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157/* アルバイトでの学びの回顧

飲食店でアルバイトをしていたときの話。

僕が働いていたお店は沢山の種類のスパゲティを提供していた。何種類あったかは正確には思い出せないけれど、カルボナーラだけとってみても3種類はあったから、バリエーションは様々だ。

ホールスタッフはお客さんから注文を受けると、何人前か、メニューは何か、大盛りか否か、セットサラダの有無、などを規定の略語でキッチンスタッフに宣言する。まぁ、飲食店あるあるですね。

僕はキッチンスタッフとして採用されたので、まずはホールスタッフから告げられる注文の内容を指し示す略語を理解して、相応のサービスを提供することを求められた。調理や仕込みといった仕事を任せて貰えるのはもう少し後の話だ。

しかし僕はこの略語の理解に想像以上の苦労を費やした。そもそもアルバイトで飲食店を選んだのは、当時の自分と照らし合わせたとき、他のどの職種よりも縁が遠いと判断したからで、飲食店特有のスピード感自体が僕にとっては驚異でもあった。

食材の名前も調理器具の名前も、業界用語的なものも知らない僕からすると、そこにさらに追加された略語も相まって、現場で耳にする全てが呪文か暗号にしか思えなかったのだ。

略語やスピード感に慣れるためにはまず、膨大な量の情報に晒される必要があった。いわば、経験値を稼いでレベル上げをするのと同じだ。情報に晒されて、呪文だったものに徐々に文節が加わり、意味を持つ単語として機能し始める。

理解はさらに、自身が発信することで深まっていく。最初は意味の分からないまま反復するにとどまっていたとしてもいい。自分の口から発することで、より文節の意味を理解できるようになるのだ。

時にホールスタッフの代替としてフロアに立たされながら、僕はようやくその現場の言葉やスピード感になれることができた。業務の効率化や、クオリティを向上するのはそこから。獲得した言語をもとに自身の思考を構築していくことができるのだ。

この構図は、あらゆる言語や知識の習得に応用できそうだ。頭から理解することを求めるのではなく、まずは情報の渦に身を置いてみて、感じてみる。そして少しずつそこに意味を見出してゆき、自身の思考へと落としこんでゆく。

学校で組まれるカリキュラムのように、うまくいくことばかりではないのだから。

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