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HR豆知識⑪HRBP
多くの学術的原稿、論文、HR的な記事においてHRBP(Human Resources Business Partners) という言葉が一般化されるようになりました。今回はこの役割が何を意味するか、を書いていきたいと思います。
1. HRBPとは
やっぱり起源はUlrich兄さんなのです。HRBPとは、かみ砕くと「HR(人・組織)の視点からビジネスManagerを直接的に支援する人」となります。従って、より直接的かつ即効性のある施策の企画・支援・実行が必要であるということが言えます。
しかしよくある勘違いがあります。
「HRは全員HRBPになるべきである」
と。
それは無理なのです。なぜならばビジネスサイドは時として法的ルールぎりぎりの行動をするからです。時として人を解雇しなくてはいけないし、時としてこれ大丈夫か?というルールを犯す危険性があります。
だからこそ、第三者としてHRは従業員の代表としてガバナンスやコンプライアンス、組織としての公平性を担保していく必要もあります。
2. これが変だよ日本のHR。
HRBPとしての役割を果たす上で以下の質問に答えれる人が少ない、という点が残念なポイントです。
なぜか?
営業や現場サイドはそれを目標としているからです。
仮にあなたが数学で100点を取りたいと思っているとして、
①とにかく勉強しましょうという家庭教師
②英語を勉強しましょうという家庭教師
③数学を勉強しましょうという家庭教師
誰に助けてもらいたいと思いますか?ってことです。
だからこそ、最低限、これを理解してほしいと思うのです。
・自社の昨年の売上・粗利益・営業利益はいくらですか?
・会計上、重視している項目はなんでしょうか?(例:営業利益率、労働分配率、等)
・自社の昨年の総額人件費はいくらでしょうか?
・自社の一人当たりの労働生産性はいくらですか(物的労働生産性 or 付加価値労働生産性)? ※定義はこちら
※労働生産性とは、簡単に記しますと以下のよう式になります。
物的労働生産性 = 生産量(何個)/労働量(何人)
付加価値労働生産性 = 付加価値額(粗利益)/労働量(何人)
出所:公益財団法人 日本生産性本部
3. なぜHRBPなのか?
HRBPの役割を考える上では、なぜこの役割が出現しているのかを少しまとめてみたいと思います。私自身が現在勉強しているHRCIのテキストにはこう記されています。
(1)これまでの人事
①アドバイザリー:人事問題を抱える現場のマネージャーに法的観点や市場のトレンドを用いてアドバイスする
②サービス:労働に関する悩みを持つ従業員を支援する(ハラスメント・人間関係など)
③コントロール:組織のHRポリシーを実行する(就業規則等)
(2)これからの人事
①管理:人事上必要となるデータの記録、またそのデータを管理し、法令を遵守する
②運用:組織の運営方法を改善する(各施策における費用対効果の見直し)
③戦略的:組織の長期目標に関与し必要な支援を行う
また、BerkeleyのBusiness schoolで教壇に立つCristina Banks, PhDはこれからの人事の役割をこう表現しています。
①戦略実行のパートナー:従業員がより効果的にビジネス戦略を実行できるように、企業のアーキテクチャ(システム、構造、プロセス、手順、ポリシーなど)を調整する方法を検討する。
②管理者の専門家:ビジネスの運用を見て、人事機能をより良く、より速く、より安価にどのように行うことができるかを判断します。
③従業員チャンピオン:従業員の代表として意見・提言する
④変更エージェント:ビジネス環境の変化に伴う従業員の習慣変化のサポート
4.ビジネス環境の変化がHRBPの重要性を高めている
ビジネスの環境変化としては、当たり前のようなことですが、「マーケットが多様になって、早く広まって、競争も激しく賞味期限が短くなっている」ということがあります。
従って、ビジネス上の目標(売上、粗利益、営業利益など)を達成するに当たっては、以下の4つの状態を目指す必要があるのです。
① Right Size:適切なサイズの労働力を保つこと
② Right Shape:適切な組織形態を作ること
③ Right Cost :適切なコストで運用すること
④ Right Agility :適切なスピードで意思決定していくこと
上記の状態目標4つを達成するためには、これまでのようにある意味直感的で情緒的な意思決定プロセスではうまくいかなくなってきます。ここに、People Analyticsなどの数字を使って根拠のある意思決定をしていく必要性が高まっていることも繋げて考えることができますね。
また、労働環境においてもグローバルベースで以下のようなトレンドがあります。
彼の予測では、2030年に各国で労働人口の不足が起き、各国内でスキルのミスマッチが予測され、そのギャップを埋めるために労働力の移動が盛んになり、カルチャーギャップが多発するだろうということが言われています。
それ以外にも、A Century Apart: New Measures of Well-being for U.S. Racial and Ethnic Groupsという調査の中では、
・高齢化が進む一方で、若者世代(ミレニアル世代)が労働人口の多数を占める
・より多様な労働環境が生まれる(人種的な側面で)
・より教育格差・賃金格差の大きい労働環境となる
などが言われています。上記3つは米国労働市場の予測ではありますが、2010年と少し古いデータながら読み応えのある内容になっています。
5.HRBPに必要なこと
従って、HRBPの役割を適切に実行するには以下のことが必要だと考えられます。
・会計的な基礎知識(PL/BS)を持っている(粗利益とは?営業利益率とは?)
・自社の経営上の数値の意味と今後の目標を理解していること(今後3年で何を目標にしているか、競合との差は何か)
・ビジネスマネージャーとして、実際にプロダクト、Sales、Marketing、Operationの目標達成に携わった経験(ビジネスを運営する上でのKeyとなる要素やよく発生する問題など)
・人に関する専門性(対個人&対組織)
それ以外にもこんな記事がありますのでぜひ読んでみて頂けたらと思います。
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