借りぐらしの案山子さんの話

異性に見られてはいけない。
それが部屋の住人たちの掟だった。

かつて、ハノイのシェアハウスでドミトリー部屋暮らしをしていたことがある。
期間はおよそ5ヶ月弱。場所は、当時一番悪名高……じゃなかった、有名な日系シェアハウスである。ほら、Ho Tay沿いのあそこだよ、あそこ。
引っ越ししたきっかけも至って単純で、元々住んでいた日本人エリアにあるサービスアパートの家賃値上げを短期間に2度も食らい、「やってられるか!」と言って飛び出す決心をしたことによる。こんな話を人前ですると度々「ロックですね〜」とか言われる。
どこがや!"家賃210USD/月"に食いついただけや!

そんなドミトリー生活期間において、特に印象に残っている時期がある。
約1ヶ月弱、定員6名のドミトリー部屋に対して私を含む20代男性5人が一緒に住んでいたのである。各自、最低限のパーソナルスペースとプライバシーをそれとなく維持しながら、筋トレしたり洗濯物を部屋干ししたり自家発電したり……という日常であった。
余談だが、私はこの頃を"豚小屋時代"と一方的に呼んでいる。表現的には”女中部屋"の方がより適切なのかもしれないが、生活臭が"女子禁制"以外の何物でもない以上、それは避けたかった(何から?)。

住人の半数は学生、特に(当時の)シェアハウス運営元でもある名前もそのままな某ベンチャー企業のインターン生が多かった。
『ドイツの大学入る筈だったのに条件満たせてなかったから腹いせにユーラシア横断』とか、
『英語圏でガチンコで英語上達したかったから、物乞いの人にパンとコーヒー渡して世間話に付き合って貰った』とか、
『麻雀が好きすぎて、特訓アプリ自主開発してリリースしちゃった』とか、
振り返ると異彩を放つ面々が揃っていた。おまけに全員もれなく年下。

"本来なら繋がるきっかけが無かった筈のクラスタ"と出会うことで、自分自身のあり方とか立ち位置とかそういうものを、より客観的に、より多角的に知ることができる。その意義はとても大きい。

流れ流れて引っ越して、今はホステル暮らし。
当然、「何でそんな生活を」って言われることは時々あるけれど。
少なくとも今の私にとって、"わざわざお金と手間をかけて自分ひとりでの生活を回し続ける"ことに価値など無い。全く無いのだ。

#雑記 #海外生活 #ベトナム #ハノイ #シェアハウス  

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