【かけたかった電話、かけられない電話】Herinandro faha 14
マダガスカルに来て約3ヶ月。任地に来て約1ヶ月半。
正直、ここの生活に疲れている。
キラキラピカピカの協力隊生活を書くべきなのだろうが、先週のnoteにも書いたように、ここでは着飾りたくない。
祖母との電話
私と祖母
私の祖母は91歳。私が高校生の時から、一緒に暮らしていた。
祖母と孫の二人暮らし。
両親健在。私の実家は祖母の家から自転車で10分。
家庭の事情というよりも、私が自ら祖母との二人暮らしを選択した。
私と祖母が一緒に歩いていると、ご近所さんは祖母に言う、
「お孫さんがいつも一緒でいいわね」
しかし、祖母が怒ると決まってこう言う。
「こんな孫、一緒にいても何もいいことないわ、早く出ていきなさい」
そんな気の強い祖母の言葉の針は、思春期の私には鋭すぎる時もあった。
勉強にも、礼儀にも、とても厳しい人だ。小学校の時、公文式の宿題の時は、いつも隣で消しゴムを握ってじっと見ている。私が間違えると、何も言わずに消しゴムで消すのだ。
私が大学生になっても、社会人になっても、祖母はそんな調子だった。アルバイトをしていると、「学生の本分を忘れたらいけないよ」と釘を刺され、帰宅が遅くなると、泣きながら私を叱り続ける。(回避術もあるのだが笑)
私とってこの世界で祖母のお説教ほど怖いものはない。
と、こんな憎まれ口を叩いているが、
私にとってこの世界で祖母ほど大切な人はいない。
両親共働きの家庭で、私が生まれた時から、祖母がずっと親代わりだった。私は生粋のおばあちゃん子として育て上げられた。
「おばあちゃん、今マダガスカルから電話してるで」
約2週間前、祖母と電話をした。日本を離れて以来、初めて話した。
祖母は、固定電話しか持っておらず、これまではLINE等で容易に話すことはできなかった。母に「おばあちゃん、元気?」と聞くしか、彼女の安否を知る術はなかった。
しかし2週間前、これ以上にない朗報を手に入れた。
Skypeを利用すると安価で国際電話が可能らしい!!初期設定において課金等々はあったが、祖母と話せるなら、こんなに安い買い物はない。嬉しすぎる朗報に感動と心臓のドキドキが止まらなかった。
早速、祖母に電話。
おばあちゃんが状況を理解できずに、オレオレ詐欺に間違われたらどうしよう。そんな馬鹿げた心配をしながら、私は少し緊張していた。
呼び出し音が数回なった後に、祖母が受話器をとった。
祖母「はい、もしもし」
私「おばあちゃん?今、マダガスカルから電話してるで!」
祖母「たえちゃん?マダガスカルから電話してるの?あ〜そう。ありがとね」
…
「え、おばあちゃん、すんなりと状況理解しすぎじゃない?」と思いながらも、久しぶりの祖母の声、電話の先から聞こえてくる大音量の『相棒』の再放送に、関西弁の私と関西弁を嫌う道産子の祖母の会話、自然と涙が溢れていた。
祖母は、母から私の状況を色々と聞いていて、私が何も言わなくてもいっぱい知っていた。私にとって不便なマダガスカルの生活も、祖母にとってみれば、彼女の若い時の生活にさほど変わりはないようで、特に驚くこともなかった。そして、何度も「わざわざ、ありがとね」と繰り返す優しい祖母だったが、やっぱり祖母は祖母だった。
「男に隙を見せるんじゃないよ、服装にはきをつけなさい」
最後にちゃんと、釘を刺された。その時、現地の人からのセクハラに悩んでた私にとっては、痛い一言だった。本当に祖母には、頭が上がらない。
たった6分の祖母との会話。私にとって、何よりもの宝物の時間だった。
かけたかった電話がかかった。
母との電話
祖母との電話と母との電話は少し違う。母はもちろんスマホを持っているので、気軽に電話ができる。でも、約1ヶ月、私は母に電話していない。
以前、留学していたときは1週間に1回ほどのペースで電話していた。そして、今回も首都にいる時は同様の頻度で話していた。任地についてすぐは、何度か電話した。
でも、今は電話しない。
寂しくないわけではない。いや、むしろ逆。本当は、母といっぱい話したいし、とっても寂しい。しかし、今、私は任地の生活にとても疲れている。配属先の人間関係。生活の小さいストレス。何にも協力隊らしいことをできてない私。正直、いつ日本に一時帰国しようかと考えているほど、疲れている。
こんな状況で母と電話をすると、ここの生活を諦めてしまいそうだ。そして、そんな娘の状況を知ると母の心労を増やしてしまうに違いない。
「子供の心配するのが、親の仕事」という格言を聞いたことがあるが、それならば「親に心配かけないのが、親孝行」という格言をここにつくっておいておく。
そんなわけで、まだ母には電話をかけることができない私だ。もう少し時間がかかりそうだけど、今の疲れも笑って母に話せるようになりたい。
母はそれまでどうせ何の連絡もしてこないと思うが、気楽に待っていてほしい。
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