Global HR NOW! vol. 10〜「‘Great Resignation’」が巻き起こる米国で、従業員を退職させずリテンションする工夫とは〜
なぜ書くか
変化し続ける社会・ビジネスの中で、ヒトも組織もHRもそのあり方が変わり続けています。このメルマガでは「Global HR NOW!」と題し、世界のHRの今をお届けします。
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今日のニュース:多くの授業員が退職している中、企業は何をすべきか?
2021年6月に発表された米国労働省の求人と離職率のサーベイによると、2021年4月には約400万人が退職しました。この背景には、多くの人が仕事をする意義を再考し、ワークライフバランスと柔軟性の向上を求めるようになったと言われています。
彼らが考えているのは、企業から受け取る評価や就業時間の過ごし方についてです。仕事を辞める人々のこの大規模な流出は、現在‘Great Resignation’と呼ばれています。数字のインパクトはもちろんですが、人々が自分のキャリアのあり方を考え、より良い状態を模索するダイナミズムを反映した言葉です。
これが一時的な傾向であろうとこれからのスタンダードになろうと、経営幹部・人事リーダーは、従業員に対するビジネス・就業環境の魅力を再考する必要に迫られています。企業の方針と文化が従業員の定着率を高めるのか、職場環境なのか。‘Great Resignation’に対して何を考え、対応するべきなのでしょうか。
1. 従業員が求める働き方を認識する
コロナ禍により、何百万人もの労働者が長期間リモートワークを経験し、いくつかの課題はあるものの、その柔軟性、ワークライフバランス、時間、および節約の向上に慣れてきました。Prudentialの最近の調査、Pulse of the American Worker Surveyによると、現在のリモートワーカーの42%が、雇用主がオプションとして在宅勤務をやめた場合、別の仕事を探すと答えています。
HRチームとマネジメントは、リモートワークにより多様化・変化した従業員が求める働き方を認識する必要があり、事業計画上オフィスへの復帰が必要な場合だとしても、それに応じて戦略を調整する必要があります。
2. 会社文化のあり方を再考する
長期的に繁栄し続けている企業は、「従業員中心」の文化を確立しています。コロナ禍により、労働者は大きな金銭的・精神的な負荷に直面しました。それもあり「‘Great Resignation’」において多くの授業員が「公正」と「共感」の文化が根付いた企業に魅力を感じるようになっています。
コロナ禍の18ヶ月を自宅で過ごした多くの従業員にとって、オフィスに戻ることは大きなショックになり得ます。時にそれは、彼らの生活習慣の変更を強いるものとなり、感染への不安を煽るものになるかもしれません。文化としてそれらに寄り添い「公正」で「共感」を感じる方針が打ち出せるかは一つの鍵になりそうです。
3. 生産性の再定義
多くの組織は、生産性は単に従業員がPC作業をしたり、オフィスで働いたりする時間の問題だけではないことを認識するようになっています。
もちろん、しっかり集中して働くことは依然として重要で不可欠な要素であり、称賛と報酬で報いるべき行為ですが、そのプロセスよりは生産性とタスクの完了を測定基準の中心に据える必要があります。
多くの従業員は、45分であろうと丸一日であろうと、与えられた時間内にタスクを完了し、それに掛けた時間が適切だったのかを非常に気にかけています。これは場合によっては自己満足、上司への疑念、さらには組織への恐れにつながりうるものです。だからこそ会社組織は、従業員が貢献と創意工夫に基づき、結果に対して適切で前向きなフィードバックを受け取れる状態を目指し、工夫を凝らす必要があります。
魅力的な企業の多くは、心身の健康を促進するためにオープンなコミュニケーションを通じて、職場との前向きなつながりを促進する様々な工夫を凝らしています。
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「‘Great Resignation’」を乗り越えるには、組織にも忍耐と、従業員のニーズ理解に向き合う姿勢が欠かせません。組織は、オープンな議論と従業員への共感に配慮し、従業員を中心とした文化構築、または働くに足る魅力的なメリットと適切な就業環境・休暇を提供し、量よりも質を重視し、煩わしさよりも創造性と生産性を促進する必要があります。
出展
・TalentCulture
・Retaining Employees During the ‘Great Resignation’
By Raynie Andrewsen September 27, 2021
この記事から学べること
‘Great Resignation’・・・日本語に直すと「大量離職」ですね。コロナ禍によって働く価値観が変わり、企業にも変化を求めるようになった、という手指の記事だと思います。
元来企業と従業員のパワーバランスが均衡で、企業の解雇も従業員側からの要求や退職も盛んな米国の事例は、法律上解雇ができず、従業員側も離職に踏み切ることの少ない日本に即当てはまるものではないでしょう。
しかし、ハイレイヤー・ハイパフォーマー層の人材については、現時点でメオ給与条件・仕事内容から「企業を選べる」状態にありますし、コロナ禍に伴い「Employee Experiece」として求める内容が変化していることはHRとして認識しておくべきでしょう。
特に、評価・働き方の礎となる人事制度や、会社の人間関係のベースとなる企業文化は、1日や2日で変更・醸成できるものではなく、またこれらを変えていく上では経営層のコミットが欠かせません。数年先を見据え、戦略を持ってアプローチしていくべきでしょう。
書いた人
株式会社EveryーHRからパフォーマンスとワクワクを。
株式会社Everyは、2020年6月、代表の松澤がアメリカから帰国しスタートさせたアカデミック&サイエンティフィックベースなコンサルティングアプローチをとる人事コンサルティング会社です。私たちと一緒に日本のHR、社会を変えていきませんか?
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