるということ、またそのことも相まって高い給料を得ていること、が触れられています。 
2.  労働属性の変化(世代人口)
2016年に、これまでの労働人口の中心であった"Baby Boomer世代(1946-1964年生まれ)"がリタイアし、"ミレニアル世代(1981-1996年生まれ)"が最大規模の労働人口になったとされています。この事から推測されることは、消費行動の価値観、生活スタイルに対する価値観、労働に対する価値観が変わっていくだろうという事です。
3. 教育レベルの低下(格差の広がり)
Asian Americanが教育熱心な一方で、全体で見た際、様々な国から様々な背景で各国の人々がアメリカに移ってきている影響で、Less-educated people(教育を受けていない人々)の増加も別のデータとしては証明されている、というところです。

※1...2000年と2010年を比較した際、カルフォルニアの人口においては、Whiteと分類される人々は57.6%(+6.4%)に留まっており、Asianが13%(+31.5%)、Hispanicが37.6%(+27.8%)となっています(カッコ内は増加率)

※2...アジアンアメリカンとは、アジア系のNational Origin(国籍)を持ち、アメリカで生まれた人々ないしはアメリカ国籍を持つ方々を一般的にそのように分類するそうです。

一方で、GAFAと呼ばれる巨大テクノロジー企業群のGoogle、Apple、Facebook、Amazonなどは全て米国発の企業です。ベイエリア・シリコンバレーまたは西海岸に集中しています。従って、このベイエリアがテクノロジーの中心で、ビジネスが成長し続ける背景下では、「優れた技能を持つ人材(代表的な職種はエンジニア)は海外から獲得するしか手がない状態が今後も一定期間続く」、と授業では結論づけられていました(最近は中国も米国間での競争優位を保つためか、AI人材の獲得で初任給2,600万円を約束するなど具体的な報酬面での変化も見られます 引用元:朝日新聞デジタル)。

2. 差別を防ぐ、アメリカの労働法

日本でも様々な労働法が制定されていますが、アメリカのHRとして働くことを想定する場合、労働法に対する理解は必須とされています。代表的なものだけでもこれだけたくさんあります。

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• Civil Rights Act 1964 (Title Ⅶ)
• Equal Pay Act 1963
• Age Discrimination in Employment Act 1967
• Equal Employment Opportunity Act 1972
• Vocational Rehabilitation Act 1973
• Pregnancy Discrimination Act 1978
• Americans with Disabilities Act 1990
• Civil Rights Act 1991
• Genetic Information Nondiscrimination Act 2008 (GINA)
• ADA Amendments Act 2008
• Lilly Ledbetter Fair Pay Act 2009
• Executive Order 11246

授業中では、「Discrimination」という言葉が何度も繰り返されました。これは「差別」という意味で、やはりアメリカでのこの言葉に対する意識は日本とは比較にならない強さがあります。私がアメリカで留学をしていた際に最も印象に残った言葉でもあり、通っていたUC Berkeleyはあの Martin Luther King Jr.がスピーチをしたことでも有名で、「Human rights」というものを意識させられる機会が多くあります。(ちなみに、1月20日がそのMartin Luther King JrのメモリアルDayです。)

「差別」については、Civil Rights Act 1964(TitleⅦ)で「Race, Color, Religion, Gender, National Origin(人種、肌の色、宗教、性別、国籍)を要因として就業や教育機会に対する意思決定がされてはいけない」と定義づけられており、これが大原則としてアメリカでは根付いています。

さらに、様々な法律でマイノリティ(例:障がいを持つ方、妊婦、退役軍人(Veterans))を支援する仕組みが存在します。ただ、それだけではありません。マイノリティの優遇措置が「逆差別(Reverse Discrimination)」であるという主張も存在しており、大学入試などで実際にこの逆差別が立証されたケースもあります。

従って、一定の優遇措置として存在するものの、法というものでマイノリティが過度に優遇されるような事はなく、仮にマイノリティを採用する事を理由に、マジョリティを採用不合格としたら罰する可能性がありますよ?というものになっています。

事実、日本の企業では「女性をX人、外国人をY人採用する」といった目標を立てて、日本人とは全く別ルートで採用する事も珍しくはありません。仮にこの目標値が第三者目線で見てアンバランスである場合、訴訟を起こすことができるのがアメリカです。

日本でも様々な法律がありますので、いくつか参考リンクを張り付けておきます。

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厚生労働省「知って役立つ労働法」

厚生労働省「適切な労務管理のポイント」、「優しい労務管理」

内閣府Web「マイナンバー トップページ

在ドイツ日本国大使館「日本とドイツの働き方の特徴、相違点について

3. 差別を証明する方法は?

これだけ準備万端に見えるアメリカですが、上記のような法があっても、実際の法廷の場では「それを差別とみなすか否か」という結論を出す為に、様々な検証がなされる必要があります。代表的な検証方法は以下の通りです。

• Disparate Rejection Rates (4/5ths Rule)
• Standard Deviation Rule
• Restricted Policy
• Population Comparisons
• McDonnell-Douglas Test


例えばですが、その州の人種別の人口統計比率と採用実績を比較するのも一つの方法です。

仮にWhite50%、Black20%、Hispanic20%、Asian10%だった場合、その比率の4/5以上の合格率が採用実績になくてはならない(White40%、Black16%、Hispanic16%、Asian8%)ということになります。

上記の検証方法をもとに、XX会社が実施した採用や昇格の意思決定は、以下の2要素の有無を明確にしていきます。

Adverse (Disparate) Impact =「集団」に対して差別的な影響があった
Disparate Treatment =「個人」に対して差別的な扱いをした

一方、イレギュラーなケースではありますが、上記でも言及したように、法というものでマイノリティが過度に優遇されるような事はないため、逆に「多数派(マジョリティ)人種」が差別を受けた事を証明するReverse Discrimination(逆差別)という考え方も存在します。

4. 今後の日本では?

「私、おじいちゃんがメキシコ人なんだよね」
「俺、お父さんがブラジル人なんだ」
「俺、お父さんがフランス人なんだ」

こんな会話、耳にした事はありますでしょうか。日本でもハーフやクォーターの方々を多く目にしますが、アメリカ(特にCalifornia)では感覚値で2人に1人、ないしは3人に2人がアメリカ以外の国にNational Originを持っています。この先、少子高齢化を迎え、労働人口がさらに減っていく日本は、人口維持のため規制緩和を進める方向性かもしれません。その結果、多くの異なるNational Originを持つ人を迎えていく事になるんではないでしょうか。

日本で生活をしていく中で「日本に住んでいるのであれば日本のルールに従うべき」という固定概念は、異なる国から来た人たちが“超少数”である場合通用するかもしれません。電車はきちんと並ぶ、自宅で靴は脱ぐ、など。仮にその数・比率が同程度に近づいた場合、状況は変わってくるはずです。私が日本で生活していた頃は、「差別・マイノリティ」という言葉に鈍感でした。それは「違いに遭遇する機会の絶対的な少なさがもたらす無知」だったなと感じています。

アメリカでは様々な多様性を尊重する為に「Affirmative Action(弱者集団の不利な現状を、歴史的経緯や社会環境に鑑みた上で是正するための改善措置のこと)」がHRの基礎として教えられるのです。さらに、現在のイシューは「Fair Treatment(例えば、休日というものをいつにするか。宗教上の休日を休日とするか、国特別の祝日を休暇日として許可するか、など)」。

これらは、「Diversity & Inclusion」というカテゴリーの中で考えられるものです。日本における外国人労働者もデータ上146万人となり、年々増加傾向にあります。HRとしては「Diversity & Inclusion」が今後HRとして学ぶべきトピックとなるのではないでしょうか。

まとめ
多様性(国籍)の進行、労働属性の変化(よりミレニアル世代中心)、教育背景の多様化がアメリカでは進んでおり、HRもその影響を受けている
・アメリカでは、「差別」を防ぐための法律が多くあり、人種、肌色、国籍、宗教、性別によって教育機会や就職機会の意思決定がなされないようにルールが設定されている(日本ではそのような記述のある労働法はない?)
・差別を証明する方法(Adverse (Disparate) Impact、Disparate Treatment)などは日本のHRとしても念頭に入れながら、採用における男女目標、国籍別目標を立てるべき
・日本は、多様性を迎え入れる準備(Diversity and Inclusion)ができているか?

参考リンク:外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(2018/12/25)

参考リンク:外国人労働力について 内閣府(2018/2/20)

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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HRをもっと面白く/㈱トライアンフ執行役員/ UC Berkeley Haas School of Business, BHGAP program修了/MIT Sloan "AI in Business"修了//DiSC認定トレーナー