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HR豆知識⑤5分でわかるOKR(応用編)

さて、今回はOKRの応用編です。OKRの定義、そしてOKRの意義、具体的なOKRの書き方については前回のnoteで書いてまいりました。

今回は、改めてOKRによってもたらされるものに触れながら、なぜOKRがうまくいかないのか?ということについて書いていこうと思います。

なぜ、これを書くか?

意義のある仕事は、仕事そのものではなく、マネジメントによってもたらさられると信じているから

・OKRというマネジメント手法が、組織のイノベーションに効果的だと証明されている。この手法がマネジメント層の意識改革に有益だと証明されているから(GoogleやIntelの例)

・意義のある仕事を増やすことが、Well-beingの高い職場づくりにつながると信じているから

OKRの威力

専門家のお言葉をお借りしていきます。シリコンバレー伝説の投資家、「Measure What Matters」の著者であるジョン・ドーアは以下のようにOKRの威力を説明しています。

OKRの威力
①優先事項にフォーカスし、コミットするようになる
②アラインメント(つながり)と連携がチームワークを生む
③進捗をトラッキングし、責任を明確にできる
④驚異的成果に向けて、ストレッチできる

従って、纏めると以下の効果があると述べています。

・集中(コミットメント)
・チームワーク
・責任
・ストレッチ(チャレンジ)

これは、OKRをきちんと運用していけばそれそのものが企業文化になりうるという事を指していますね。皆さんの会社のコアバリューや行動指針に近いんではないでしょうか?

OKRが失敗する理由

図12

一方で、日本企業がOKRに失敗する理由は大きく2つあります

CFR(Conversation・Feedback・Recognition)の欠如
目標管理制度と人事制度(評価報酬制度)とのつながり

まず1つめのCFRは、対話し、フィードバックを与え、承認される機会を作り続けましょう、という事を示しています。これらが意味する事は、MBOの手法であった「年次パフォーマンス管理」からの脱却を意味します。

少し補足になりますが、半期がいいか1年がいいか、という頻度の背景にはサービスがユーザーに届くまでのスピードと競争の激化が背景だと私は思います。車業界が5,000万人のユーザーを獲得するのに62年を費やしたに対して、PokemonGoはたったの19日です。従って、仕事がプロジェクト化し、より短期的な進捗を追いかける必要があることを指しています。

2つめは、目標達成以外の評価・報酬決定要素を設定しましょう、ということです。評価という観点では、360度評価も含まれますし、報酬の観点では、Job(職務内容や役割)に対する価値を設定しておく必要があります。

実はこの考え方は日本でも多く利用されている役割等級制度と似るのですが、成果以外の能力・コンピテンシーやコアバリュー発揮度での評価をしましょう、という解釈がなされてもいいと思います。しかし、そもそも日本の評価制度は専門家を置かないが故に運用に問題があり、村型社会の名残を踏まえた形式的な評価になっている(とりあえず長く働いてくれているので昇格、またはいい人なので昇格、等)事が少なくありません。

CFR(Conversation・Feedback・Recognition)とは

OKRの運用に欠かせない存在であると言われるCFRですが、これは以下の頭文字をとっているものです。

対話(Conversation)…パフォーマンス向上を目的にマネジャーと部下(コントリビューター)の間で行われる真摯で深みのある意見交換
フィードバック(Feedback)…プロセスを評価し、将来の改善につなげるための、同僚との双方向あるいはネットワーク型のコミュニケーション
承認(Recognition)…大小さまざまな貢献に対してしかるべき個人に感謝を伝える

ちなみに、MBOで一般的である年次パフォーマンス管理とOKRで重要視される継続的パフォーマンス管理を比較してみましょう。夫々の違いは以下のような整理ができるのです。

図10

アドビでは、パフォーマンス管理の仕組みを年次勤務評定からチェックインと呼ばれる手法に変えましたと例示されています。

図11

ここまでくると、


あ、うちの企業も似てるかも。1on1やっているし


と思われる方もいるでしょう。確かに、日本企業の中でも1on1という対話形式の機会が導入されることが多くなりました

しかし、1on1を導入したとして、OKRが目指しているものが実現できるとは限らないのです。従って、OKRという目標設定すると同時にCFRという進捗管理のプロセスをきちんと整備していく事が重要です。

このことは、マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力という本の中で紹介されているリサーチ結果とも関連します。

図1

・約700名のManagerに行った調査で①明確な目標、②仕事の進捗に対する支援、③優れた仕事に対する評価、④インセンティブ、⑤対人関係の支援の内、5%のみが最も大事と回答した「②仕事の進捗に対する支援」が実は最も仕事のパフォーマンスを高める要素であることが明らかになった

・「やりがいのある仕事における進捗」、「触媒ファクター(仕事を直接支援する出来事)」、「栄養ファクター(その仕事を行う人の心を奮い立たせる人間関係上の出来事)」がインナーワークライフを高めるからだ。

・インナーワークライフとは、個人の職務体験を指し、個人の「認識」、「感情」、「モチベーション」を総称している。より良いインナーワークライフは、個人の「創造性」、「生産性」、「コミットメント」、「同僚性」を高めることにつながっている。

・従って、従業員の活力を生み出す動機付け要因は、マネジメントに立つポジションの人からの日々の小さな支援であり、「放置プレー」で生産性を上げることはできない、ということ。

Vulnerability(弱さ)をさらけ出す強さ

私自身も30名程度の組織を率いていた時は、2カ月に一度、45分から~60分を使い、メンバーと対話する事を行っていました。雑談的な話、プライベートに対する話、人間関係に関する話、仕事に関する話、話題は多岐にわたります。

しかし、きちんとこの会話を「この会話は評価とは関係ないからね」と言い切ることが出来るようになったのはその1on1を始めるようになって3年目くらいからです。

また、「私自身にフィードバックはありますか?」と言えるようになったのも2年目くらいからでした。従って、マネジメントポジションにつく人たちがどんなマインドでこのCFRに臨むのかがとても大切だという事です。

①同じ1人の人間として向き合う、②そして自分の弱さを受け入れて会話する(Vulnerability)、ということをHRが伝えていく事が最も大事です。

目標管理制度と人事制度(評価報酬制度)とのつながり

この評価報酬に対する考え方は、最も日本企業が苦戦する領域です。なぜならば、評価報酬制度の構造そのものが欧米企業とは全く異なるから。

日本は、「人型」で、年齢や経験に紐づいて給与が決定される事が多い一方で、欧米は、「Job型」で、仕事やスキルに給与が紐づいています。

従って、本当の意味でOKRを機能させるには、以下のようなことをする必要があるのです。

① Job AnalysisによってJob型の組織を作る

この手法については、こちらを参考にしてください。

② 報酬制度を再考する

さらに、この評定を賃金体系に落とし込むプロセスになると、Internal Analytics(内部分析)External Analytics(外部分析)という考え方が重要です。Internal Analyticsでは、「社内でどれだけ重要なポジションを担っていたか」、External Analyticsでは、「市場平均と比較をして優位性のある報酬になっているか」を常にチェックする必要があるという事を意味します。具体的な手法はこちらでチェック頂けます。

③ 評価と報酬を分解する

これは例えば、OKRを評価の最たる部分にしないという事を意味します。グーグルのラズロ・ボッグによるとOKRが評定に占める役割は3分の一以下だとされており、それ以外の部門横断的なフィードバックや人物の置かれた状況(難易度)を加味した評定をしていると言います。例えば、以下のような形です。

OKRの達成率(30%)
ポジション・スキル評価(30%)
チーム内からの評価(20%)
チーム外からの評価(20%)

改めて頭に入れておきたいこと

「チャレンジング」で「ワクワク」「ドキドキ」する目標を立ててみよう。

・完璧な目標設定はあり得ない。「なんか違うなぁ・・・(上位目標とずれている)」と思ったら(お互いが)すぐ修正する柔軟性を持とう

・年に数回の「どんな目標を設定するか」ではなく、月1回の「どのように目標を達成するか」のCFRプロセスを大事にしよう


参考:Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR (メジャー・ホワット・マターズ)

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